サンロードセンサー
サンロードセンサーは、車室内に入射する日射量を検出し、空調(HVAC)の自動制御に反映させる光学式センサーである。日射が強いと、人体は外気温が同じでもより暑く感じるため、空調制御では温度だけでなく放射熱の影響を補正する必要がある。サンロードセンサーはダッシュボード上部などに設置され、太陽の入射角や遮蔽物の影響を受けつつも、実用的な日射強度を電圧もしくはデジタル値として出力する。これにより、吹出し温度や風量、内外気切替の指令が迅速に補正され、体感温度の安定化と快適性の向上、さらには霜取りや曇り抑制にも寄与する機能部品である。
原理と構造
サンロードセンサーの多くはフォトダイオードまたはフォトトランジスタを用い、可視〜近赤外域を主に受光する。レンズ一体のモールド構造や赤外透過フィルタを備え、感度とノイズを最適化する。回路は温度補償を持つものが多く、車室温の変化による光電変換特性のズレを抑える。出力は0〜5Vのアナログ電圧やLINなどのデジタルインターフェースが用いられ、HVAC ECUはA/D変換またはフレーム受信により信号を取り込む。
配置と入射特性
設置位置はダッシュボード上面やフロントウィンドシールド根元付近が一般的である。ここは直達日射と天空光をバランス良く拾え、かつワイパーやデフロスタ吹出口による外乱が相対的に少ない。入射角依存性(コサイン特性)を補正するため、受光窓の形状や拡散板で角度応答を均し、車種ごとの内装反射も考慮してチューニングする。左右独立温調車では、左右にセンサーを分けて乗員側の日射差を把握する設計も行われる。
制御ロジックの要点
HVACは目標吹出し温度Toutや風量Qを計算する際、外気温、車内温、蒸発器温度、湿度、車速に加えてサンロードセンサーの信号Sをフィードフォワード補正として用いる。典型的には次のような形で寄与する。
- 日射強(S↑)時:冷房では吹出し温度を低め、風量を増加
- 暖房では窓面曇り抑制を優先しつつ、足元への配分を増加
- 左右独立制御では、Sの左右差でゾーン別の温度指令を微修正
簡略表現としては Tout*=Tout0−ks·S(冷房側)などの線形補正を基礎に、車速や日射変動の微分成分をダンピングして乗員が違和感を覚えない応答に整える。
人間の暑熱感との関係
同一の外気温でも日射が強いと、皮膚表面は放射加熱により実感温度が上昇する。サンロードセンサーはこの放射成分を代理指標として取り込み、SET(Standard Effective Temperature)やPMVの考え方に近い体感補正を簡易的に実装する。結果として、急な晴れ間や雲の流れによる日射変動時でも、温調が先回りして快適性を維持できる。
故障症状と診断
サンロードセンサーの断線・短絡やコネクタ接触不良が起こると、晴天時でも日射ゼロと判定され、冷房不足・温風過多・曇りやすさ増大などの症状が出る。ECUは異常レンジを監視しDTCを記録する。診断の実務では、サービスモードでセンサー値のライブデータを読取り、懐中電灯照射で値が追随するか確認する。ダッシュマットや紙、芳香剤などによる遮蔽が原因となる例も多い。
試験・校正と車種適合
量産適合では、実車で晴天・薄曇り・逆光・トンネル出入りなどのシナリオを繰り返し、センサー出力と空調応答の時定数を整える。内装色やフロントガラスの熱線・IRカット層は受光環境に影響するため、部品単体の特性だけでなく車両総合での相関検証が不可欠である。校正値はHVAC ECUのパラメータとして車種別に管理される。
電動車での考慮
BEV/HEVでは空調が航続やエネルギーマネジメントに直結する。強日射時は冷房負荷が増すため、サンロードセンサーのフィードフォワードで無駄なオンオフを避け、コンプレッサ回転や冷媒循環を滑らかに制御することで消費電力を抑える。プレコンディショニングやヒートポンプ併用時も、日射を考慮した吹出し温度の初期指令が有効である。
関連センサーとの連携
サンロードセンサー単独では体感を完全には表現できない。車内温センサー、外気温センサー、蒸発器温センサー、湿度センサー、曇り検知ロジックなどと合わせて多変量で制御し、急激な日射変化時は一時的な風量ブースト、安定時は静粛性を優先するなどの最適化を行う。これにより暑熱感・曇り・消費エネルギーのトレードオフを高い水準で解くことができる。
用語と設計ノート
一般に“sunload”や“solar sensor”とも呼ばれる。照度(lx)は人間の視感度重み、日射強度(W/m²)は熱的影響の指標であり、センサーの分光感度とHVAC側の換算テーブル設計が重要となる。入射角補正、温度補償、ダッシュ反射、内装の経年変化(艶や退色)も考慮してロバスト性を確保するのが望ましい。