ドレン|設備の凝縮水や汚液を安全に排出

ドレン

ドレンとは、機器や配管、建築部位で発生する凝縮水や不要液を安全かつ衛生的に排出するための水路・配管・機器の総称である。空調機の結露水(凝縮水)、蒸気配管で生じる凝縮水(いわゆる蒸気ドレン)、圧縮空気設備で分離される油水混合ドレン、屋上の雨水を集めるルーフドレンなど、用途は多岐にわたる。適切なドレン設計・施工・保守は、漏水事故の予防、衛生・臭気対策、機器効率の維持、法令順守、建物寿命の延伸に直結するため、設備設計・保全の基本要素である。

定義と範囲

ドレンは一般に「drain(排水・凝縮水)」の実務用語であり、建築設備(空調・衛生)、産業設備(蒸気・圧縮空気・冷凍)、土木建築(雨水・屋上排水)までを包含する。空調機では熱交換器で空気が露点以下となり凝縮水が生じ、ドレンパンからドレン配管へ導かれる。蒸気配管では熱損失により蒸気が凝縮し、トラップを介して除去される。圧縮空気では冷却・膨張で水分が析出し、潤滑油と混合したドレンがセパレータに回収される。屋上ではルーフドレンが雨水を集水し、竪樋に落とす。

生成メカニズムと物理

空調系のドレンは相変化を伴う潜熱除去の副産物である。室内空気がコイル表面温度以下に冷却されると露点以下となり、水蒸気が凝縮して水滴となる。凝縮水量は概ね潜熱除去量を水の蒸発潜熱で割って見積もることができ、除湿負荷が高いほどドレン流量は増える。蒸気系では配管・機器の放熱により蒸気が凝縮し、トラップで連続的に排出される。圧縮空気系では圧縮・冷却プロセスにより飽和水分が析出するため、アフタークーラやドライヤ、セパレータでドレンを捕集する。

主要な種類

  • 空調機ドレン(凝縮水)
  • 蒸気ドレン(凝縮水、トラップで排出)
  • 圧縮空気ドレン(油水混合、セパレータ・ドレン弁)
  • ルーフドレン(雨水集水金物)

同じドレンでも性状は異なる。空調・蒸気は比較的清浄な水が多いが、圧縮空気ドレンは油分を含み、適切な油水分離が必要である。ルーフドレンは落葉や砂塵の混入が前提となるため、目皿や防葉網が有効である。

設計要件(勾配・径・トラップ・通気)

  • 勾配:重力排水のドレン配管は1/100〜1/50程度の下り勾配を確保する。逆勾配は滞留・溢水の原因となる。
  • 配管径:単独の室内機であれば25A程度が目安だが、合流本数や流量、詰まりリスクを考慮して径を選定する。
  • トラップ:負圧下の空調機ではU-trap/P-trapを設け、吸い込み防止・臭気遮断・送風漏れ抑制を図る。必要封水高さは経験則でh≥3〜5×静圧(mmAq)を用い、理論式ではh≥2ΔP/(ρg)で評価できる。
  • 通気:サイフォン現象やエアロックを防ぐため、長尺・多屈曲では通気の取り合いを検討する。
  • 保温:冷水ドレンや低温部の外面結露を防ぐため保温を施す。
  • 点検性:要所に掃除口・点検口を設け、天井内でも容易に清掃できるよう吊りピッチと経路を計画する。

凝縮水量の概算

空調機のドレン流量は、除去した潜熱Q(W)を水の蒸発潜熱L≈2.45×106(J/kg)で割る概算が便利である。例えば潜熱除去2 kWなら、流量は約2,000(J/s)÷2.45×106(J/kg)≈0.00082(kg/s)≒3.0(kg/h)となる。実務ではコイル温度、入口空気の絶対湿度、風量の影響を併せて安全側の径・勾配を設定する。

材料と機器

  • PVC管(VP/HT)や耐食性に優れるステンレス管を用途に応じて選択する。
  • 空調機にはドレンパン、勾配不利な場合はドレンポンプ(ドレンアップポンプ)を用いる。
  • 圧縮空気ドレンはオートドレン弁、油水分離器、活性炭フィルタなどで処理する。
  • 逆止弁・ストレーナ・トラップは漏れや逆流、異物混入を抑制する要素機器である。

屋上のルーフドレンは防水層との取り合いと固定方法が重要であり、目皿の形状は落葉・砂塵・鳥害に応じて選ぶ。室内ドレンは耐薬品性・耐熱性を考慮し、洗浄剤や薬注の使用条件をあらかじめ想定しておく。

施工と試験

ドレン配管は振動の少ない経路を選び、吊り金物に防振ゴムを併用する。勾配と吊りピッチは十分な余裕を取り、意図せぬ水溜りや段差を避ける。施工後は通水・水張り・気密の各試験を行い、漏れ・滞留・エア噛みの有無を確認する。天井内では仕上げ前に連続通水でドレンパンから排水端までの流下を確認するのが望ましい。

保守と障害事例

  • 詰まり:藻・スライム・粉塵でドレンが閉塞すると、室内機からの漏水や天井汚損を招く。定期清掃・薬注・ストレーナ管理で予防する。
  • 臭気:封水切れは臭気や外気吸い込みの原因である。トラップのプライミングや自動補水を検討する。
  • 凍結:低温環境ではドレン凍結により破損・背圧上昇が生じる。保温・ヒーターや排水経路短縮で対策する。
  • エアロック:長い立下りや急激な屈曲で気塞が発生するため、通気管や経路再設計が有効である。

定期点検ではドレンパンの清掃、勾配・固定の再確認、トラップ封水の状態確認、オートドレン弁の作動点検、油水分離器の処理性能測定を行う。運用記録に季節変動と清掃履歴を残すことで、予防保全の精度が高まる。

法令・環境配慮

圧縮空気ドレンなど油分を含む排水は、油水分離後に基準値を満たしてから下水へ放流するのが原則である。処理方法や放流先は施設所在地の条例・指導に従い、産業廃棄物としての委託処理が必要となる場合もある。雨水系統は分流式・合流式の排水計画に適合させ、ルーフドレンの目詰まりは外壁漏水や構造劣化を招くため定期清掃を徹底する。

関連する設計上の注意

防火区画を貫通するドレン配管は耐火措置を施し、貫通部のシール材は結露・漏水で劣化しにくい材料を選定する。天井内での折返しは最小限とし、合流箇所では偏流・滞留を避ける継手を採用する。清掃動線・点検口の配置、満水時の越流経路(セーフティドレン)の確保までを含めて、設計段階で総合的に詰めることが肝要である。

用語と略語

  • 凝縮水(condensate)
  • トラップ(U-trap/P-trap)
  • 封水高さ(mmAq)
  • 圧力差(ΔP)
  • PVC管(VP/HT)

ドレンは「水が自然に集まり、重力と圧力差に従って流れる」という単純な現象を扱いつつ、衛生・安全・環境・保全の視点を横断する複合要素である。適切な負圧対策と通気、勾配と点検性、材質と処理方法を体系的に押さえることで、故障停止や二次被害を未然に防ぎ、安定した設備運用を実現できる。