セグメントエレクタ
セグメントエレクタは、シールドトンネルの掘進において、プレキャストセグメントを坑内で把持・反転・位置決めし、リングを構築するための油圧式マニピュレータである。TBM(Tunnel Boring Machine)のシールド尾部に搭載され、セグメント供給台車から受け取った部材を6自由度で精密に操作し、ガスケット圧縮と継手の噛み合わせを確実に行う機械である。掘進と覆工を同時並行で進めるため、セグメントエレクタのサイクルタイムは工程全体の生産性を左右する重要装置である。
適用分野と役割
セグメントエレクタは泥水・土圧・複合式など各種シールド工法に適用される。主役割は①セグメントの安全把持、②姿勢(ロール・ピッチ・ヨー)と位置(X・Y・Z)の微調整、③尾部ブラシ内での圧入、④ボルト孔の芯合わせ支援、⑤キーセグメントの最後段固定である。直線・曲線・テーパーリングやユニバーサルリングにも対応し、リング組立順序(番号リング)に従って自動手順をガイドする。
構成要素
- 回転リング/旋回台:360°連続旋回により任意方位へセグメントを提示する。
- マニピュレータアーム:油圧シリンダとスライダで直交3軸送りを担う。
- 把持ヘッド:真空パッドまたは機械クランプで表面・側面を確実に把持する。
- ロール・ピッチ・ヨーユニット:高精度クロスローラベアリングで姿勢制御を行う。
- センサ群:エンコーダ、圧力センサ、荷重ピン、距離計、カメラ、レーザマーカ。
- 制御盤:PLCとHMIにより操作、インターロック、ログ記録を実施する。
作動原理とリング構築手順
- 受け取り:供給台車からセグメントを受領し、セグメントエレクタが吸着・把持する。
- 姿勢出し:設計リングモデルに基づき、ターゲット姿勢へ自動粗位置決め。
- 圧入:尾部シール内で均等荷重を意識しながら低速で圧入する。
- 芯合わせ:ボルト孔・ダボの位置ずれを高速度カメラとレーザで補正する。
- 固定:仮締付後、トルク/軸力管理に移行し、本締付を実施する。
- 確認:ガスケットの圧縮量、目地開き、リング円周の寸法を記録する。
制御と計測
セグメントエレクタは6自由度制御を基本とし、フィードフォワードとフィードバックを併用する。位置はリニアスケールとロータリエンコーダ、姿勢はIMUや角度センサで把握する。荷重は把持ヘッドの荷重ピン・圧力センサで監視し、ガスケット圧縮に応じて押付力を自動制限する。施工ログ(姿勢角、押付力、締付トルク、サイクル時間)を保存し、品質トレーサビリティに供する。
仕様と性能指標
- 把持能力:単ピース2~10t級を想定し、安全率を確保する。
- 可動範囲:ロール±180°、ピッチ±90°、ヨー±180°程度が目安である。
- 位置決め精度:±2~5mm、姿勢±0.2~0.5°を狙う。
- サイクルタイム:1リングあたり6~12分を目標(条件により変動)。
- 電源・油圧:AC400/440V級、油圧35MPa級の閉回路が一般的である。
- 環境耐性:泥水ミスト、摩耗粉、塩分を想定し、IP保護・防錆塗装を施す。
周辺設備との連携
セグメントエレクタは供給台車、セグメントターンテーブル、ボルト締結装置、裏込め材注入(バックフィルグラウト)と密接に連携する。ボルト締結ではトルク管理または軸力管理方式が用いられ、締結後にグラウト注入圧とテールシールの油脂供給を最適化する。TBM主駆動の姿勢制御と同期し、リング継ぎ足し時のオフセットを最小化する。
安全・リスク管理
挟まれ・落下・過負荷が主リスクである。セグメントエレクタは二重系の把持監視、非常停止、速度制限、近接センサによる人物検知を備える。尾部シール内での作業は視認性が低く、監視カメラと照明で補う。真空把持では負圧監視とバックアップ機械クランプの併用が有効である。吊り荷下立入禁止、指差呼称、KY実施は必須である。
運用・保守
セグメントエレクタの保守は、吸着パッド・クランプ爪の摩耗点検、油圧ホースの摩耗・滲み、回転部のガタ、センサ校正、フィルタ交換、非常停止系の定期点検が中心である。故障はサイクル低下と品質ばらつきに直結するため、MTBFデータに基づく予防交換と予備品管理(パッド、シール、エンコーダ、ソレノイド)を徹底する。
施工品質上の注意
リング円周方向の誤差は、累積して線形外形に影響する。セグメントエレクタ運用時はガスケット圧縮と面当たり、ボルト孔の芯ずれ、キー部のかじりを逐次監視する。曲線施工ではテーパー配置とオフセット量の管理が肝要で、設計CADのリングモデルと実測ログの突合をルーチン化すると効果が高い。
選定ポイント
適用径・セグメント重量・リングタイプ(標準/テーパー/ユニバーサル)、把持方式(真空/機械)、可搬自由度、ログ機能、保全性(交換容易性)、安全インターロックの構成を確認する。セグメントエレクタがTBM制御とどのレベルで同期・連携できるか(リングモデル連携、位置・姿勢の自動追従、ボルト締結装置とのI/O連携)も評価指標である。