ジェットグラウトマシン|土木工事に不可欠なグラウト施工機器

ジェットグラウトマシン

ジェットグラウトマシンは、地盤中で高圧のセメントスラリーをノズルから噴射し、原位置土と切削・撹拌・置換することで円柱状または壁状の改良体(ソイルセメントコラム)を形成する施工機械である。止水・地盤補強・既設基礎のアンダーピニング・地下連続壁の閉合部充填など、都市土木やシールド発進・到達部の止水に広く用いられる。高圧(通常20〜50 MPa級)の噴流が土粒子の結合を破壊し、同時にセメント系スラリーが浸透・置換するため、透水係数の低減と強度の付与を同時に達成できる。

原理と適用範囲

高圧ポンプで加圧されたスラリーを、ロッド先端の微小ノズルから放射状に噴射し、回転・引上げ(リフト)させながら改良体を造成する。適用土質は砂・シルト・粘土で広く、礫混じり土でも条件次第で可能である。ただし大礫・玉石混じりや転石層では切削限界により柱径や品質が不安定になりやすい。地下水位が高い場合も、噴流エネルギと配合・注入量を適切化すれば止水効果を得やすい。

方式の分類(S/D/T方式)

  • シングル(S)方式:高圧セメントミルク単独噴射。装置が簡便で都市部小規模改良に適するが、礫分が多い土では径確保が難しい。
  • ダブル(D)方式:高圧水で切削し、同心的にエアで流動場を形成しつつセメントを供給。切削力と置換性のバランスに優れる。
  • トリプル(T)方式:高圧水で切削・緩め、外周のエアで土砂搬出を促し、別系統でセメントミルクを注入。大径化・高品質を狙う用途に多い。

主要構成機器

  • 高圧ポンプ:プランジャ式が一般的で、定格圧力と吐出量が柱径・改良品質を左右する。
  • ミキシングプラント:セメントミルクの水/粉体比(W/C)と粘性を管理し、連続供給する。
  • ロッド・モニタ(ノズル):ノズル径、噴射角、配置数が切削効率を決める。耐摩耗材の採用が必須。
  • 回転・引上げ装置:所定の回転数(rpm)とリフト速度(m/min)を高精度で制御する。
  • 計測・管理装置:圧力、流量、回転、引上げ、注入量、深度の実時間記録を行いトレーサビリティを確保する。

施工手順

  1. 削孔・先導:所定深度までロッドを圧入または先導削孔する。
  2. 噴射改良:設定深度で噴射開始し、回転・引上げを制御して所定径を確保する。
  3. ヘッド処理:地表近傍は噴発・隆起を避けるため出力を調整し、天端を整形する。
  4. 養生・確認:所定強度発現期間後にコア採取や透水試験を実施する。

設計・配合とパラメータ

ターゲット透水係数や一軸圧縮強度(例:0.5〜2.0 MPa級)に応じて、W/C、添加材、単位注入量(kg/m)、噴射圧力、流量、ノズル径、回転数、引上げ速度を総合設計する。一般に引上げ速度を遅くすれば径は大きくなるが、過剰改良や地盤隆起のリスクも高まる。砂質土では切削が容易な反面、逸失流動に留意する。粘性土では切削エネルギを高め、混合・置換を促進する設定が有効である。

品質管理・検査

  • 出来形管理:地中レーダや試験掘削、試験杭で径・偏心を確認する。
  • 強度確認:硬化後のコアを採取し、含水比・単位体積質量・一軸圧縮強度を試験する。
  • 止水性能:現位置透水試験(Lugeon 等)や遮水壁の湧水量計測で評価する。
  • 施工記録:圧力・流量・回転・リフト・注入量・深度の時系列を保存し、異常値を解析する。

代表的な適用例

  • シールド発進・到達立坑周辺の止水・補強。
  • 地下外壁の継手・閉合部の止水処理。
  • 液状化対策の局所補強、基礎下のアンダーピニング。
  • 河川堤防や遮水壁のシールアップ、湧水源封止。

施工上のリスクと対策

  • 噴発・隆起:上部緩い地盤では段階出力や多段施工で抑制する。
  • 周辺影響:近接構造物・埋設物は事前探査し、監視変位計で管理する。
  • 逸失・空洞化:透水性が高い場合は事前グラウトやリング状の先行改良で捕捉する。
  • ノズル摩耗:径増大による流量誤差を防ぐため、定期的に摩耗量を点検・交換する。

環境・安全面

スラリー飛散や泥水の適正処理、騒音・振動の低減が重要である。高圧設備のためホース破断・誤噴射に備えた耐圧試験、緊急遮断、立入管理を徹底する。粉体供給部では粉じん暴露を抑える密閉化・集じんを行い、排水はpH・SS管理のうえ処理する。

機器性能の指標

  • 到達圧・安定吐出:設定圧力域での脈動の小ささが品質再現性を左右する。
  • 制御分解能:回転数0.1 rpm、引上げ0.01 m/min級の分解能が望ましい。
  • 記録機能:計測データの時刻同期と自動レポート生成は監査対応に有効である。

関連技術との比較観点

ジェットグラウトマシンは混合型(DSM)より大径化・止水性能で優れる一方、設備・管理が高度でコストも上がりやすい。高止水・高強度が要求される局所改良や狭隘地の複雑条件で真価を発揮する。