タンピングローラ
タンピングローラは、ドラム外周に多数のタンピングフット(パッドフット)を備え、衝撃と「こね返し」によって地盤を高密度化する自走式の締固め機である。粘性土やシルト質土に有効で、盛土・路体・造成の基礎地業で多用される。ドラム内部の偏心おもりによる振動(vibration)と、フットの貫入・離脱に伴う打撃(tamping)を組み合わせ、表層だけでなく層内にせん断変形を与えることで締固め度を高める。粒度配合が細粒分を含み、ローラー目詰まりを抑えつつ、最適含水比近傍に調整された土に適用すると効果が高い。施工計画では層厚、走行速度、パス数、振動数、遠心力、フット配置と投影面積、接地圧などを総合的に設定する。
構造と主要部品
基本構成は、パッドフット付き振動ドラム、振動ユニット(偏心ウェイト)、フレーム・エンジン、油圧駆動(走行・振動)、ROPS/FOPSキャブ、スクレーパ(泥付着防止)である。パッドの高さ・先端形状(円錐・矩形・台形)、個数と配列は、貫入深さと接触時の局所応力を左右する。ドラムは水や砂で加重(バラスト)可能な場合があり、地盤反力に応じて全軸重と接地圧を最適化する。油圧式振動は起動・停止が迅速で、転圧帯の端部や構造物近傍での制御性に優れる。
締固めメカニズム
タンピングローラの密度向上は、(1)フット先端の高い接地圧による塑性変形、(2)ドラム振動による粒子再配列、(3)離脱時の引き抜きで生じるせん断・練り返し作用の重畳で説明できる。特に粘性土では、単なる静的載荷よりも「こね返し」が空隙水の移動と粒子の再配置を促し、締固め度を大きく改善する。単位面積当たりフット接触回数(打撃密度)は、フット列数・ドラム幅・振動数・走行速度から見積もり、過小でも過大でもない帯状のエネルギ分布になるよう調整する。
適用土質と施工条件
- 適用土:粘性土、シルト、細粒分を含む砂質土、セメント・石灰改良土。
- 不適条件:過剰含水、粒径の大きい粗粒材主体、凍結・軟弱有機質土は効果が限定的。
- 層厚:一般に20〜40 mmの表層材料ではなく、150〜300 mm程度の土層を対象とし、仕様に応じて設定する。
- 含水比:最適含水比wopt近傍に調整し、±1〜2%の管理幅で品質を安定化。
- 端部処理:法肩や構造物際は段切り・人力転圧を併用し、浮き土を残さない。
性能指標と計画パラメータ
計画時は、総質量W、各軸荷重、ドラム接地圧p、振動数f(Hz)、遠心力F(kN)、振幅A、走行速度v(km/h)、必要パス数nを相関させる。実務では、単位面積当たり打撃回数N(回/m²)を目安に、Nが目標範囲(仕様書や実績値)を満たすようvとnを調整する。パッド投影面積の合計とフット個数はpと貫入深さを規定し、目詰まりや滑りを防ぐためスクレーパ圧や散水の有無も検討する。現場試行(試験ヤード)でパラメータを同定してから本施工に移行するとリスクが小さい。
施工手順
- 土工:盛土材料の敷均し(粗粒介在物の除去、層厚均一化)。
- 含水管理:散水または乾燥・撹拌によりwをwoptに近づける。
- 初期走行:低速・低振幅で1〜2パス、わだちや不陸を確認。
- 本転圧:所定の振動・速度で所要パスを実施。帯状に重ね、オーバーラップを管理。
- 仕上げ:表層のローラーマークを均し、点検・是正を行う。
品質管理と評価
タンピングローラの効果は、現場密度試験(砂置換法、RI法)で締固め度Dc=(現場乾燥密度/基準乾燥密度)×100(%)として評価する。路床・路体では平板載荷試験によるたわみ・支持力、あるいは弾性波・FWD等の非破壊評価を併用する場合がある。ローラー統合計(ICM)や加速度センサによる機上実測値をログ化し、パス数・剛性指標の空間マップから施工ムラを可視化する運用も有効である。規格値を満たさない場合は、含水調整・追加パス・層厚見直しで是正する。
安全・環境と保守
斜面走行時の横転防止(傾斜限界遵守)、接触災害の回避(誘導員・後方視界)、振動曝露・騒音への対策(保護具・滞在時間管理)が重要である。埋設物・地中構造物への影響を事前に調査し、必要に応じて振動出力や走行ルートを制限する。保守は、パッド摩耗・ボルト緩み・ベアリング潤滑・油圧漏れ・スクレーパ調整を日常点検し、ドラム付着土を清掃して性能低下を防ぐ。輸送時はドラム固定・ランプ角度・積載重量の適合を確認する。
機種バリエーションと選定観点
静振切替型、単ドラム・二軸型、施工幅の異なる小型〜大型、改良土向け高出力型などのバリエーションがある。選定では、対象土質、求めるDcや支持力、施工ヤードの幅・曲率、障害物、搬入制約、燃費・保守性、機上計測の有無を総合判断する。狭隘部や構造物近傍は小型機・手持ち締固めと段階的に組み合わせ、広幅部や長距離盛土では高効率機によりパス管理と品質トレーサビリティを両立させる。
用語メモ
タンピングフット(padfoot):ドラム外周の突起。こね返しを伴う貫入・離脱で締固めに寄与。打撃密度(blow count per m²):単位面積当たりのフット接触回数。最適含水比(optimum water content):最大乾燥密度を与える含水比。締固め度(degree of compaction):基準試験に対する現場密度の比率。機上計測(intelligent compaction):ローラーの加速度・剛性指標・パス数を記録し品質管理に用いる。