サーボバルブ
サーボバルブは、電気信号を油圧の流量・圧力へ高精度に変換する電気油圧変換機器である。微小な電流でパイロット段を駆動し、スプール位置を連続的に制御することで、アクチュエータの位置・速度・力を高応答で調整できる。代表的な内部機構はフラッパ・ノズル式やジェットパイプ式で、いずれもトルクモータやLVDTなどのフィードバック要素を備える。高分解能・低ヒステリシス・広帯域が求められる成形機や油圧プレス、航空機作動系、振動台などで広く用いられる。比例弁に比べ内部漏れや清浄度要求が高いが、その代償として優れた追従性と安定性を提供する。
動作原理
サーボバルブは2段(または3段)構成が基本である。第1段のパイロット圧差を利用して第2段スプールを駆動し、ポート間のΔPと開口面積を連続制御する。フラッパ・ノズル式ではトルクモータがフラッパを偏位させ、左右ノズルの圧差を作る。ジェットパイプ式では微小噴流の当たり位置を変え、受圧面の圧差を得る。スプール位置はLVDT等で検出し電気的に閉ループ化され、ゼロ点(ニュートラル)近傍の感度と直線性が確保される。
主要構成要素
- トルクモータ:微小電流でパイロット段を駆動する電磁素子。
- フラッパ/ノズルまたはジェットパイプ:圧力差を生成する要素。
- スプール・スリーブ:ポートの開口を連続変化させる制御部。
- LVDT等の位置センサ:スプール位置のフィードバック用。
- サーボアンプ:電流駆動・PID補償・ディザ付与などを行う。
- フィルタ/ストレーナ:清浄度維持(ISO 4406推奨クラス)に必須。
代表方式
フラッパ・ノズル式
サーボバルブの定番方式で、ノズル背圧差をパイロット信号として利用する。微小変位で高い圧力ゲインを得やすく、低流量域の分解能が高い。
ジェットパイプ式
噴流の衝突位置で圧力差を得る。粒子に対する耐性が比較的高く、汚染度の厳しい環境でも安定しやすい。
ダイレクトドライブ式
電磁アクチュエータでスプールを直動させる。構造が簡潔でメンテナンス性に優れるが、高応答化には磁気回路と可動部の最適化が要る。
特性指標
- 流量ゲイン(Kq):入力電流あたりの流量変化。弁定格とΔPに依存。
- 圧力ゲイン(Kp):負荷圧の変化特性。負荷剛性や配管インダクタンスに影響。
- 周波数応答:−3 dB帯域や位相遅れ。一般に数十〜数百Hz。
- ヒステリシス/スティクション:ゼロ点近傍の微小運動で重要。
- 内部漏れ:発熱・効率とトレードするため仕様で規定される。
- ゼロシフト/ドリフト:温度や経時で生じ、定期調整が必要。
制御と応用
サーボバルブは位置・速度・力の高帯域制御に適する。成形機や油圧プレスの圧力プロファイル、振動試験台の波形追従、航空機アクチュエータの操舵などで利用される。指令生成にはPIDに加えモデル追従やフィードフォワードを併用し、負荷側(例:油圧シリンダ)の固有振動数・摩擦・コンプライアンスを見込むと安定化しやすい。
選定の要点
- 定格流量と供給圧:アクチュエータ必要流量とΔP(通常70〜21MPa系)で弁容量を整合。
- 負荷特性:質量・ばね・減衰・外乱力を同定し、帯域と余裕度を設計。
- 清浄度:ISO 4406クラスを満たす濾過。起動前のフラッシングが有効。
- 電気系:サーボアンプの電流駆動能力、ディザ周波数、ノイズ耐性。
- 周辺機器:油圧制御回路の減衰付与、背圧設定、配管共振の抑制。
メンテナンスと故障モード
代表的な不具合は、スラッジによるスプール固着、ノズル詰まり、ゼロ点偏差増大、コイル断線やフィードバックワイヤ破断である。対策として、適切なフィルタ選定、オイル管理(酸化・含水の監視)、ディザ付与による摩擦低減、定期のゼロ点再調整と周波数応答点検を行う。異常診断ではステップ応答、正弦スイープ、流量バランステストが有効である。
データシートの読み方
- 定格流量/圧力損失曲線:実使用ΔPでの有効流量を読み替える。
- 周波数応答:−3 dB点と位相余裕を確認し、目標帯域の2〜3倍の弁を選ぶ。
- ヒステリシス/しきい値:微小位置決めや等速制御の品質に直結。
- 許容汚染度・推奨粘度:寿命と信頼性を左右する重要項目。
関連機器とシステム化
サーボバルブは電磁駆動要素(例:電磁アクチュエータ、電動アクチュエータ)や負荷側アクチュエータ(リニアアクチュエータ)と統合して使われる。比例制御用途では比例制御弁と機能分担し、要求帯域・コスト・清浄度で使い分ける。力制御ではロードセルやトルクセンサを併用し、フィードバック信号のS/Nを高めることが肝要である。
立ち上げ・調整の勘所
初期は機械ゼロ合わせと電気ゼロ調整を順守し、リークと背圧を規定値に合わせる。ディザ周波数・振幅はスティクション低減に有効だが、帯域近傍に置くと振動を誘発するため注意する。閉ループ同定で負荷の固有振動数を把握し、コントローラのゲインと位相余裕を確保すれば、サーボバルブの高応答を安定に引き出せる。