バイス
バイスは工作物を確実に固定し、切削・研削・穴あけ・組立・検査時に位置を保持する治具である。日本語では万力とも呼ばれ、ベンチ型、フライス盤やマシニングセンタで用いる機械バイス、配管作業用のパイプバイス、検査・治具向け精密バイスが代表である。口金(jaw)の材質・硬度、口幅・開口量、ねじ機構(Acme thread 等)、ベース剛性と据付が使用感と加工精度を左右する。
構造と主要部品
ベンチバイスは固定顎・可動顎、台形ねじ(スクリュー)とナット、ガイドスライド、ハンドル、据付ベースから構成される。可動顎はトルクで前後し、平行を保ちワークを挟持する。ベースはボルトで作業台に固定し、回転機構(スイベル)付きなら角度合わせが容易。口金には刻み目やV溝、着脱当て金(アルミ・銅・ゴム)を用い、表面保護と円材保持を両立する。
種類と用途
- ベンチバイス:鋸引き、ヤスリ掛け、曲げ矯正等の汎用作業。アンビル面付きは軽打に対応。
- 機械バイス:剛性・平行度・直角度に優れ、油圧・空圧やダブルステーション等の機構を持つ。
- 精密バイス:焼入れ研磨仕上げで測定・治具組立に適し、再現性が高い。
- パイプバイス:鎖式・Y型で円管を傷めず固定する。
- 真空・ボール・ミニ:基板・模型の軽作業に用いる。
材料と機械特性
本体はねずみ鋳鉄やダクタイル鋳鉄が一般的で、剛性を確保する。高負荷用は鍛鋼・合金鋼を用いる。口金は工具鋼を焼入れしHRC50〜60の硬さと耐摩耗性を持たせる。締付力はピッチp、効率η、トルクTから F≈(2πTη)/p と近似できる。中型ベンチで10〜30kN、機械バイスで20〜60kNが目安。バックラッシュや摺動摩耗は把持再現性を低下させるので初期精度と保守が重要である。
選定指標
- 寸法:口幅、開口量、口金高さ、全高とベース径を確認し、工具の取り回しと干渉を確認する。
- 据付:台厚とボルト径、オーバーハングを考慮し、座金や補強で引抜荷重に備える。
- 機能・精度:スイベル角、クイックリリース、口金交換、切粉排出性、顎の平行度・直角度を評価する。
正しい使い方と安全
ハンドル延長やパイプ掛けによる過大トルクは禁物である。顎やスライドへ衝撃を与えない。柔らかい材料や仕上げ面には当て金を使い、円材はV溝やパイプバイスで保持する。スクリュー・ナット・ガイドは清掃と軽い給脂を定期実施し、切粉の噛み込みを避ける。クラックや固定部の緩みは危険であり、定点点検を行う。
加工・測定との関係
把持による変形や応力集中は加工精度に影響する。薄板・樹脂は当て金で面圧を分散し、精密加工では締付力を最小限に調整する。平行度はダイヤルゲージ、直角度はブロックゲージで点検する。機械バイスでは芯出しとバイスストップ活用で段取りを短縮できる。
よくある不具合と対策
- 開閉が重い:切粉噛み込み・潤滑不足。分解清掃と摺動面整備で解消。
- 保持力不足:口金摩耗・材質影響。硬化口金交換、当て金追加、締付力見直し。
- 平行度不良:ガイド摩耗・据付歪み。シム調整や再固定で改善。
- 表面傷:刻み目の食い込み。アルミ・銅・樹脂当て金で保護。
関連機器・周辺治具
用途に応じてFクランプ、Cクランプ、トグルクランプ、マグネットベース、Vブロック、ケガキ定盤、スクライバー、デプスゲージなどを併用すると段取りの自由度が高まり、再現性・安全性・作業効率が向上する。