カリウム(K)
カリウム(K)は周期表1族のアルカリ金属で、原子番号19の銀白色の軟らかい金属元素である。融点が低く切削しやすい一方、空気や水と激しく反応する高い還元性を示す。地殻中にはケイ酸塩や塩類として広く存在し、肥料原料・ガラス・化学工業・電池電解質など多用途に供される。生体では細胞内の主要カチオンとして神経伝達と浸透圧維持に不可欠である。
概説
Kは電子配置[Ar]4s¹で、価電子1個を失ってK⁺となりやすい。標準電極電位は負で強い還元剤として振る舞う。天然では金属単体としては産しにくく、主にKCl(シルバイト)やKMgCl₃·6H₂O(カーナライト)などの塩鉱、あるいは海水・塩湖に由来する塩水から回収される。工業では塩化物や硫酸塩を出発原料に炭酸塩・水酸化物などの基礎無機薬品を製造する。
物理・化学的性質
- 銀白色の軟質金属で比重は水より小さく、水に浮く。
- 融点はおよそ63℃、沸点は約760℃で、アルカリ金属として典型的な低融点・高反応性を示す。
- 結晶構造は体心立方(bcc)で、熱伝導性・電気伝導性に優れる。
- 空気中で表面が速やかに酸化し、酸化物・過酸化物・スーパーオキシド(KO₂)を形成する。
- 水と激しく反応してKOHとH₂を生じ、発熱とともに自然発火に至ることがある。
主な化合物と用途
- KCl:窒素・リンと並ぶ三大肥料要素として塩化カリウム肥料に用いられる。ガラス精製の塩類としても重要。
- K₂SO₄:塩化物による塩害を避けたい作物向けの無塩素系カリ肥料。
- K₂CO₃(炭酸カリウム):ガラス・液体石けん・触媒担体・写真薬などに利用。
- KOH(水酸化カリウム):強塩基。アルカリ乾電池の電解液、界面活性剤、各種有機合成で使用。
- KNO₃(硝酸カリウム):肥料、熱処理塩浴、発火薬・花火・食品の発色剤。
- KMnO₄(過マンガン酸カリウム):強力な酸化剤として水処理や有機合成に用いられる。
- NaK合金:液体金属の熱媒体として実験的・特殊用途に採用される。
資源と製造
資源はカナダ・ロシア・ベラルーシ・中東などの地下塩鉱や塩湖に集中する。製造は、(1)鉱石の粉砕・浮選・晶析によるK塩濃縮、(2)溶解・イオン交換・再結晶による精製、(3)目的に応じた中和・炭酸化・電解などの化学処理が基本である。金属K自体は高温還元や塩化物の蒸留分離で得られるが、反応性が高いため専用設備と厳密な不活性雰囲気が必要となる。
安全性と取扱い
- 金属Kは鉱物油やパラフィン中で保存し、湿気・酸素を遮断する。
- 切削・分割は不活性雰囲気下で行い、微細片の散乱を避ける。
- 消火は乾燥砂や金属火災用消火剤を用いる。水系・二酸化炭素は禁忌である。
- K⁺塩は一般に安定だが、強塩基(KOH)や強酸化剤(KMnO₄)は皮膚・粘膜への刺激が強いため保護具を着用する。
生体における役割
生体ではK⁺が細胞内に高濃度で存在し、Na⁺と協調して膜電位を形成する。Na⁺/K⁺-ATPaseが能動輸送を担い、神経伝導・筋収縮・心筋の興奮性制御・酵素活性の調節に関与する。食事由来のKは果物・芋類・豆類に多く、適切な摂取は体液バランスや血圧維持に資する。一方で腎機能に課題がある場合や薬剤の影響下では高カリウム血症の管理が重要となるため、専門家の指示に従うことが望ましい。
分析・識別
炎色反応は淡紫色(ライラック色)で、Naの強い黄に覆われやすいためコバルトガラスの使用が古典的手法として知られる。定量では炎光光度法やICP発光分析、電極法(イオン選択電極)などが用いられる。鉱業・肥料製造ではK₂O換算での品質管理が一般的である。
材料・プロセスでの論点
アルミノケイ酸塩ガラスの化学強化では、Na⁺をK⁺でイオン交換して表面圧縮応力を付与する手法が用いられる。電池分野ではKイオン二次電池の研究が進み、豊富な資源性と低コスト電解液の利点が注目される。無機合成ではK塩が対アニオンや相間移動の制御に寄与し、相溶性や結晶成長の調整に利用される。
歴史・語源
名称は英語の“potassium”が灰(ash)を煮詰めた釜(pot)に由来する“potash”に関係し、記号Kはラテン語“kalium”に由来する。かつて木灰から炭酸塩を製し、ガラス・石けん製造を支えたことが語源から読み取れる。
関連する危険物規制
金属Kは水反応性物質として危険物に該当し、保管量・容器・表示・教育訓練に関する規制対象となる。輸送では水濡れ防止と密封包装が必須で、漏えい時は不活性吸収材で回収し、湿気源から隔離する。