セルベースIC
セルベースICは、標準セルと呼ばれる基本論理ブロック群を組み合わせて設計される集積回路である。アナログ部分をほとんど含まず、ディジタル回路を効率的に構築する手法として広く採用されてきた。標準セルはNANDゲートやNORゲートなどの基本ゲートだけでなく、フリップフロップやラッチ、加算器などの複合機能を持つモジュールも含む。これらのセルは同一のレイアウトルールに従い配置配線を行うため、設計者は論理合成と配置配線をEDA(Electronic Design Automation)ツールでおこない、効率よくカスタムレベルに近い性能を得ることができる。また標準セルライブラリにはプロセスごとの最適化が施されているため、量産性と設計自由度を高い次元で両立できる方法として産業界で重宝されている。
標準セルの構造と特徴
セルベースICの基礎をなす標準セルは、特定の回路機能を果たす基本ユニットとして扱われる。論理ゲートやフリップフロップなどが代表的であり、これらはプロセス固有のトランジスタサイズや配線層構成に合わせてレイアウトが作り込まれている。同じセルであっても駆動能力やトランジスタのしきい値を変えたバリエーションが用意されており、速度向上や低消費電力化のために選択可能である。標準セル単位で検証データが整備されているため、設計者は回路規模が大きくなっても、比較的スムーズに配置配線を自動化できる点が大きな利点である。
ASICとASSP終わり。ASICの設計方式は
ゲートアレイ ⇒配線工程だけ残っているウェハを用意して組合せ
セルベースIC ⇒レイアウト済セルを組合せ
エンベデッドアレイ ⇒既存のIP利用。新規部分はゲートアレイ
ストラクチャードASIC ⇒機能ブロックとゲートアレイをマスタに— 蒼天 (@deep_verdure) April 15, 2017
フローとEDAツール
セルベースICの設計では、まずハードウェア記述言語(HDL)によって論理を定義し、論理合成ツールを用いて標準セルのネットリストへ変換する。その後、配置配線ツールによってチップ上にセルを実際に配置し、配線の経路を自動生成するプロセスを経る。このとき、タイミング解析を実行しながらセルの配置や配線経路を再調整するため、テストベンチやシミュレータとの連携も密接に行われる。最終的にゲートレベルでレイアウトが確定した段階で、電源インテグリティや熱解析などの検証を加えつつテープアウトへ進む流れが一般的である。EDAツールの性能が高まるほど大規模ICの設計が容易になる一方、ツールライセンス料や計算資源の確保が課題となる場合もある。
セルベースICとフルカスタムICの違い
セルベースICと対比されるのがフルカスタムICである。フルカスタムでは、回路要素の配置やトランジスタサイズ、配線レベルまで細かく設計できるため、高度に最適化した回路を作り上げることが可能となる。一方、設計コストや期間が大幅に膨らむ傾向があり、量産期におけるリスクも大きい。これに比べ、セルベースICは標準セルという共通化されたブロックを利用することで、設計期間の短縮と開発コストの抑制を実現できる。高い設計自由度を求める場面ではフルカスタム、短い開発サイクルや大規模チップの取り回しが必要な場合はセルベースICが選ばれるなど、用途に応じた手法の使い分けが一般的になっている。
セルライブラリの検証と選定
セルベースICの品質を左右する重要な要素として、セルライブラリの検証精度が挙げられる。各セルのタイミング特性、消費電力特性、ノイズマージンなどの情報が正しく計測・解析されていなければ、合成結果や配置配線結果が誤った予測を生む危険性がある。そのため、半導体メーカーはシミュレーションや測定データに基づいてライブラリを校正し、各プロセスノードに最適化した形で提供する。また低電圧動作や超高周波領域に対応できる拡張セルが存在する場合もあり、製品要求に合わせて最適なライブラリを選定することが求められる。
カスタムセルとの併用
セルベースICの大部分は標準セルで構築されるが、一部の回路ブロックにはカスタムセルを挿入する手法も一般的である。例えば乗算器や特殊なメモリインタフェースなど、高速化や省面積化が極めて重要な箇所では、汎用セルだけでは十分に性能が得られない可能性がある。その場合、該当部位のみトランジスタレベルから設計を行い、半ばフルカスタムに近いアプローチでセルを最適化する。こうした折衷案をとることで、設計コストの制御と回路性能の確保を両立することができる。
シリコン実装と歩留まり
セルベースICの最終段階は、テープアウトを経たシリコン実装である。標準セルは量産実績が多いため、不具合を起こすリスクが比較的低いとされるが、大規模チップとなるほどシリコン実装後に問題が発覚する可能性がある。歩留まりの低下は製品コストを押し上げる要因となるため、事前のシミュレーションやプロトタイプ検証が欠かせない。製造ラインや検査工程と協力しながら、回路上の欠陥箇所を分析してリビジョンを重ねることも珍しくない。量産時に良品率を高められるかどうかは、チップの市場競争力を大きく左右する。