センタードリル
センタードリルは、旋盤加工で両センタ支持を行うためのセンタ穴(60°面取り部を持つ座ぐり穴)を高精度に加工する工具である。短いパイロット部と剛性の高い胴部を備え、わずかな突き出しでも折損しにくい形状である。深穴あけの起点精度確保や、ねじれドリルの逃げ防止にも用いられるが、本質は「センタ穴の規格形状を安定生成する専用工具」である。
形状と構造
センタードリルは先端に小径のパイロット(下穴)と、その後方に60°の面取り(カウンタシンク)を持つ結合工具である。パイロットの先端角は一般的なねじれドリルに近い鋭角で、芯出しを担う。面取り角60°はセンタ(回転センタ・固定センタ)の標準円すい角に一致し、確実な当たりを生む。呼び番号はNo.1〜No.6などの系列で、パイロット径と面取り径の対応が決まっている。
用途
センタードリルの主用途は、工作物端面へのセンタ穴加工である。旋盤で両センタ支持する長尺材・細径材では、センタ穴の同心度・面取り品質が剛性と振れを左右する。加えて、フライス盤・ボール盤での本穴加工前に位置決めの「スポット」として使う場面もあるが、CNCドリリングのスポット用途ではスポットドリルを使うほうが刃先強度と角度整合の点で適切である。
規格と呼び番号
センタードリルが生成するセンタ穴形状は、図面上で60°円すいと保護面取り(例:120°)の有無などで指示される。形状には保護面取りあり/なし、丸み付与などのバリエーションがあり、機械センタの先端形状や荷重条件に合わせて選択する。呼び番号の選定では、使用するセンタ先端径より十分な当たり幅が確保できる面取り径を基準にする。
材質とコーティング
センタードリルの材質はHSS(高速度鋼)が標準で、難削材や高温での耐摩耗性が必要な場合はHSS-Co(コバルト系)や超硬が用いられる。表面処理はTiNやTiAlNなどが一般的で、摩耗低減と溶着抑制に寄与する。ねばい低炭素鋼やアルミには未コートや低摩擦コート、硬質鋼や耐熱合金には耐酸化性の高いコートが有効である。
加工条件と使い方
センタードリルはパイロット部が細く折損しやすいため、主軸回転数はねじれドリルより低めから開始し、送りは安定させる。クイルやチャックの振れを最小化し、刃先の直角当てを徹底する。冷却は切削油を少量確実に供給し、発熱とバリを抑えるのが基本である。
- ツール突き出しを最小化し、剛性を確保する。
- パイロットが全長入る直前で一度切り、面取り部で所定径まで仕上げる。
- 切粉をこまめに排出し、溶着・焼付きの兆候を観察する。
- ターニング用のセンタ接触幅(当たり幅)を適正確保する。
- 段取り時にセンタ高さ・心押台の芯ズレを点検する。
よくある不具合と対策
センタードリルでは、パイロット折損・面取り部のチャタマーク・偏心が典型的な不具合である。主因は過度の回転数、振れ、切削油不足、硬化層への食い付き不良などである。
- 折損対策:回転数を下げ、送りを安定化。面取り到達前の食い過ぎを避ける。
- チャタ対策:剛性向上、切れ刃の再研磨、工具コートの見直し。
- 偏心対策:チャック掃除・心押台芯出し・面の基準化(端面正面削り)を実施。
選定のポイント
センタードリル選定は、(1)材質(HSS/HSS-Co/超硬)、(2)呼び番号(必要面取り径)、(3)刃先角仕様、(4)コーティング、(5)シャンク径・全長の順で検討する。被削材の降伏強度や延性、保持方法(バイス・三つ爪・コレット)に応じ、折損リスクと要求精度のバランスを取ることが重要である。
メンテナンスと再研磨
センタードリルは短刃で再研磨しやすいが、パイロット径と60°面取り角の幾何公差を崩すとセンタ当たりが悪化する。専用治具での研磨か、ロット管理での交換を推奨する。摩耗の兆候はバリ増大、面取り面の曇り、センタ接触幅の不均一などに現れるため、加工面観察が有効な予防保全となる。
スポットドリルとの違い
センタードリルはセンタ穴の規格形状を作る工具であり、スポットドリルはねじれドリルの位置決め専用で、先端角は90°や120°などが多い。CNCの高能率穴あけではスポットドリル、両センタ支持を前提とする旋盤工程ではセンタードリルと使い分けるのが合理的である。
図面指示の要点
センタ穴は図面で角度・径・形状を指示する。例えば「60°×当たり径」「保護面取り有無」「端面からの真円度要求」などである。加工現場では、この指示に合致するセンタードリルの呼び番号を選び、当たり幅をゲージやセンタブルーで確認して適合を保証する。