シェービング盤
シェービング盤は、ホブ切りや成形加工後の歯車の歯面を、鋸目(セレーション)付きのシェービングカッタと交差軸で転がし噛合させ、微小切削により仕上げ精度と面粗さを高める工作機械である。一般に焼入れ前の軟状態(ソフト)で実施し、歯形・リードの微修正やノイズ低減、後工程の熱処理歪み見込み補正に有効である。自動車用トランスミッションなど大量生産部品で高い生産性を発揮し、取り代は片側で数十μm程度と小さいのが特徴である。
加工原理
シェービング盤では、歯車形状を持つカッタに微細なセレーションを設け、被削歯車と10〜25°程度の交差角で噛合させながら相対転がり運動を与える。セレーションの稜が歯面に細片を発生させることで面を「削る」。創成運動により歯形全域を均一に更新でき、ホブ加工で残ったリードうねりやバリの除去、面粗さの改善(Raおよそ0.4〜1.6μm)が期待できる。噛合比・ロール比・送りの組み合わせで歯形偏差やリード修正量を制御する。
シェービングカッタ
カッタは高速度鋼(HSS)や粉末HSSが主で、被削モジュール・圧力角・歯幅に合わせて設計する。歯面には一定ピッチのセレーションを施し、切削性とカッタ寿命のバランスを取る。再研削で再使用が可能だが、外径や基準が変化するため補正テーブルで加工諸元を追従させる。交差角や取付角度の設定精度は仕上がり直進度・リード誤差に直結する。
加工方式の種類
- トラバース(軸方向送り):最も一般的で、歯幅方向に送りながら全面を均一仕上げする。
- プランジ(突っ込み):歯幅が狭い、肩付きワークで有効。短時間で所定部位を更新する。
- ディアゴナル(斜め送り):送り方向を斜めに設定し、微小なリード補正(クラウニングやテーパ)を付与する。
- アンダーパス:歯底近傍の干渉を避けつつ歯元の面品位を改善する運動を採る。
機械構成とNC制御
シェービング盤は、ワーク主軸とカッタ主軸、交差角設定機構、X・Z(またはU・W)送り軸、ロール(位相)制御軸などで構成される。近年は全軸NC化により、ロール比・送り・交差角補正をプログラムで最適化できる。自動搬送(ガントリ・ロボット)を備え、サイクルタイム10〜30s級の量産ラインにも適合する。
達成精度と面粗さ
一般にホブ加工後からの改善として、歯形・リードの総合精度を1〜2グレード向上させることが可能である。面粗さはRaで0.4〜1.6μm程度が目安で、騒音低減や運転効率の向上に寄与する。ピッチの根本的補正や大きな偏心は不得手であり、前段のホブ盤や段取り精度が重要となる。
適用範囲と制約
シェービング盤は軟材(焼入れ前)に適用するソフトフィニッシュであるため、焼入れ後の高硬度材には適さない(その場合は歯車研削やホーニングを用いる)。外歯・内歯ともに適用例はあるが、一般には外歯が主流である。肩干渉、キー溝端部、段付きの形状制約がある場合は、工程分割やカッタ仕様の工夫で回避する。
工程設計(熱処理歪みへの備え)
焼入れ後の歪みを見込み、シェービング時点で歯形修正(トップリリーフ、フランクリリーフ)、リード修正(クラウニング、テーパ)、バイアス補正を与える。測定結果を基に補正量をフィードバックするクローズドループで安定生産を図る。熱処理後は必要に応じて軽研削で最終寸法を合わせる。
主要パラメータ
- 交差角:10〜25°の範囲で設定し、切削性と形状転写のバランスを取る。
- 取り代:片側10〜40μm程度。過大はバリや面荒れの原因となる。
- 送り(mm/rev):トラバース速度とロール比の組合せで面品位が決まる。
- ロール比・位相:噛合状態を規定し、歯形・リード修正に影響する。
- 冷却・潤滑:ミスト/フラッディングで切屑排出と面粗さを安定化する。
トラブルシューティング
面の曇りや縞模様はセレーション摩耗、ロール比不適、潤滑不足が原因となりやすい。刃先溶着やバリ増は取り代過大、送り過多、交差角不適が疑われる。歯先当たり集中はクラウニング不足、ワーク芯高ずれ、段取り剛性不足などが背景にある。
関連工程・機械との位置づけ
前工程の歯切盤(特にホブ盤)で基礎精度を確保し、本機で微修正・面仕上げを行う。キー溝が必要な場合は別途スロッターや形削り盤で加工する。大径内歯や段差部の粗加工にはブローチ盤が選択されることもある。高精度最終仕上げが要求される場合は、熱処理後に研削へ切り替える。
設備投資と量産適性(補足)
シェービング盤はカッタ費用と再研削管理がコスト要因である一方、サイクル短縮と自動化適性が高く、量産でトータルコストを下げやすい。段取り換えはカッタ交換・交差角・ロール諸元の変更が中心で、NC化により段取り時間の短縮が進んでいる。