ダイナモメータ|回転機の出力・効率を高精度測定

ダイナモメータ

ダイナモメータは、回転機械やエンジンなどの出力軸に生じるトルクと回転数を制御・計測し、機械出力Pを評価する装置である。基本はトルクT[Nm]と回転数N[rpm]を用い、P[W]=2πNT/60、あるいはP[kW]=9.549×T×N/1000で算出する。研究・開発・受入検査・耐久評価に広く用いられ、過渡応答や効率、熱挙動、NVHまで含めた総合的な性能把握を可能にする。

原理と基本量

原理は被試験体の軸に仕事を「与える/吸収する」ことにある。トルクは反力式トルクセンサやフランジ型トランスデューサで計測し、回転数はエンコーダやホールセンサで取得する。トルクTと回転数Nから出力P、さらに入力電力や燃料流量を併用して効率ηを求める。動特性を評価する場合は、系の等価慣性Jと粘性係数、制御帯域を把握しておくことが重要である。

方式の分類

  • 吸収式:渦電流式、油圧式、粉体式、摩擦式など。主に負荷を吸収し、熱として放散する。
  • 再生式:AC/DCモータを用い電力系統へ回生する。省エネと温度安定性に優れる。
  • 慣性式:既知の慣性体を加減速し、トルクを間接推定する簡易法。

吸収式は高温・高負荷の連続運転に強く、再生式は効率試験や速度追従に適す。慣性式は短時間の加速試験で有効である。

制御モード

  • 定トルク制御:一定Tを印加し、速度変化に対する出力特性や発熱を観察する。
  • 定回転数制御:一定Nを保持し、負荷変動時のトルク応答を得る。
  • 定出力制御:P一定で負荷を自動調整し、効率カーブの走査に用いる。
  • 走行パターン再現:NとTの時系列(ドライブサイクル)を再現して実運用を模擬する。

過渡試験では制御器の帯域・位相余裕が結果の忠実度を左右する。

測定系と校正

トルク校正は分銅と長さ既知のアームによる静的法が基本で、トレーサブルな分銅と幾何測定で不確かさを低減する。回転数は基準パルスとの比較で検証する。芯出し不良やカップリングの片当たりは誤差と振動源になるため、アラインメントとバランス取りを徹底する。治具の締結にはボルトの締付管理(軸力・潤滑・座面精度)が不可欠である。

設置と安全

基礎は剛性と減衰を両立した据付を行い、アンカー、ベースフレーム、アイソレータで固有振動数を管理する。冷却(空冷・水冷)、排熱・排気、遮音、防爆や非常停止回路、回転体ガード、シャフト破断対策(セーフティハウジング)を整備する。配線は電力と信号を分離し、アース設計を統一する。

データ処理と補正

サンプリングはNyquistを満たす余裕帯域で取得し、位相遅れの小さいフィルタ(FIR等)を選ぶ。空気条件や駆動油温、補機損失は結果に影響するため、規格に準拠した補正を適用する。回転むらやリップルは時間平均だけでなく角度同期平均で評価すると傾向が明瞭になる。

代表的な仕様項目

  • 定格トルク・定格回転数・定格出力:連続運転の保証領域。
  • 過渡許容(ピークトルク・最大加減速度):短時間の負荷範囲。
  • 等価慣性J:加速応答と制御性に直結。
  • 応答帯域と速度整定時間:過渡再現性の指標。
  • 回生効率・力率(再生式):省エネ性と系統品質。
  • 冷却方式・許容入口水温:熱安定性を左右。

仕様選定では、試験サイクルの最大要求点だけでなく連続点と安全率を織り込む。

用途例

  • 内燃機関:燃焼マップ取得、アイドル安定性、過渡応答、排熱評価。
  • 電動機・e-axle:効率マップ、ベクトル制御検証、回生制御の最適化。
  • ポンプ・圧縮機:ポンプ曲線、キャビテーション監視、軸動力。
  • トランスミッション:ギヤ損失、潤滑油温度の影響、シフト品質。
  • 工具・家電:始動トルク、負荷点効率、耐久試験。

これらはいずれもダイナモメータの制御モードと計測系を適切に組み合わせて実施する。

試験計画と品質管理

試験計画では目的関数(例:効率最大化、過渡追従、耐久)を明確化し、前処理(暖機・ゼロ点確認)と後処理(ドリフト点検)を規程化する。不確かさはA/B評価と機器仕様から見積もり、合成標準不確かさとして提示する。再現性確保のため、サンプル数・角度同期平均・外乱ログを標準手順に組み込む。

よくある課題と対策

軸芯ずれはカップリング発熱と計測誤差の原因で、軸受温度と振動(1×、2×成分)で早期検知する。渦電流式では低速大トルク域の制御飽和、再生式では系統側高調波や回生制限が課題となる。高周波ノイズにはシールド、ツイストペア、アース一点化、アナログ前段の適正ゲインで対処する。

計測のコツ

P=2πNT/60の基本式は単位整合が要点で、T[Nm]・N[rpm]のまま扱うと換算誤りが起きやすい。角度同期のFFTでトルクリップルの次数成分(n×)を読むと、機械要因と電気要因の切り分けが容易になる。試験票には温度・湿度・供給電圧・冷却水条件を必ず記載し、比較可能性を担保する。

関連機器と周辺要素

トルクセンサ、エンコーダ、ロードセル、温調器、燃料計量、電力アナライザ、カップリング、ベアリング、固定治具、そして締結用ボルトなど、周辺機器の品質がダイナモメータ計測の信頼性を左右する。装置本体だけでなく測定チェーン全体を設計することが重要である。