ジグソー
ジグソーは、上下往復運動する細幅のブレードで木材・樹脂・薄板金属などを曲線・直線・開口形状に切断する電動工具である。手持ち式で取り回しに優れ、ベースプレート(シュー)を被削材に当てて案内しながら切り進める。ストローク長と毎分行程数(spm)、そしてオービタル機構の有無が切断能率と切断面品質を左右する。ブレードは多くが“Tシャンク”で、歯数(TPI)や幅・厚み・材質の選択により、合板の高速切断からステンレス薄板の微速切断まで対応範囲が広い。ベースの傾斜機構により一般に±45°のベベル切断が可能で、ポケットカットや内窓抜き加工にも適する。
構造と作動原理
ジグソーはモータの回転をクランク機構で往復運動に変換し、ブレードを上下に駆動する。ベースプレートは被削材との接触安定を与え、直進性と振動低減に寄与する。トリガと無段変速機構、ブロワや集じん接続口、LEDライトなどが装備される機種も多い。ブレードクランプは工具レスで着脱でき、作業中の摩耗・破断時にも迅速に交換可能である。
切断性能の指標
- ストローク長(mm):1回の上下行程で進む距離。厚物の能率に影響。
- 行程数(spm):1分あたりの往復回数。高いほど能率は上がるが発熱・バリ増大に留意。
- オービタル機構:上昇時に前進成分を与え、排出性と能率を高める。
オービタル機構の設定
オービタル量は段階調整が一般的で、合板・木材では大きめ設定で能率重視、金属や硬質樹脂では“切断面重視”としてオービタルを弱~オフにするのが定石である。
刃(ブレード)の種類と適用材
ブレードは“Tシャンク”が主流で、旧来の“Bシャンク”も一部で流通する。歯数は“TPI”で表され、低TPIは粗切断・高能率、高TPIは薄板・硬材の精密切断に向く。材質はHCS(炭素鋼)、HSS(高速度鋼)、Bi-metal、超硬チップ付などがあり、被削材と目的に応じて選定する。幅の狭い刃は小半径の曲線に有利で、幅広刃は直進性と直角度に優れる。
チッピング防止と切粉処理
化粧合板やメラミン化粧板では上面の欠け(チッピング)対策として、逆刃(アップカット)やスプリンターガードを用いる。ブロワや集じんを併用すると視認性・刃冷却・切断面品質が改善する。
ベベル切断とガイド活用
ベースプレートの傾斜で45°程度の面取りや留め切りが可能である。高精度を要する場合は平行ガイドや外付けガイドレールを併用し、ベース下面の滑走面を清潔に保つ。薄い材料では裏当て合板を敷くことでバリと裏割れを抑制できる。
加工精度の向上策
- 直角度:厚物や高送り時は刃の“逃げ”で直角度が低下しやすい。幅広・厚刃や低送りで改善。
- 最小曲率半径:刃幅と厚みに依存するため、急曲線は細幅刃と段階切りで対応。
- 熱と溶融:樹脂は発熱で溶けやすい。行程数を下げ、休止やエアブロワで冷却する。
ガイド穴とポケットカット
内側開口はドリルで先穴を設けて差し込む方法が確実である。刃先を傾けてのポケットカットも可能だが、反動と刃折れのリスクが上がるため、練習と保護具を前提とする。
材料別の作業条件
木材・合板では高行程数+強オービタルで能率重視、仕上げ面が重要なら弱オービタル+高TPIを選ぶ。アルミ・軟鋼薄板では行程数を中低速にし、切削油やワックスで発熱とバリを抑える。塩ビ・アクリルなどの樹脂は溶融防止のため低速・低送りとし、休止を挟む。繊維強化プラスチックでは専用刃と集じんを強めに用いて粉じんを管理する。
電源・駆動方式の違い
AC機は長時間の安定出力に優れ、18V級のバッテリ機は携帯性と十分な切断能力を両立する。ブラシレスモータは効率と耐久に優れ、低速域のトルク維持と発熱低減に効果的である。ソフトスタートや定速制御、無段変速ダイヤルは材質ごとの最適条件設定を容易にする。
保守・交換部品
ベースの滑走面、クランプ機構、ガイドローラの摩耗を定期点検し、偏摩耗は刃振れ・直角度悪化の原因となるため早期に補修する。シュー保護カバーは化粧材の傷防止に有効である。
安全衛生と作業手順
- 保護具:保護メガネ・防じんマスク・聴覚保護具を基本とする。
- 固定:被削材はクランプし、片手保持を避ける。ベース全面を確実に接地させてから始動。
- 停止・交換:刃交換や調整は停止・無電源・完全停止後に行う。
- 切断線の視認:墨線の先行視認と無理な押し込み回避で刃曲がりを防ぐ。
用途と選定の要点
ジグソーは、家具製作の曲線加工、キッチン天板の開口、配管まわりのフィット切断、現場での即応的な“その場成形”に適する。選定では①ストローク長・行程数・オービタル段数、②ベースの剛性と傾斜精度、③ブレード互換性(Tシャンク)、④視認性(LED・ブロワ)、⑤集じん適合、⑥電源方式と重量バランスを総合的に評価する。適切な刃と条件設定を組み合わせることで、曲線自由度と工程短縮を両立できるのがジグソーの本質的な価値である。