オゾン発生器
オゾン発生器は、酸素分子から高反応性の酸化剤であるO3(オゾン)を生成し、空間や水の脱臭・殺菌・酸化洗浄に用いる装置である。オゾンは強力な酸化電位(約2.07V)を持ち、細菌やウイルス、カビ由来の臭気成分、揮発性有機化合物(VOC)を分解する。用途はホテル客室のリセット清掃、食品工場の表面殺菌、医療・介護現場の衛生管理、配管やタンクのCIP/SIP補助、水処理における前処理など多岐にわたる。生成方式にはコロナ放電方式、紫外線(UV)方式、電解方式があり、求める出力濃度、処理対象、運用コスト、保守性を勘案して選定する。
生成原理と方式
オゾン生成は、O2を解離させてO原子を作り、O2と再結合させる反応を装置内で起こす原理に基づく。電気的に励起するコロナ放電方式は高濃度化に適し、185nm帯のUV光を用いる方式は構造が簡明で小型化しやすい。水電解を利用してオゾン水を直接得る電解方式は溶存オゾンとして高効率に使える。いずれも生成直後から自然分解が進むため、配管やチャンバーのレイアウトは滞留・漏洩・分解損を抑える設計が重要である。
コロナ放電方式
誘電体バリア放電(DBD)を用い、数kV級の高周波電圧を電極間に印加して放電させる方式である。放電ギャップ、誘電体(ガラス、セラミック、アルミナ等)、電極表面処理、冷却構造が出力効率と寿命を左右する。原料ガスは乾燥空気または高濃度O2が用いられ、露点を十分に下げることでNOx生成とセル劣化を抑制できる。産業用途のオゾン発生器ではg/h級の出力とg/Nm³級の濃度を目指し、流量・温度・露点の一体管理が行われる。
紫外線(UV)方式
185nm付近を放射するUVランプでO2を光解離しオゾン化する。出力濃度は比較的低いが、構造が簡素で小型・低コスト・始動性に優れる。メンテナンスはランプの劣化(光束低下)と石英スリーブの清掃が中心で、粉塵・油分の付着は効率を著しく下げるため、吸気フィルタと定期拭浄が有効である。小規模空間の脱臭、装置内局所殺菌、簡易オゾン発生器として普及している。
電解方式
固体高分子電解質(PEM)などを用いて水中で直接オゾンを生成する。ガスを介さず高濃度の溶存オゾンを得られ、オゾン水として直ちに洗浄・殺菌へ用いる用途に適する。電極触媒や膜材の寿命、原水中のイオン・有機物による劣化対策、析出ガスの安全処理が設計上の要点となる。
性能指標と選定の観点
選定では、定格出力(mg/h, g/h)、到達濃度(ppm, g/Nm³)、処理対象の容積と負荷(臭気強度・有機残渣)、ガス流量・接触時間(CT概念)、原料ガス(乾燥空気/O2)と露点、周囲温湿度、消費電力・効率、騒音、連続/間欠運転の可否、据付スペースと換気経路を確認する。濃度制御を要する場合は濃度計(UV吸収型など)とフィードバック制御を組み込み、過剰曝露を防ぐインターロックを付す。移動型オゾン発生器では電源ケーブル・排気方向・触媒回収一体型かを確認する。
電源・制御・EMC設計
コロナ放電型は高周波インバータでセルに給電する。共振型トポロジー(L-C)を用いてZVS/ZCSを実現し、スイッチング損失と過電圧を抑える。漏れインダクタンスや寄生容量が波形に与える影響を見積もり、スナバ・クランプでピーク電圧を制御する。EMI対策としてラインフィルタ(コモン/ノーマル)、シールド、アース、筐体スリットの管理を行い、CISPR 11/32やIEC 61000-4-2/4/5の評価を視野に設計する。制御系はタイマ、濃度・露点・温度の監視、ファン・PSA酸素濃縮器の協調制御を行い、異常時は安全停止へフェイルセーフさせる。
安全・衛生管理
オゾンは強力な酸化剤で、吸入曝露は粘膜・呼吸器に刺激を与える。在室運転は避け、無人運転と換気・触媒分解を原則とする。一般的な運用目安として短時間でも0.1ppm程度を上限に管理し、作業再入室前は濃度計で実測確認する。臭気閾値(約0.02〜0.05ppm)を参考にしつつ、過信せず計測に頼ることが肝要である。装置周囲には警告表示・入室制限の掲示を行い、誤操作を防ぐインターロックを備えたオゾン発生器を選ぶ。
材料・構造と耐久性
オゾン接触部にはPTFE、PFA、FEP、PVDF、ガラス、SUS316Lなどの耐オゾン材料を用いる。天然ゴムや一部エラストマーは亀裂・硬化・変色を招きやすい。シールはフッ素系を選択し、配管は死角・滞留を避けるルーティングとし、凝縮水対策を行う。放電セルは熱膨張と熱歪みを見込み、冷却風路・ヒートシンク・温度監視を設けると寿命が延びる。紫外線方式では石英部の汚染、電解方式では膜・電極の劣化が支配的となる。
運用・メンテナンス
原料ガスが空気の場合は乾燥器で露点を下げ、PSA酸素濃縮器を併用すると出力が安定する。吸気フィルタ清掃、放電電極の汚れ除去、ギャップ均一性の点検、ファン・触媒の交換、電源部のコンデンサ劣化確認を定期化する。校正済み濃度計で出力ドリフトを把握し、季節変動(温湿度)を考慮してオゾン発生器の設定を最適化する。点検・運転ログを残し、再現可能な条件管理を徹底する。
代表的な適用例
- 空間脱臭:客室・車内・厨房の臭気源除去後にオゾン発生器をパルス運転し、仕上げに触媒分解と換気を実施する。
- 表面殺菌:食品容器・カッティングボード・搬送ベルトに対し、CT(濃度×時間)を設計して過不足のない処理を行う。
- 水処理:オゾン水で洗浄・漂白・バイオフィルム抑制を行い、必要に応じて活性炭・紫外線と直列化する。
- HVAC:ダクト内導入では漏洩防止、濃度センサでの連続監視、排気触媒の回収をパッケージ化する。
トラブル事例と対策
出力低下は湿度上昇・電極汚れ・セル温度上昇・供給O2低下が原因となりやすい。NOx臭は高温・高湿の空気原料で顕在化するため、露点改善と温度管理で抑える。EMI起因の周辺機器誤動作は接地・フィルタ・配線引き回しの見直しで低減できる。材料のクラックや黄変は耐オゾン材への置換で再発を防止する。測定(流量、露点、電圧/電流波形、濃度)で原因を定量化し、是正後に再検証を行うことが、信頼性の高いオゾン発生器運用につながる。