スポット溶接機|薄板の点溶接を高速高品質に

スポット溶接機

スポット溶接機は、重ね合わせた金属板の接触部に大電流を短時間通電し、接触抵抗で発生するジュール熱により局所的に凝固核(ナゲット)を形成して接合する抵抗溶接機である。自動車ボディなどの量産組立で標準的に用いられ、装置は溶接ガン、加圧機構、電源(ACまたは中周波インバータDC)、制御器、冷却系、監視系から構成される。空圧式やサーボ式のガンが一般的で、銅合金電極を水冷しながら、スクイズ→通電→ホールドの順で溶接サイクルを実行する。

原理と発熱機構

発熱はQ=I^2Rtで記述され、電流I、接触・バルク抵抗R、時間tに依存する。スクイズで板と電極の接触状態を安定化し、通電開始直後は表面皮膜や微小突起が焼結して動的抵抗が一時的に上昇、その後に軟化・塑性流動とともに抵抗が低下する。最も温度が高い板間界面に溶融部が生じ、電極荷重下で凝固してナゲットとなる。ホールドで凝固を進め、残留応力と表面焼けを抑える。

装置構成と溶接ガン

溶接ガンは「ケーブルガン」とトランスをガン側に搭載する「トランスガン」に大別される。トランスガンは二次側配線を短縮でき、電流立ち上がりが鋭く省エネ性に優れる。加圧機構は空圧式が汎用、荷重再現性やプロファイル制御が必要な場合はサーボガンを用いる。電極はCu-Cr-Zr系が標準で、先端形状(球面・円錐台)と先端径はナゲット径・電流密度に影響する。電極ドレッサで先端を定期整形し、冷却水は流量・温度を監視する。

電源方式と制御

電源は商用周波数AC(50/60Hz)と中周波インバータDC(MFDC, ≈1kHz)が主流である。MFDCは低リアクタンス化により所要容量低減、スパッタ低減、板厚や材質変動に対する追従性に優れる。制御は定電流制御を基本とし、アップスロープ、マルチパルス、ステップ通電などで入熱を緻密化する。電流・電圧・動的抵抗・電極ストロークなどを同時監視し、波形異常を品質判定に用いる。

適用材料と継手設計

適用は軟鋼、亜鉛めっき鋼板、高張力鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金に及ぶ。導電率が高いアルミは大電流・高荷重を要し、酸化皮膜の影響が大きい。高張力鋼ではマルテンサイト化や遅れ破壊に留意し、入熱と冷却のバランスを取る。継手はラップ継手が標準で、ピッチ、端距離、フランジ幅を適正化する。経験式として板厚合計tに対し電極先端径d≈5√t[mm]程度が目安とされ、ナゲット径は材料と目的強度に応じて設定する。

溶接サイクルと主要パラメータ

  • スクイズ時間:クランプ安定化のため数十〜数百ms
  • 溶接電流:鋼板で概ね5〜30kA、アルミでさらに大きい
  • 通電時間:材料・板厚により100〜400ms程度(MFDCでは短縮傾向)
  • 電極荷重:板厚と材質に応じて1〜6kN程度を標準に最適化
  • ホールド時間:凝固・変形抑制のため数十〜数百ms
  • 通電プロファイル:アップスロープ、ダブルパルス、ポストヒート等を用途で選択

品質管理と検査

品質特性はナゲット径、引張せん断強度、クロスピール強度、外観(スパッタ・焼け)で評価する。非破壊では電流・電圧・抵抗・変位の波形解析による動的監視が有効で、溶接毎の合否判定やトレンド管理に役立つ。破壊試験は定期抜き取りで行い、破断形態の観察も重要である。電極冷却、先端径、荷重の維持管理がナゲット安定化の鍵となる。

不良モードと対策

スパッタ多発は過大電流・不十分な荷重・電極劣化が要因で、電流低減や荷重増、先端ドレッシングで抑制する。貼り付きはホールド不足や表面皮膜の影響が大きく、ホールド延長や表面処理改善で対策する。ブローホール・エクスパンジョンは入熱過多や拘束不足で生じ、通電時間の最適化と電極冷却強化が有効である。アルミでは表面前処理と高応答な定電流制御が有効である。

生産ラインへの統合

ロボットスポット溶接はガン重量と到達性、ケーブル取り回し、サイクルタイム、治具の拘束剛性が性能を左右する。セル全体では電源群の需要率、チラー能力、電極・ドレッサの保全計画、波形データのSPCとトレーサビリティを設計段階から織り込む。機械的締結(例:ボルト)との併用では工程配列や耐食設計も同時最適化する。

安全衛生と規格

低電圧大電流であっても感電・火傷・火災の危険があり、インターロック、遮へい、ロックアウト/タグアウト(LOTO)、PPEの遵守が必須である。冷却水漏れは感電や設備故障につながるため配管・継手点検を徹底する。適用規格はJIS/ISOの抵抗スポット溶接関連規格に準拠し、手順、記号、検査方法、記録要求を整備する。設備導入時は電源容量、力率、接地、排熱・排煙も含めた施設要件を満たす。

電極設計の補足

電極材質の選定は導電率・耐軟化性・耐摩耗性のトレードオフで決まる。先端径は電流密度と接触圧を規定するため、板厚・材質・目標強度から逆算して定める。電極間ピッチは熱干渉を避けるために板厚と材料に応じて設定し、冷却水は流量(例:2〜4L/min/ガン)と温度(例:20〜30℃)の管理で寿命と品質を安定化できる。

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