トルクセンサ
トルクセンサは軸に生じるねじりモーメント(トルク)を電気信号に変換して出力する変換器である。単位はN・mが一般的で、モータ試験、ねじ締め管理、産業ロボットの力制御、エンジン・駆動系評価、回転機械の効率測定などで広く用いられる。原理は主にひずみゲージ式、磁歪式、光学式、静電容量式、MEMS式などがあり、静的なトルクだけでなく時間的に変動する動的トルクの計測にも対応する。適切な容量選定、帯域、取付方法、ノイズ対策、校正とトレーサビリティの確保が、トルクセンサの測定確度と再現性を左右する。
測定原理と方式
トルクセンサの要素技術は、ねじりによって生じる物理量の変化を高い感度で読み取る点にある。弾性体にブリッジ配線した金属箔ひずみゲージで微小ひずみを電圧に変換する方式が最も普及しているが、磁歪材料に励磁し透磁率変化を差動検出する方式、回折格子や光ファイバで軸ねじれ角を光学的に検出する方式、電極間容量変化を読む静電容量式、微細梁のたわみを検出するMEMS式など、用途や環境に応じて選択肢がある。
- ひずみゲージ式:ホイートストンブリッジにより高直線性・低ドリフトを実現。温度補償が要点。
- 磁歪式:非接触で回転計測に好適。油や粉塵環境での耐性が高い。
- 光学式:電磁ノイズに強く高帯域。光学素子の整合が重要。
- 静電容量・MEMS式:小型軽量。温度・オフセット管理が鍵。
回転型と反力型
回転軸間に組み込む回転型は大電力伝達系の効率評価や負荷トルク監視に用いられる。信号伝送はスリップリング、テレメトリ、無線給電などがあり、最高回転数、慣性モーメント、バランス取りが選定の勘所である。一方、固定側で反力(反トルク)を受ける反力型は試験機やねじ締め工具の検定に適し、設置が容易で高精度を得やすい。用途に応じて回転型・反力型を使い分けることが計測品質の要である。
性能指標(仕様の読み方)
トルクセンサのカタログでは、定格容量、許容過負荷、感度(mV/Vなど)、非直線性、ヒステリシス、繰返し性、零点ドリフト、温度係数(感度・零点)、応答周波数、ねじり剛性、慣性モーメント、保護等級(IP)、絶縁抵抗、回転型なら最高回転数とアンバランス許容などが重要である。これらは不確かさ要因に直結し、実装条件(温度、振動、電磁ノイズ)との整合が必要となる。
校正とトレーサビリティ
信頼できるトルク値を得るには標準機にトレーサブルな校正が不可欠である。代表的には「重り+アーム長」による静的標準機でトルク(T=F×L)を与える方法が用いられ、複数点で昇降系列を取りヒステリシスと直線性を評価する。回転型では既知トルクの伝達装置や基準トランスデューサとの比較校正を行う。校正証明書には環境条件、手順、補正係数、不確かさが明示されることが望ましい。
取付・機械設計の注意
取付時は軸心の同芯度確保と偏荷重の排除が最重要である。ミスアライメントは曲げ・軸力の干渉(クロストーク)を生み、誤差と早期損傷の原因となるため、可撓カップリングやフレキシブル継手で補正する。フランジ・キー・スプラインなど接続形状のクリアランスや面粗さ、締結力の管理も必須である。ねじ締結部の理解にはボルトの基礎知識が有用である。
電気・信号処理の注意
ひずみゲージ式では励起電圧の安定度とブリッジバランス、シールド・ツイストペア配線、接地の一点化が基本である。動的計測ではアンチエイリアスフィルタと十分なサンプリング周波数(一般に対象帯域の少なくとも10倍)が必要となる。回転型の無線伝送は位相遅れやノイズ流入の評価が重要で、デジタル出力(CAN、EtherCAT、USB)ではプロトコルの遅延・分解能・時刻同期も検討する。
動的トルクと帯域設計
回転機の過渡応答やねじ締めの衝撃イベントを正しく捉えるには帯域設計が要る。センサの固有振動数は使用帯域の少なくとも5〜10倍が目安で、機械系の共振(軸・継手・負荷系)を避けるように配置する。必要に応じてローパスフィルタ、ウィンドウ処理、加算平均、ロックイン検波などでS/N比を確保する。ピークトルクと有効値(RMS)を区別し、疲労設計と計測レンジを両立させるのが肝要である。
誤差要因と不確かさ
主要な誤差源は温度変化、曲げ・軸力の干渉、偏芯・芯ズレ、ケーブル引張、磁場影響、ベアリング摩擦、回転による遠心応力、電子回路のドリフト、量子化雑音などである。不確かさ評価では、校正曲線のばらつき、読み取り分解能、環境条件の影響を合成し、拡張不確かさとして提示する。実運用では零点の定期確認、温度安定化、ケーブル固定、基準器との相互比較が有効である。
選定手順(実務フロー)
- 最大使用トルクを見積もり、定格を1.5〜2倍程度の余裕で設定する。
- 必要帯域と最高回転数を決め、回転型/反力型と機械接続(フランジ・キー等)を選ぶ。
- 出力仕様(mV/V、±5 V、4–20 mA、CAN、EtherCAT)と電源・I/Oを合わせる。
- 環境(温度、振動、粉塵、油、IP等)と耐久性(過負荷、疲労)を確認する。
- 校正証明・トレーサビリティ、保守体制、交換性(取付互換)をチェックする。
よく使う式と簡単な計算
円形軸のせん断応力はτmax=T c/J(J=π d4/32)で与えられる。ねじれ角はθ=T L/(J G)。回転機の出力はP=2π N T/60(P:W、N:min−1、T:N・m)で、実務ではT[N・m]=9550×P[kW]/N[min−1]が便利である。例えばP=2.0 kW、N=1500 min−1ならT≈12.7 N・mとなる。これを基に定格や帯域、シャフト径、継手剛性を整合させれば、トルクセンサの性能を最大限に引き出せる。