コンダクタンス
コンダクタンスは電気回路において電流の流れやすさを表す尺度である。記号は半角英字のGを用い、SI単位はS(シーメンス)である。オームの法則V=IRに対しI=GVと書けることから、Gは抵抗Rの逆数G=1/R(=Ω^-1)で定義される。直流では純粋に導電性を表し、交流ではアドミタンスYの実部として損失成分を担う。配電系統の損失評価、電子回路のノード解析、材料の導電性評価など、工学各分野で基本量として扱われる。
定義と次元
コンダクタンスGは、電圧1 Vあたりに流れる電流Aの大きさを与える物理量で、G=I/Vである。単位はS=Ω^-1であり、次元は[Ω]^-1と書くのが簡潔である。微視的には導電率σと幾何因子によりG=σ·A/ℓで表され、断面積Aが大きく長さℓが短い導体ほどGが大きい。
抵抗・アドミタンスとの関係
抵抗RとコンダクタンスGは逆数関係にある。交流ではアドミタンスY=G+jBで表し、実部Gが有効導電、虚部Bがサセプタンスである。コンデンサのサセプタンスはB=Cω、インダクタではB=−1/(Lω)となる。したがって同一周波数ωでも、素子によりYの位相と大きさは異なる。
直流回路の計算則
合成の扱いはコンダクタンスを用いると直観的である。並列接続ではG_total=∑G_iと加算で求まる一方、直列はR加算の方が簡便である。例えばR1=100 ΩとR2=200 Ωの並列はG1=0.01 S、G2=0.005 SよりG_total=0.015 S、逆数からR_eq≒66.7 Ωとなる。
交流回路における周波数依存
交流の並列RCではY=1/R+jωCであり、G=1/RとB=ωCが独立に現れる。これに対し直列RCのYはZ=R−j/(ωC)の逆数で、G=R/(R^2+(1/(ωC))^2)となり周波数に依存して増減する。設計では目的帯域でのG(ω)を見積もり、損失・ゲイン・安定度を評価する。
材料・温度と幾何の影響
金属は温度上昇で抵抗率が増すためGが低下する傾向がある。半導体や電解質はキャリア増加によりGが上昇しうる。配線やバスバーではG=σ·A/ℓの観点から、断面拡大や材質選定(銅、アルミ等)で損失を抑える。薄膜や微小配線では表面散乱・粒界が有効σを下げ、Gに影響する。
測定法と実務上の注意
コンダクタンスの測定は直流ブリッジ、LCRメータ、インピーダンスアナライザが一般的である。微小Gや高Gでは接触抵抗や漏れ電流の影響が大きく、4端子(ケルビン)接続やガードリングを用いる。交流測定では周波数・振幅・直流バイアスを規定し、等価回路モデル(並列型/直列型)を明示することが重要である。
能動・受動回路における役割
ノード解析では各枝のコンダクタンスで構成されたY行列を解く。能動素子の小信号モデルには出力コンダクタンス(g_o)が現れ、増幅度や出力抵抗を規定する。電力系統では負荷の実導電をGで表し、定常解析で電圧維持と損失P=|V|^2·Gの算定を行う。
電力損失と熱設計
直流ではP=V·I=V^2·G=I^2·Rであり、Gが大きいほど同電圧での損失は増える。交流でも有効電力はP=|V|^2·Gで評価できるため、配線・シャント抵抗・センサのG設定は熱設計と表裏一体である。放熱、銅箔幅、ビア数、ヒートシンクなどの手段で温度上昇を抑える。
設計上の等価化とモデル化
高周波・高インピーダンス回路では、誘電体損失や表面漏れを並列コンダクタンスG_pとして近似する。磁性体や誘電体の損失正接(tan δ)はGやBと結び付けて表現でき、共振回路のQ低下や帯域拡大を定量化する。分布定数線路でもシャントG[ S/m ]を導入し、減衰定数に寄与させる。
シミュレーションと表記慣習
回路シミュレータでは抵抗Rの代替としてGを直接指定できることがある。表記は大文字G、微分小信号にはgを用いるのが通例である。単位はSを用い、歴史的表記mho(℧)は推奨されない。接頭語はmS、µS、nSが実務で多用され、指数表記は工程・試験成績書で読みやすい。
用語・換算の補足
コンダクタンスと導電率σは混同されやすいが、前者は回路素子や経路全体の値、後者は材料固有値である。換算はG=σ·A/ℓで行う。また、アドミタンスYの実部がGである点を押さえておくと、ネットワーク合成や損失解析の見通しが良くなる。