ハーネス図|配線経路と接続関係

ハーネス図

ハーネス図は装置・車両・産業機械などに用いるワイヤハーネスの構成と配索を可視化する設計図である。回路図が電気的接続を抽象的に示すのに対し、ハーネス図はコネクタ番号、ピン配列、線番、導体サイズ(AWG/平方ミリ)、色別、長さ、分岐位置、固定具、保護材(チューブ、ブレード、テープ)を具体的に記載し、組立・検査・保全の基準となる。製造現場では治具板や切断リスト、圧着条件表と連携し、設計では3D配索や干渉検証、EMC対策の根拠資料として機能する。部品表(BOM)や変更履歴とも連動し、トレーサビリティを担保するのが特徴である。

目的と役割

ハーネス図の主目的は、誤配線・寸法不適合・部材不足といった不良の未然防止である。設計意図を製造・検査・サービスへ一貫して伝達し、現場判断の余地を最小化する。さらに、量産立上げ時の標準時間見積り、改修時の影響範囲解析、予防保全計画にも寄与する。

構成要素

  • コネクタ:型式、キー形状、極数、ピン番号図
  • 電線:線番、導体断面、色、撚り種別、許容電流
  • 分岐・幹線:スプライス位置、分岐角度、束径
  • 保護:チューブ/スパイラル/編組、耐熱・耐油等級
  • 固定:クランプ、タイ、クリップ、固定ピッチ
  • 長さ・加工:切断長、被覆剝き長、端子圧着条件
  • 表:部品表、ピン対応表、切断リスト、変更履歴

記号と表記の要点

記号は読み手の誤解を避けるため統一する。ピン番号は装置基準で左上から昇順、信号名は略語ルールを定義する。分岐はステム長と角度を明示し、束外径と最小曲率半径を併記する。色は「主色/副線」等で表記し、アース系統は太枠やハッチで識別する。

図面の種類

  • 展開図:実配索を平面へ展開し長さ・分岐を確定
  • 配索図:装置上の取り回し、固定点、干渉を表す
  • 系統図:幹線と支線のトポロジを俯瞰
  • 治具図:治具板穴位置、クランプピッチ、検査点

作成手順

  1. 要件整理:負荷電流、温度環境、屈曲条件、EMC要求
  2. 回路確定:ネットリスト整備、ピンアサイン決定
  3. 配索設計:経路、固定点、最小曲率、余長ポリシーを設定
  4. 部材選定:電線、端子、コネクタ、保護材の型式選定
  5. ドラフティング:展開・配索・表類を整合記載
  6. 設計審査:DRで組立性・安全・規格適合を検証
  7. 出図・変更管理:版数付与、ECO/ECNで履歴管理

配索設計の要点

ハーネスの信頼性は曲率制限と固定点設計で決まる。最小曲率半径は仕上外径の数倍を基準とし、ヒンジ近傍や可動部には余長ループを設ける。熱源・鋭縁・摺動部を回避し、束ね過ぎによる発熱を避ける。高周波・微小信号は電力線から距離を取り、必要に応じてツイストやシールドを適用する。

寸法・公差の考え方

切断長は端末加工の剝き長と圧着縮みを見込む。長さ公差は全長と分岐間で別管理とし、組立治具基準寸法を明記する。タイ締結ピッチ、エッジ保護長、グロメットの座屈余裕も規定する。

品質保証と検査

導通・短絡・耐圧・絶縁抵抗の電気検査をピン対応表に基づき自動化する。目視では圧着外観、チューブ端末の位置、マーキング可読性、固定具の向きと本数を確認する。バーコードや線番ラベルでトレーサビリティを実装する。

変更管理と版数

ハーネス図は影響範囲が広いため、版数、改定日、変更理由、適用号機を必ず併記する。差分は雲形や改訂マークで視認化し、部品表・切断リストと同時更新する。

CAD・データ連携

3D CADで配索し干渉・曲率を検証、2Dに展開して加工寸法を確定する。ネットリストや部品表と双方向連携し、誤記の温床となる手書き転記を排除する。中立フォーマット(DXF/CSV)で図面・リストを吐き出し、製造システムへ取り込む。

安全・規格適合

高温部離隔、二重絶縁の確保、シャーシ接地の確実化は最優先である。難燃性、耐油・耐熱等級、端末保護の記載を徹底し、保護具や配線色の社内規格と整合させる。万一の短絡時に燃え広がらない束構成とし、ヒューズ/ブレーカの位置を図示する。

製造指示への落とし込み

切断リスト(線番・長さ・色・本数)、端子圧着条件(型番・圧着高さ)、分岐加工票、完成検査手順を図面束として一体管理する。現場改造を防ぐため現合禁止を明記し、特例は追補票で管理する。

色分けとラベリング

線色は機能別に標準化し、熱収縮チューブやケーブルマーカーで恒久表示する。読取り方向と配置高さを合わせ、束内でも視認できる位置に配置する。

ノイズ・EMC対策

ツイストで差動のループ面積を低減し、シールドは片端接地か両端接地を回路要件に応じて選択する。電力線とは離隔を確保し、帰還経路のインピーダンスを下げる。

耐久性設計

可動部は屈曲寿命を満たす余長とガイドを持たせ、振動源にはクランプ増設と防振材を併用する。温度サイクルや湿熱条件を想定し、材料劣化を見込んだ寿命設計を行う。

よくある不具合と対策

  • ピン差し違い:ピン対応表とコネクタ正面図を必ず同図内に併載
  • 余長不足:実機測定に基づく余長係数を標準化
  • 干渉・擦れ:3D配索でエッジガードと離隔を検証
  • 過束ね:温度上昇と保守性低下を招くため束径とタイ間隔を規定

チェックリスト

  • 回路要件と導体サイズの整合、許容電流の余裕
  • 最小曲率、離隔、固定点ピッチの遵守
  • ピン対応表・部品表・切断リストの相互整合
  • 安全表示・ラベルの位置と可読性
  • 版数・適用範囲・変更理由の明記

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