ケーブルラック|配線経路を安全・整然化

ケーブルラック

ケーブルラックは、電力・通信・制御など多芯ケーブルを支持・配線するための開放型トレイである。ダクトや管路に比べ、増設・変更・点検が容易で、工場・プラント・データセンター・ビル設備に広く用いられる。荷重・環境・動線に応じて断面形状や材料、支持方式を選定し、許容たわみ・曲げ半径・接地・耐火などの要件を満たすことが肝要である。

機能と利点

ケーブルラックは、ケーブルの自重および付加荷重を安全に支持し、配線経路を整理する役割を持つ。開放型のため放熱性に優れ、敷設後の増設・撤去が短時間で可能である。視認性が高く、トラブルシューティングや点検性も良好である。一方、落下物や水・粉じんからの保護は管路に劣るため、環境条件に応じた付加カバーやダクト併用を検討する。

主な種類(形状)

  • トレイ形(棚形):底板に開口(スロット)を設けた浅型。軽中荷重と放熱の両立が可能である。
  • ラダー形(梯子形):側板とステップで構成し、長スパン・高荷重に強い。ケーブル固定が容易である。
  • ワイヤメッシュ形:細径ワイヤの籠状で自由曲線に追従しやすい。情報系や軽荷重に適する。
  • ダクト形(カバー付):粉じん・水滴対策や意匠上の要求に対応する。放熱は低下しやすい。

材料・表面処理

屋内一般は溶融亜鉛めっき鋼板(HDZ)や電気亜鉛めっき、腐食環境や衛生要求はステンレス(SUS304/SUS316)を用いる。屋外・塩害地域は溶融亜鉛めっき厚膜やアルミ合金、粉体塗装併用で耐候性を確保する。化学雰囲気では樹脂コーティングやFRP製を選択する。接触腐食の回避、切断端面の防錆、ボルト・ナットの同系材選定も重要である。

設計荷重とたわみ

ケーブルラックの設計では、ケーブル自重(kg/m)×本数、付属品、将来余裕を含めた等分布荷重を算出し、許容荷重曲線から寸法と支持間隔を決定する。一般に許容たわみはスパンの1/200~1/250程度を目安とし、長スパンではラダー形や補強リブを採用する。局部的な集中荷重(分岐金物、ケーブル束の段差)にも配慮する。

支持方式と経路計画

  • 天井吊り:ねじ棒・チャンネルで吊り下げ、歩行空間と干渉しにくい。耐震ブレースの設置を行う。
  • 壁面・梁側面:ブラケットで支持し、保守動線を確保する。アンカーのせん断・引抜耐力を確認する。
  • 床上架台:重量ケーブルや盤間の低位配線に適する。通路跨ぎはガードで保護する。

電気・通信の技術要件

  • 曲げ半径:光ケーブルや制御ケーブルは最小曲げ半径を遵守する。曲げ金物やスイープベンドを用いる。
  • 占積率:熱・引込み作業性を考慮し、30~50%程度を目安に将来余裕をみる。
  • 固定方法:結束バンド、ステンレスバンド、ケーブルクランプを用い、鋭縁はエッジガードで保護する。
  • 分離:電力系と弱電系は間隔・隔板で分離し、誘導障害・ノイズを低減する。

接地・耐火・防災

ラック本体は連続的に電気的接続を確保し、所定の接地にボンディングする。耐火区画の貫通部では耐火区画処理材で空隙を充填し、火災時の延焼・煙漏洩を抑止する。避難動線上は落下防止金物やカバーを併用し、安全標識を明示する。

環境条件とメンテナンス

屋外・高温多湿・薬液・粉じん環境では、材質・塗装・カバーの選択とともに、ドレン・清掃性を考慮した形状とする。定期点検では腐食・塗膜剥離・変形・緩み・たわみ量を確認し、ケーブル被覆の摩耗や結束具の劣化を交換する。雷サージ対策や等電位化が必要な設備では導通測定も実施する。

施工上の留意点

  • 芯出し・水平出し:レーザーレベル等で通りを確保し、継手位置は支持点近傍に配置する。
  • 切断・穴あけ:防錆処理を施し、バリ取りとエッジ保護を徹底する。
  • ラベル・経路管理:区間番号・系統名・敷設日を表示し、更新時のトレーサビリティを担保する。

関連資機材との関係

ケーブルラックは、盤やジャンクションボックス、機器接続部のケーブルグランド、露出区間のモールケーブルダクト、機器間導通を確保するハーネス、引込み部のコンジットPF管フレキ管と組み合わせてシステムを構成する。経路入口のエッジ保護、引込み防水、引張応力の解放を設計に織り込む。

規格・設計指針の参照

国内外の規格・指針(JIS、IEC、ISO、各種指針・メーカー技術資料)を参照し、荷重・たわみ・接地・耐火・耐震の要件を明文化する。特記仕様書には材料等級、表面処理厚、支持間隔、占積率、分離要件、標識・検査項目を明記する。

選定の実務ポイント

初期設計で将来増設率を設定し、占積率・荷重に余裕を持たせる。分岐・上下交差は早期に集約し、曲げ半径を満足する金物で処理する。長大スパンは中間支持・トラス化でたわみを抑える。腐食環境は材質と締結部の防食を同時に検討する。

安全・品質管理上の注意

高所作業では工具落下防止と墜落制止用器具を徹底し、仮固定状態での荷重載せを禁ずる。締結トルク管理と導通確認を記録化し、完成後は清掃・バリ残存の再確認を行う。ケーブル張力・固定ピッチ・ラベル表示の標準化が品質安定に資する。