キーシーター|内径キー溝を往復運動で高精度加工

キーシーター

キーシーターは、プーリやギヤ、カップリングなどの内径に平行キー用のキー溝を切削する専用機である。垂直往復するラム先端のバイトで内側から溝を削る点が特徴で、ブローチ盤のような長尺専用工具を必要とせず、キーシーター本体と汎用バイト、簡素な治具で立ち上げられる。切削はストロークごとに微小送りを与えて深さを増し、最終パスで幅と側面直角度を仕上げる。段付きハブや盲穴にも対応しやすく、中小ロットのキー溝加工で柔軟性が高い。

仕組み・構造

キーシーターは、コラムとラム、ストローク機構、送り機構、ワークテーブル、ガイドバーで構成される。ラムは上下に往復し、上死点または下死点側で切削を行う方式がある。ストロークは溝長に合わせて調整し、送りは毎ストローク後に数十μm~数百μmを与える。ガイドバーは刃先の偏倚を抑え、側面の直進性と幅精度を確保する。

切削原理と切削条件

単刃工具による断続切削で、形削りに近い。切削速度は素材と工具材質に応じ 2~20 m/min、送りは 0.02~0.10 mm/str が目安である。工具は上すくい角・逃げ角を適正化し、テーパやチャタリングを抑える。鋼材は極圧型切削油、鋳鉄は乾式または軽切削油とし、端部のオーバーランと逃げ量を確保する。

工具と治具

キーシーター用バイトは HSS や超硬が一般的で、幅仕上げ用に側面へ微小テーパを付けることがある。ホルダ剛性と突き出しは最小に抑え、ガイドや案内ブッシュで刃先の振れを拘束する。ワークはブリッジクランプや内径拡張式マンドレルで確実に把持し、軸芯とキー溝基準を一致させる。

  • バイト形状:上すくい角 0~10°、逃げ角 5~10°、コーナ半径 0.1~0.3 mm
  • 工具材質:HSS は汎用、超硬は高硬度材や能率重視に適する
  • 治具:ガイドバー、案内ブッシュ、心出しピン・ゲージ、V ブロック等

利点・欠点

  • 利点—専用ブローチが不要で初期費用が低い。段付きハブや盲穴、長尺にも対応しやすい。
  • 利点—幅微調整や面取りなどの補助加工を同一段取りで行いやすい。
  • 欠点—能率はブローチ盤に劣り、剛性不足だとチャタリングや側面テーパが生じやすい。

適用範囲と公差

キー溝幅はおおむね 3~25 mm が一般的で、材質は炭素鋼、合金鋼、鋳鉄、非鉄金属に適用できる。寸法・公差は JIS B 1301(平行キー・キー溝)や ISO 286 のはめあいに準拠して指定する。仕上げ粗さは Ra 1.6~3.2 µm 程度を目安とし、端部の応力集中を避けるため底面コーナに小半径を付す。

段取りと加工手順

  1. 図面確認:キー幅、公差域、位置基準、溝長、端部形状(肩・逃げ)を確認。
  2. 芯出し:内径基準で把持し、ゲージ等で軸芯合わせ。
  3. 工具設定:突出しと角度を点検し、ガイドをワークに当てる。
  4. ストローク設定:上・下死点、オーバーラン、逃げ量を決める。
  5. 荒切削:浅い切込みで様子見、異常振動があれば速度・送り・剛性を調整。
  6. 仕上げ:幅と直角度を狙い、面取り・バリ取りで完了。
  7. 検査:プラグゲージ、キー試挿、インジケータで位置と真直度を確認。

品質トラブルと対策

チャタリングは工具突出し過大、ガイド不足、速度不適合が主因である。対策は工具剛性向上、速度低減、潤滑改善、ガイド接触長の増加が有効である。側面テーパやベルマウスは送り過多やガイド摩耗が原因で、仕上げパス軽減やガイド再研磨で改善する。

代替プロセスとの使い分け

大量生産や高能率ではブローチ盤が優位である。単品・試作、盲穴、段付きなど自由度重視ならキーシーターが適する。高硬度材や微細溝ではワイヤ放電加工が有効で、既存溝の修正や幅微調整ではキーシーターが小回りを利かせやすい。立て削り盤や形削盤でも加工できるが、治具と操作性はキーシーターが専用機として優れる。

盲穴キー溝の逃げと端部処理

盲穴では刃先が抜ける逃げ空間を確保する。端部に逃げ孔を設ける、または段差内に浅い逃げ溝を準備してからキーシーターで本加工を行うと、角部欠けや焼付きを避けやすい。

保全・安全

キーシーターは案内機構の摩耗が精度に直結する。ガイド面の清掃・潤滑、バックラッシュ点検、摺動面管理を日常化する。切粉は細長く発生しやすく、巻き込み防止のためチップフックとガードを併用する。