ステンレス管
ステンレス管は、鉄にCrやNiを添加して得られる不動態皮膜を活用し、耐食性・清浄性・耐熱性を必要とする配管に用いる中空断面材である。水・蒸気・薬液・高純度ガス・食品・医薬・半導体プロセスなど、腐食や汚染を嫌う用途で炭素鋼管に比べ長寿命を示す。代表材はSUS304やSUS316Lで、低炭素のL材は溶接熱影響部の粒界腐食やCr欠乏帯の抑制に有利である。
規格と寸法体系
ステンレス管の国内規格はJIS G3459(配管用)、JIS G3448(一般配管用薄肉管)、JIS G3463(ボイラ・熱交換器用)、JIS G3468(大径溶接管)などが代表的である。国際的にはASME B36.19Mにより呼び径と肉厚(Schedule 5S/10S/40Sなど)が規定され、外径はインチ系列に準じる。JISの呼び径は実寸と一致しないため、設計では外径・肉厚の実値を明記する。
種類と材質の選定
- SUS304/304L:一般設備に広く用いられコストと使い勝手のバランスが良い。
- SUS316/316L:Mo添加により塩化物環境の孔食・隙間腐食に強い。
- SUS321/347:Ti/NbでCを固定し高温域の粒界腐食に配慮。
- フェライト系(SUS430/444):熱膨張が小さくSCCに比較的強い。
- 二相系(SUS329J4L等):高強度と高耐食を両立し海水・化学プラントに適す。
塩化物濃度や温度、隙間の有無に応じてPREN(=Cr%+3.3×Mo%+16×N%)で耐孔食性の目安をとり、必要に応じ二相系や高Mo鋼を選定する。
製造法(シームレス/溶接)
ステンレス管は、ビレット穿孔後に熱間圧延するシームレス管と、冷延板を成形してTIGやレーザで縦継手を溶接する溶接管に大別される。溶接管は内外面ビードの平滑化(ビードカット)と焼鈍・酸洗により組織を整え、必要に応じ渦流探傷や水圧試験を行う。シームレスは厚肉・高圧に適し、溶接管は寸法の自由度とコスト効率に優れる。
表面仕上げと清浄度
- AP(Annealed & Pickled):焼鈍酸洗。一般配管向けの標準仕上げ。
- BA(Bright Anneal):光輝焼鈍で平滑かつ清浄。粒子付着を抑制。
- MP(Mechanical Polish):機械研磨によりRaを低減し洗浄性を高める。
- EP(Electropolish):微細な谷を電解で均し、RaとRzを同時に改善。
半導体や医薬用途ではASME BPEに準拠し、内面粗さ(例:Ra≤0.25 µm)やフェルール継手の死角低減、脱脂・不動態化処理、クリーン包装を要求する。オービタル溶接により均質なビード形状と再現性を確保する。
耐食メカニズムと劣化
ステンレス管の耐食性はCrリッチな不動態皮膜に基づくが、塩化物・高温・低pH・蒸発濃縮・隙間条件下では孔食・隙間腐食・SCCが発生しやすい。対策としてMo・N添加材の採用、ドレン溜まりを避けるレイアウト、定期的な洗浄・パッシベーション、L材による鋭敏化対策を組み合わせる。
圧力・強度設計
薄肉円筒の内圧設計はBarlow式を基礎に、許容応力は温度依存で規格値に従う。熱膨張(約17×10^-6/K)と配管拘束が熱応力や座屈を誘発するため、伸縮継手・ベローズ・スライドサポートなどで吸収する。支持間隔は外径・肉厚・内容物密度・許容たわみに基づき設定し、脈動圧や水撃への余裕を見込む。
成形・加工・施工
ステンレス管の曲げはスプリングバックが大きく、最小曲げ半径は外径の数倍を目安にマンドレル併用で皺・扁平を抑える。切断はチューブカッターや自動切断機でバリと微粒子を最小化し、脱脂・乾燥後にクリーン環境で組立てる。高純度配管ではHeリーク試験(例:1×10^-9 Pa·m^3/s級)やパーティクル測定を行い微漏れ・発塵を管理する。
溶接と熱影響部の管理
GTAW(TIG)のルート溶接では高純度Ar等で裏波シールドを行い、酸化皮膜(ヒートティント)を残さない。過大入熱は粒成長やCr欠乏を招くため、入熱・層間温度・トーチ角度を管理する。溶接後の酸洗・不動態化により耐食性を回復し、必要に応じフェライト量や窒素含有を確認する。
検査・品質保証・トレーサビリティ
材料はミルシート(成分・機械特性・熱番号)で追跡し、受入時にPMIで材質同定を行う。外観・寸法・粗さ・清浄度の検査、必要に応じ渦流・浸透・放射線などの非破壊試験を組み合わせる。完成後は耐圧・漏れ・フラッシングの記録を残し、保全時の原因解析に資する。
付属品・継手とシール材
- フランジ・ユニオン・ソケット・圧着継手・サニタリークランプ・フェルールなどの標準継手を用途で使い分ける。
- ガス系はメタルシールを、液系はPTFEやEPDM・FKMのOリングを選定し、温度・薬品・抽出物のリスクで評価する。
据付時は異種金属接触腐食や電位差、締結部の隙間腐食を考慮し、締付トルクと面圧を規定する。保温・トレースを行う場合は外面腐食や結露を抑えるため排湿経路を確保する。