サイドシル|側面衝突に備え剛性を確保する骨格

サイドシル

サイドシルは自動車ボディ側面の下端、前後ホイールハウスを結ぶ縦通材で、英語では“rocker panel”や“side sill”と呼ぶ。フロアとピラーをつなぎ、荷重の流れを制御してボディ剛性と衝突安全を担保する一次構造部材である。外観パネルとしてのアウターシルと、荷重を負担するインナーシルやリインフォースで箱形断面を構成し、ねじり剛性・曲げ剛性の基礎を形づくる。ジャッキアップポイントの受けや、ドア開口剛性の確保、路面からの飛び石・水・塩害への対策も設計の重要要素である。

位置と構成

サイドシルはフロアサイドメンバの外側に位置し、A〜Cピラーの根元と連続する。断面は閉断面(ハット+カバーパネルなど)とし、アウター・インナー・リインフォースの3層で局部座屈に耐える。サービスホールやドレインホールを適切配置し、防錆剤の流動性と排水性を確保する。

  • アウターシル:意匠と外来損傷対策を兼ねる。
  • インナーシル:荷重主経路。ピラー根元・フロアクロスメンバと結合。
  • リインフォース:ジャッキアップ・衝突荷重の局部補強。

機能と役割

サイドシルはねじり剛性、曲げ剛性、開口剛性(ドア開口の楕円化抑制)に寄与する。側面衝突時はBピラーやドアビームと荷重を分担し、骨盤位置保護と侵入量低減に寄与する。底付きや段差通過時の局部荷重も受けるため、ビードやスウェージで座屈耐性を高める。

材料と板厚

鋼(ハイテン・超ハイテン)

一般に0.7〜1.6mm級の冷延鋼板を用い、590MPa級を基準に部位で780〜980MPa級を配する。高強度化に伴うスポット溶接性低下には電流・加圧の最適化で対応する。外装意匠品質が必要なアウターは成形性と塗装肌を優先する。

アルミ・複合材

軽量化を狙いアルミ押出やハイドロフォームで閉断面化する例がある。樹脂+ガラス繊維のインサート補強で局部座屈を遅延させる設計もみられる。

製造と接合

サイドシルの接合はスポット溶接、レーザー溶接、構造用接着剤のハイブリッドが主流である。フランジ幅・ピッチ・ナゲット径は強度・シール・耐食のトレードオフで決める。継ぎ目にはシームシーラー、外面にはストーンガード塗装や樹脂ガーニッシュでチッピングを抑制する。

  • スポット溶接:量産性と公差吸収に優れる。
  • レーザー:連続接合で剛性と気密性を両立。
  • 接着剤:荷重分散と疲労寿命向上、電食抑制に有効。

設計指針

断面二次モーメントと断面係数を最大化しつつ、地上高やドア下縁との意匠制約に適合させる。クラッシュ時の荷重経路はフロント・リアサイドメンバ、ロッカー、ピラー基部で連続させ、屈曲や早期座屈を避ける。サービス性ではロッカーモール脱着やリフトアップ位置の視認性が重要である。

NVH・気密水密

閉断面は固有振動数の山を作りやすい。ビード配置や発泡材の充填で剛性チューニングを行い、ロードノイズ伝達を低減する。シール設計はドアウェザーストリップと連携し、水密経路とドレイン計画を両立させる。

側突安全と修復

側面衝突ではBピラー下端とサイドシルの結合部が要。クラッシュボックス的に段階的座屈を促し、乗員腔の侵入を抑える。修復時はメーカー指定のカット位置・補強重ね代・溶接方法(スポット復元、MIGブレージング等)を順守し、寸法基準治具で開口寸法と平行度を検査する。

耐久・防錆

飛び石や塩害で外面塗膜が損傷すると、フランジ部から腐食が進む。電着塗装到達性を意識したホール設計、亜鉛めっき鋼板の採用、シール未充填域の排除、ドレインの詰まり対策が要点である。

EV・SUVでの相違

EVはバッテリーパックの側方防護要求が高く、サイドシル断面の大型化や超ハイテンの採用が進む。SUVやピックアップではランニングボード装着やオフロード荷重に備え、外来衝撃とねじり荷重への余裕度を大きく確保する。

関連部位と用語

ロッカーパネル、ロッカーとも呼ばれる。前後はホイールハウス、上方はドア開口、内側はフロアサイドメンバと接続する。外装ではバンパーフェンダー、開口シールではウェザーストリップと関係が深い。締結要素ではボルトの腐食グレードと防錆仕様を整合させる。

検査・評価

ボディ全体ねじり剛性、ロッカー部三点曲げ、ドア開口の面外剛性、局部座屈荷重を評価する。耐久は段差往復走行試験やストーンチッピング試験を実施し、塗膜厚・シール連続性・ドレイン流量を確認する。量産ではカメラ計測やレーザートラッカーでフランジ位置とギャップ/フラッシュを管理する。