シュー
配管支持に用いられるシューは、管底に取り付けて荷重を構造体へ伝達しつつ、軸方向・径方向の熱膨張や収縮に応じて滑り・案内・固定の機能を与える部材である。一般に「パイプシュー」とも呼び、鋼板成形の台座とウェブ、止め板、取付バンドなどで構成する。床板や鋼梁上に設置してすき間を確保し、断熱や防食、振動低減、点検性の向上にも資する。溶接式、クランプ式、断熱シューなど用途に応じた多様な仕様があり、摩擦ライニングやスライドプレートを併用して摩擦係数を管理するのが設計上の要点である。
用途と機能
シューの主要機能は、(1)自重・内容物・保温材などの鉛直荷重を受ける支持、(2)配管と架台の接触・干渉回避、(3)熱膨張に伴う移動の許容、(4)地震・風・配管振動に対する安定化、である。装置と配管の相対変位を許容しつつ、必要に応じてガイド・ストッパを組み合わせることで、過大な反力の発生やノズル荷重の超過を防止する。点検時はシューの摺動部と取付部の損耗・緩みを確認し、塗膜やライニングの損傷を早期に補修する。
種類と構造
代表的なシューは、取り付け方法と機能付加で分類できる。管径や荷重、据付条件に応じて選定し、溶接長・ボルト本数・ウェブ厚・ベース寸法を荷重計算で決める。ベースプレートと床板の間にスライドプレートを挟み、摩耗や引っかかりを避ける構成が一般的である。
溶接式
溶接式シューは管外周へ直接溶接して一体化するため、高い剛性と据付安定性を得られる。初期コストと施工労力は増すが、重量配管や高温ラインなどで有効である。熱影響による配管材質の性状変化を考慮して溶接施工要領と非破壊検査を適用し、仕上げ後は塗装・溶融亜鉛めっきなどで防食する。
クランプ式
クランプ式シューはU字バンドやクランプで締結し、既設配管への後付けや溶接不要の現場で有利である。締付け力は移動抵抗に影響するためトルク管理が必要で、パッドやライニングで局部応力とすべり性を両立させる。繰返し温度変化で緩みやすいため、定期点検で再締付けを行う。
断熱・低温対応
低温・極低温ラインでは断熱シューを用い、G10やフェノール系ラミネートなどの熱的に硬い材料で熱橋を遮断する。圧縮クリープや吸水性を踏まえて許容圧縮応力を設定し、結露・霜付きを避ける構造とする。高温ラインでは耐熱パッドと膨張余裕を確保し、表面温度が高い部位には被覆材で火傷リスクを下げる。
材料と表面処理
シューの材質はSS400やSM490などの一般構造用鋼、耐食が必要ならSUS304/316を選ぶ。屋外・湿食環境では溶融亜鉛めっきや重防食塗装を適用し、摺動面は平滑仕上げとして塗膜噛みを避ける。異種金属接触が避けられない場合は絶縁パッドを介し、電食の進行を抑制する。
摩擦とライニング
熱膨張に伴う移動を円滑にするには、シュー底面と架台の間にPTFEライニングやステンレススライド板を設け、目標の摩擦係数μを設計値に合わせる。一般にPTFE系はμ≈0.04〜0.1、鋼対鋼は0.3〜0.5程度である。砂塵・塗膜・腐食生成物は摩擦を増大させるため、保護カバーや清掃計画で管理する。ベースの角部は面取りし、局部的な引っ掛かりを防止する。
熱膨張と拘束設計
配管の伸びはΔL=αLΔTで評価し、シュー位置とガイド・固定点の配置で反力を制御する。滑り条件が満たされないとアンカ化してノズル荷重超過や曲げ応力増大につながるため、摺動面の平面度・清浄度・面圧を管理する。温度サイクルに伴う移動量はマーキングで実測し、実機の挙動に合わせてストッパ間隔やガイドのクリアランスを調整する。
固定・案内・ガイドの使い分け
固定点は配管系の基準点として全方向拘束、ガイドは横方向のみ拘束、ストッパは所定範囲で移動を制限する。シューはこれらと組み合わせて、必要自由度を残しながら位置決めと荷重分担を行う。高荷重部はスライドベースを併用して面圧を低減し、微振動が問題となる区間は防振ゴムやスナバーで補助する。
設計基準と許容荷重
設計では自重・内容物・保温・機器反力・温度荷重・地震・風を荷重組合せとして評価し、シュー本体強度、ボルト・溶接のせん断・引張、ベースの局部座屈、摺動面圧、配管外面の局部応力を確認する。許容値は材質と温度に依存し、メーカー仕様表や社内標準に従う。アンカーボルトの引抜耐力と床板のコンクリート/鋼梁の局部破壊も忘れずに照査する。
据付・保守
据付時は芯出しと高さ調整を行い、移動方向をマーキングして初期位置を記録する。溶接式シューは溶接後の歪みと表面仕上げを確認し、クランプ式は規定トルクで締結する。摺動面の塗装は除去し、PTFEやステンレス板は異物混入がないよう清掃する。運転後に移動痕跡を点検し、緩み・磨耗・腐食が見られた場合は増し締めや部材交換で復旧する。
よくある不具合と対策
塗膜噛みによる固着、異種金属接触による電食、ライニング摩耗、アンカ化による想定外反力などが代表例である。対策としては、摺動面の無塗装化と平滑加工、絶縁材の介在、交換容易なパッド構造、ガイドの適正クリアランス設定、締結部の定期点検が有効である。締結部材は適正強度区分のボルトを用い、潤滑剤はPTFE面を劣化させない種類を選択する。
関連部品
シューと併用される代表部品には、ガイド・ストッパ・スライドプレート・U字バンド・ローラー支持・ばね支持などがある。系統としてはスプリングハンガやスナバー、スライドベース、摩擦パッド、絶縁パッドが近縁で、設計思想は「必要自由度を残し、不要自由度を拘束する」ことで共通する。周辺部品の仕様を統一し、現場交換性と保全性を高めると運用が安定する。