ネロ|暴虐なローマ帝国の皇帝ネロ,キリスト教弾圧

ネロ

ネロローマ帝国の第5代目皇帝である。義理の弟や母親を殺し、政敵を殺し、キリスト教への弾圧を行った暴虐な皇帝で知られる。19世紀のイタリア人が「ネロの心はローマ人で、頭はギリシア人である」と称したように、学芸や詩にも精通し、ギリシア文化を愛好した。

ネロ

ネロ

アグリッピーナ

ネロの母親アグリッピーナの父親はゲルマニクスといい、人徳が高く評価され、いずれは皇帝になる、と言われるほど、市民の人気を集めていた。アグリッピーナは6人の長女であった。時の皇帝ティベリウスは反逆者を次々に殺害し、ゲルマニクスは34歳で急死するが、ティベリウスによって殺害されたと考えられている。さらに13歳になったばかりのアグリッピーナは皇帝に結婚を命じられる。夫は詐欺師と悪名高く放蕩にあけくれていた。続いて母親のアグリッピーナは皇帝に暗殺される。紀元前37年12月15日、アンツィオでネロを生む。夫が急死し、紀元前48年、アグリッピーナ(33)は皇帝グラウシス(58)と結婚する。

少年時代

ネロは少年時代は真面目でおとなしい人間性であった。アウグストゥスの遺言に従い、寛容と慈悲を旨とし、愛想よく振る舞い、罪人の死刑執行宣告の署名を求められると、「字の書き方を知らなければよかったのに」とつぶやいたと言われている。

教育

幼き頃から家庭教師をつけ、帝王学、数学、幾何学、文学、雄弁術を学んだ。しかし、アグリッピーナの方針で、ストア哲学と呼ばれる当時の道徳や倫理だけは除外させた。ネロにとって母親は常に恐怖の存在であったと推測される。

第5代目皇帝

紀元前51年3月、ネロは15歳で元服した。アグリッピーナによって成人を前倒しし、一般(16-17歳)より早く成人させた。また、アグリッピーナのすすめで皇帝クラウディウスの長女オクタビアと結婚する。起源54年10月12日、クラウディウスが毒殺されるが、アグリッピーナによるものという説がある。ネロはローマ帝国第5代目皇帝に就任する。

ネロの皇帝就任演説

私は統治権を行使するにあたって立派な手本と助言者を持っている。また若年のため争いごとや家庭の不和で身を汚していない。誰にも憎悪を抱いたことはなく、復讐を思い立ったこともない。

母親の暗殺

ネロとアグリッピーナ

ネロとアグリッピーナ

59年3月、愛人ポッパエアが暗躍したすえ、母親アグリッピーナを殺害、妻オクタウィアを追放し、ポッパエアを正妻にした。前妻への同情の声が集まると、冤罪をきせて処刑する、ということも行った。以前、弟ブリタ二クスを毒殺していたことから縁故関係者はすべて殺害した。

側近

当初は、ストア派のセネカやブルスなど側近の助言を聞いていたが、独善的な雰囲気が強くなり、ブルスが死に、セネカは引退する。

パンとサーカス

皇帝ネロは、奴隷が殺し合う剣闘士との争いを実施し、民衆に見世物を催して集権しようとした。

財政危機

ネロは殺戮と横暴の政治の中、ローマ帝国の財政危機に陥る。この財政危機を保証するため、裕福な有力者を追放、殺害することで財産の没収で補った。暴虐な一方で贅の限りを尽くす振る舞いに、民衆の目には肯定的に映った、とも言われている。

スエトニウス

ネロは詩を愛し、なんの苦もなく楽しんで韻文を創作した。ある人々が考えているように、ネロは他人の詩を自分のものとして発表したことはない。私はネロの手帳や小冊子を入手した。この中には非常に有名になった何編かの詩も含まれていて、それはネロ自身の筆跡である。・・・ネロは、絵画や彫刻にも並々ならぬ関心を抱いていた。

キリスト教徒への迫害

ネロがローマ大火の原因をキリスト教徒に負わせ、信者を弾圧した事件である。(ローマの大火もネロが起こさせたとされる。)迫害と殉教の始まりとされ、多くのキリスト教徒が火刑や動物に食べさせられるなど残虐な方法で殺された。その後の皇帝のほとんどは、皇帝崇拝拒否を理由にキリスト教徒に対する迫害を繰り返した。

キリスト教徒たちは、動物の皮を着せられ、野獣に食い裂かれて死んでいった。十字架にかかけられ、松明代の代わりに焼かれた者もあり、皇帝はこれを見世物として円形劇場で催した。(『年代記』タキトゥス

ポッパエアの怪死

65年、妻のポッパエアが死亡する。一説によると、ネロがなじられた腹いせに妻をかかとで蹴り上げて殺された、と言われている。

自害

ネロは元老院と軍隊と敵対関係に陥る。68年、ネロの支配に軍隊は反旗を翻し、各地で反乱がおこる。失脚したネロに元老院は公敵と宣言した。最後、32歳のときに自害する。最後の言葉は「この世からなんと偉大なる芸術家が消え去ることか。」であったと伝えられている。

ネロは持参した二本の剣を手に握り、まだ最後の時は来ていないと言い訳した。従者の一人に嘆き悲しんでくれと頼んだかと思うと、今度は誰か手本を見せてくれと懇願した。やがて己の不甲斐なさをこう罵った。これ以上生きていくのは醜悪だ。ネロにふさわしくない。まったくネロらしくない。さぁ、奮い立て。

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