サーボドライバ|位置・速度・電流を閉ループ制御

サーボドライバ

サーボドライバは、サーボモータの電流・速度・位置を高帯域で制御する電力変換器兼コントローラである。一般に三相PWMインバータを内蔵し、電流(トルク)制御ループ、速度制御ループ、位置制御ループのカスケード構成をとる。エンコーダなどのフィードバック信号を高速サンプリングし、モータ定数や負荷慣性に応じてゲインを最適化することで、追従性と安定性を両立する。工作機械、ロボット、搬送装置、半導体製造装置などで広く用いられ、微小変位の精密位置決めから高加減速のトルク応答まで、要求仕様に応じてチューニングされる。

定義と役割

サーボドライバは上位コントローラ(PLC、CNC、モーションコントローラ)からの指令を受け、モータに供給する電圧・電流を生成して所望の運動を実現する。目標値と実測値の偏差に基づく閉ループ制御を実行し、外乱(摩擦、負荷変動、共振)に対して応答を保つ。制御対象は交流サーボモータ(永久磁石同期電動機:PMSM)が主流で、ベクトル制御(FOC)によりd-q軸電流を独立制御する。

構成要素

  • 電力段:IGBTまたはMOSFETの三相ブリッジ、ゲートドライブ、DCリンクコンデンサ、回生回路
  • 制御演算:電流PI、速度PI、位置P/PI、前置補償(フィードフォワード)
  • 検出系:シャント/ホール電流検出、エンコーダ/リゾルバ入力、温度・電圧監視
  • I/O・通信:パルス列入力、アナログ指令、各種フィールドバス

制御モード(位置・速度・トルク)

位置制御では目標パルス列や軌跡指令に追従し、速度制御では回転速度の安定化、トルク制御では力・張力・押付け力の直接制御を行う。カスケード構成では内側ほど帯域を高く設定し、典型的に電流帯域>速度帯域>位置帯域の順である。高応答が必要な用途では前置速度・前置加速度(FF)を併用して追従遅れを低減する。

エンコーダと分解能

サーボドライバはインクリメンタルや絶対値エンコーダに対応し、光学式・磁気式・タムフラックス式などがある。分解能は制御帯域や位置決め精度に直結し、補間(電子ギヤ)を用いて高分解能化する場合がある。絶対値方式は原点復帰不要の利点があるが、バックアップ電源や通信初期化が必要となる。

チューニングと安定化

  • ゲイン設定:負荷慣性比(Jload/Jmotor)に応じて速度・位置ゲインを調整
  • ノッチフィルタ:機械共振周波数を同定し、ピークを抑制
  • 振動抑制:剛性制御、速度フィードバックの微分補償、ディザ抑制
  • オートチューニング:同定運転により慣性・摩擦を推定し、ゲインを自動設定

サンプリングと帯域

電流制御は数十kHz、速度・位置は数kHz程度でサンプリングされることが多い。Bode線図で位相余裕・ゲイン余裕を確保し、量子化・遅延・計算時間による位相遅れを考慮する。エンコーダ分解能と摩擦のスティックスリップは微小速度の発振要因となるため注意する。

通信とフィールドバス

サーボドライバはEtherCAT、PROFINET、EtherNet/IP、MECHATROLINK、CANopenなどのリアルタイムネットワークに対応する。分散クロックにより同期制御を実現し、多軸補間、電子カム、ギヤリングを可能にする。遅延とジッタは軌跡精度に影響するため、ネットワーク負荷設計と配線品質が重要となる。

電源・回生・EMC

加減速時の回生エネルギーはDCリンクに戻り、ブレーキ抵抗で消費するか回生ユニットで系外へ返す。瞬停対策としてDCリンク容量や補助電源を検討する。EMC対策ではシールドケーブル、アースの一点接地、ノイズフィルタ、モータケーブルの分離配線が基本となる。筐体は熱設計(放熱器、風量)とクリアランス/沿面距離を満たす必要がある。

保護機能と機能安全

  • 保護:過電流、過電圧、低電圧、過熱、エンコーダ断線、過速度、サーミスタ異常
  • 機能安全:STO(Safe Torque Off)、SS1/SS2、SLS、SDIなど。IEC 61800-5-2に準拠した実装が行われる
  • ブレーキ制御:非常停止時の保持ブレーキ制御と減速ランプの整合

選定手順と計算の要点

  1. 要求仕様の整理:負荷質量、移動距離、サイクルタイム、許容整定時間、許容オーバーシュート
  2. トルク計算:T = J・α + 粘性・摩擦・外力。ピークトルクと連続トルクを分離評価
  3. 慣性比の確認:慣性比は一般に10以下が目安で、ゲイン余裕確保に有利
  4. 速度・位置精度:分解能、バックラッシ、剛性、熱膨張を考慮
  5. 熱・デューティ:RMSトルクから温度上昇を見積もり、連続定格内に収める
  6. 電源容量:同時加速時のピーク電流、回生処理能力、瞬停保持を評価

代表的な応用

サーボドライバはリニアステージのナノメータ級位置決め、産業用ロボットの多軸同期、包装機の電子カム、AGV/AMRの車輪トルク制御、張力制御(フィルム・ワイヤ)などに用いられる。高応答制御はスループットを上げる一方、架台剛性や機械共振がボトルネックとなるため、機電一体での設計最適化が鍵となる。

故障モードと対策

  • 共振・ハンチング:ノッチ設定、補剛、駆動条件の再設計
  • 過電流・トリップ:加減速時間の見直し、トルク制限、配線の誤相チェック
  • エンコーダ異常:配線ノイズ対策、終端抵抗、接地方式の是正
  • 過熱:冷却風量、キャビネット温度、デューティ軽減

用語と略号

  • FOC:Field Oriented Control(ベクトル制御)
  • STO:Safe Torque Off(安全トルク遮断)
  • RMS/Peak:実効/瞬時定格
  • J:慣性モーメント、α:角加速度
  • FF:Feedforward(前置補償)

実装上の注意

配線は電源・モータ・エンコーダを物理分離し、シールドの片側接地や360度接地を適用する。グランドループを避け、制御盤内で電源・信号の配線ダクトを分ける。試運転では低ゲイン・低速度から開始し、機械端での衝突防止にソフトリミットとハードリミットを両方設定する。ログ機能でトリップ原因と周波数成分を確認し、必要に応じてゲインスケジューリングを適用する。

関連機器との関係

サーボドライバはブレーキ電源、外部抵抗、直流共通母線、バッテリーバックアップ、エンコーダカプラ、リニアスケールと組み合わせることで性能を引き出す。位置決めは上位のモーションプロファイル(S字加減速、ジャーク制限)と一体設計とし、機械系の剛性・減衰の改善が総合性能を左右する。