テレハンドラ
テレハンドラは伸縮ブーム(テレスコピックブーム)を備え、パレットやバルク材を高所・遠隔位置へ搬送できる多用途の荷役機械である。荒地走行性と多彩なアタッチメント交換機構を持ち、建設現場、農業、資材ヤード、解体・産廃分野まで広範に用いられる。車体は4輪駆動と多様な操舵モードを持ち、狭隘地でも高い機動性を示す点が特徴である。用途に応じて定格荷重、最大揚程、最大リーチ、安定化装置の有無などを指標に選定する。
構造と作動原理
テレハンドラはラダーフレーム上にエンジン、変速機、油圧ポンプ、操舵装置を搭載し、前方に伸縮ブームを配置する。ブームは油圧シリンダで伸縮し、起伏・チルト機構により荷の姿勢を保持する。動力伝達は油圧式またはハイドロスタティック駆動が一般的で、ロードセンシング油圧により複合動作中も効率を確保する。操舵は前輪・4輪・クラブ(横歩き)の3モードを切り替え、狭い作業半径での据え付けを容易にする。
主なアタッチメント
クイックカプラにより工具交換時間を短縮でき、1台で多工程に対応する。代表例は以下の通りである。
- パレットフォーク:最も汎用的で、建材・機器の荷役に用いる。
- バケット:砂利・土砂・穀物などバルク材の積込に適する。
- ウインチ/フック:簡易な揚重に用い、到達範囲を活かして障害物越しの吊上げに対応する。
- ワークプラットフォーム:人員昇降作業に対応する専用台。規格に適合した墜落防止策と過負荷制限が必要である。
- グラップル/クランプ:丸太・スクラップ・異形材の把持搬送に用いる。
回転式モデル
上部が360°旋回する回転式テレハンドラは、アウトリガにより広い作業半径での据え付けと高所作業台・ウインチ作業を両立させる。限られた設置スペースで多方向へアクセスできるため、都市部の高所内装や設備搬入で有効である。
性能指標と選定ポイント
用途・現場条件・運搬対象に応じて下記指標を確認する。特に荷重とブーム姿勢の関係は作業可否を左右するため、事前検討が不可欠である。
- 定格荷重:ブーム角度・伸長量・作業半径により変化する。
- 最大揚程・最大リーチ:必要とする到達高さ・水平距離に見合うかを確認する。
- 安定化装置:アウトリガや自動水平化機構の有無と能力。
- 車両重量・接地圧:仮設路盤や床スラブの許容荷重との適合。
- 動力源・排出規制:ディーゼルの排ガス規制適合や電動化の選択。
- 視界・補助装置:カメラ、荷重モニタ、ブーム先端の角度/傾斜センサ。
- 輸送・搬入性:全幅・全高・旋回半径、トレーラ積載時の寸法と質量。
荷重図と安定性の理解
テレハンドラは「荷重図(ロードチャート)」に基づき運転する。荷重図はブーム角度・伸長段数・作業半径ごとに許容荷重を示し、過負荷を防止する。過負荷制限装置(RCL)はセンサ情報から傾向を監視し、閾値超過時に動作を制限する。安定性は重心位置と支持多角形の関係で決まり、アウトリガ展張・車体水平化・作業風速の管理が重要である。地耐力不足や傾斜は転倒リスクを高めるため、敷板・鉄板で接地圧を分散する。
運用と安全
人員昇降台を用いる場合は墜落防止(フルハーネス・親綱等)と機外監視者の配置が基本である。吊上げ作業では荷かかり具の点検、玉掛け者の合図、立入禁止範囲の設定、ブーム下通過の禁止を徹底する。視認性が制限される後退時は誘導者を置き、平坦化・転圧・排水を施した仮設路盤を確保する。夜間は照度確保とバックアラーム、風速の常時監視を実施する。
走行・操舵の要点
長尺物や高積み時は重心が前方へ移動しやすい。走行は低速・低いブーム角・荷の後傾保持を基本とし、路肩・開口部・地中埋設物の位置を事前に確認する。クラブ操舵は横方向接近に有効だが、車体の張り出しと後輪内輪差を意識して接触を防止する。段差越えや斜路では車体水平化を優先し、必要に応じてアウトリガを用いて安定を確保する。
保守点検
日常点検では油圧作動油・燃料・冷却水・アドブルー、各フィルタの汚れ、ブーム摺動パッドの摩耗、シリンダロッド傷、ピン・ブッシュのガタ、タイヤ空気圧・損傷を確認する。過負荷制限装置や角度センサの較正は定期的に実施し、電装配線の被覆破れやコネクタ腐食を点検する。締結部はボルトの締付トルク管理を行い、緩み止め剤や増し締め周期を整備計画に組み込む。
代表的な適用分野
テレハンドラは建設現場での躯体・型枠・設備材の高所供給、物流ヤードでの積替えや海上コンテナ周辺の補助作業、農業分野でのベール搬送や穀物ハンドリング、リサイクル施設でのスクラップ整頓・積込みなどに用いられる。障害物越しの到達性と舗装外での走行性能を活かし、タワークレーンや固定式昇降機のない現場で臨機応変に段取り替えを可能にする。
仕様書・計画書での記載事項
機種選定の根拠として、荷重図抜粋、最大揚程・リーチ、アウトリガ張り出し寸法、最小旋回半径、接地圧の算定、想定風速・停止基準、作業手順・誘導体制、非常停止方法、点検周期、スペアアタッチメント構成を明記する。加えて、搬入経路・クレーン併用時の干渉管理、騒音・排気・粉じん対策、夜間照明計画を含めると、リスクを前提にした実行性の高い計画となる。