ケルビン接続|四端子でリード抵抗影響を除去

ケルビン接続

ケルビン接続(Kelvin connection)は、被測定抵抗(DUT)の端子に電流用リードと電圧用リードを分離して接続し、リードや接触部の電圧降下を測定値から切り離す4端子方式である。低抵抗(mΩ級〜数Ω)では導線抵抗や端子接触抵抗が無視できず、2線式では系統的に高めの値が出る。これに対しケルビン接続では、電圧検出(sense)回路にほとんど電流が流れないため、リードや接点の抵抗に電圧降下が生じても測定器が検出するのはDUT両端の純粋な電位差となる。電気計測、シャント抵抗の校正、電力電子の電流検出、MOSFETのゲート駆動安定化などで必須の手法である。

原理と背景

電流源(または電流を供給する計測器)からDUTへ測定電流Iを流し、その両端に独立した高インピーダンスの電圧計を接続する。電圧計の入力インピーダンスは十分に大きいため、電圧リードには実質的に電流が流れず、電圧リード自身の抵抗Rlead,vの電圧降下は無視できる。結果としてV≈I·RDUTが得られ、Rlead,iや接触抵抗RcによるI·Rの降下は電圧計が見る点の外側に追い出される。これがケルビン接続の本質である。

二線式との比較

  • 2-wire:Rmeas≈RDUT+2Rlead+2Rc。低抵抗ほど相対誤差が増大する。
  • 4-wire(ケルビン接続):Rmeas≈RDUT。電圧検出は高インピーダンスで、リード・接点の影響が原理的に除去される。
  • 指針:RDUTが配線の合成抵抗と同程度以下(たとえば数十mΩ以下)なら4-wireを標準とする。

実装方法(配線とレイアウト)

電流リードはDUT端子に太く短く接続し、その直近の端面から別途2本の電圧リードを取り出す。電圧リードは対で撚り、ループ面積を最小化し誘導ノイズを抑える。はんだ付けやビス締結では、電圧取り出し点を電流端子の「外側」ではなくDUT素材そのものの端面(最内側)に配置する「スターポイント」を徹底する。測定器側の端子は「I+/I−」「V+/V−」に正しく接続し、VラインをIラインと物理的に近接させることで共通モードノイズを低減する。

ケルビンブリッジ(Kelvin double bridge)

極低抵抗の精密測定では、ホイートストンブリッジに補助比率回路を加えたケルビン二重橋が用いられる。これは測定導線や接触部の抵抗を橋の比率網に取り込み、残留誤差を一次的に打ち消す構成である。微小抵抗標準器の校正や材料の抵抗率測定、シャント抵抗の等級付けに適する。直流源と検流計(またはロックイン検出)を組み合わせ、熱起電力の影響を反転法で相殺する運用が一般的である。

用途と具体例

  • 電流検出抵抗(シャント):数mΩ級の金属抵抗で電流を電圧に変換する際、ケルビン接続で検出端子を分離するとゲイン誤差と温度ドリフトを低減できる。
  • バッテリ内部抵抗・導体接続抵抗:セル間バーや母線の接触健全性評価に有効。
  • プリント基板(PCB)のセンシング:電源レールの別層から「Kelvin sense」を引き、負荷点電圧をレギュレータに帰還することで配線降下を補償(リモートセンシング)。

電力MOSFETとKelvin source

パワーMOSFETの一部パッケージはソース端子を「電力ソース」と「センシングソース(Kelvin source)」に分離する。ゲート帰路をKelvin sourceに接続すると、スイッチング時のソース配線インダクタンスLsに生じるdi/dt電圧がゲート−ソース電圧VGSに重畳することを避けられ、リンギングや誤動作の抑制、並列素子間の電流バランス改善に寄与する。高速・大電流のSiC/GaN応用では特に効果が大きい。

測定誤差の主因と対策

  • 熱起電力(EMF):異種金属接合でμV級の起電力が生じる。対策は反転測定(電流極性切替の平均)、同材質端子、温度安定化。
  • 交流・過渡成分:誘導・分布容量により位相ずれや周波数依存誤差が出る。低周波化、ガード配線、シールドで緩和する。
  • 接触抵抗の変動:ねじ締結のトルク管理、表面酸化膜の除去、金メッキ端子の採用が有効。
  • 測定電流の選定:大きすぎると自己発熱、低すぎるとS/N低下。仕様に応じてmA〜A級を使い分ける。

リード線・端子の選択

電圧リードは細く柔軟な低熱電対材を短く、電流リードは太く低抵抗のものを選ぶ。バナナより4端子専用端子(例:スプリング式Kelvinクリップ、4端子バインディングポスト)が望ましい。撚り対・シールドで外来ノイズを抑え、接触点の酸化や油分を除去する。

校正とトレーサビリティ

測定系は標準抵抗器で定期校正し、温度係数やリード取り回しのばらつきを評価する。測定プロトコルには反転法、繰返し測定、統計的不確かさ評価(標準偏差・合成不確かさ)を含めるとよい。記録には電流値、環境温度、接続写真を併記して再現性を高める。

簡易モデルと設計指針

2線式では相対誤差ε≈(2Rlead+2Rc)/RDUTであり、RDUTが小さいほどεが増える。一方ケルビン接続では電圧ルートの電流が極小で、一次近似としてε→0である。実装では「電圧取り出しはDUT端子の最内点」「Vリードは対で撚る」「Iリードは短く太く」「極性反転で熱起電力除去」を守れば、mΩ級でも安定した結果が得られる。電力回路ではKelvin source端子を活用し、ゲートループとパワーループを幾何学的に分離することでスイッチングの再現性とEMI抑制を両立できる。