オイルジョッキ
オイルジョッキは、潤滑油や作動油を安全かつ定量で移し替えるための注ぎ口付き容器である。自動車整備、機械保全、工作機械の切削油補給などで広く用いられ、容器本体、持ち手、フタ、ノズル(ホース)、キャップ、ストレーナ、目盛などで構成される。計量カップとじょうごを併用する場合に比べ、こぼれや異物混入のリスクが低く、粘度の高い油でも狙った位置へ安定して注げる点が利点である。用途に応じて耐薬品性、耐熱性、密閉性、静電対策などの仕様を選定する。
構造と種類
オイルジョッキの基本構造は、半透明の胴部に把手と注ぎ口を備え、上部に充填口(フタ)を持つ形が一般的である。ノズルは直管、蛇腹、柔軟ホース一体型などがあり、先端キャップで防塵・防滴を図る。ストレーナ(簡易フィルタ)付きは異物混入を抑制し、逆止弁付きは戻り漏れを低減する。角型は棚収納や残量視認に優れ、丸型は洗浄性に優れる。帯電対策タイプや、片手操作しやすい軽量タイプも流通する。
- 一体ノズル型/ホース分離型/蛇腹ロングノズル型
- ストレーナ付き・無し、キャップ付き・無し
- 角型(整頓・視認性重視)/丸型(洗浄性重視)
- 帯電防止材配合、導電性タイプ、アース接続端子付き
材質と耐薬品性
オイルジョッキの材質は、軽量で成形性の良い PP(ポリプロピレン)や PE(HDPE)が主流で、耐衝撃性や低温特性を重視する場合は PA(ナイロン)も選択肢となる。ガスケットには NBR、EPDM、PTFE 等が用いられる。鉱物油や PAO 系合成油、ATF、ギヤ油には PP/PE が概して適合しやすいが、溶剤や芳香族系、ブレーキフルード(グリコール系)などは応力割れや膨潤の原因となりうる。用途外の液体には使用せず、メーカーの耐薬品表や JIS/ISO の適合情報を参照して選定・運用する。
容量・目盛と計量精度
オイルジョッキの容量は 0.5~5 L 程度が一般的で、半透明胴体に外目盛が付く。目盛は容器の膨張や温度による体積変化、視差の影響を受けるため、管理上は「目安」と捉えるのが妥当である。工程で厳密な容量管理(例:±1~2%)が必要な場合は、事前に基準液で校正し、同一姿勢・同一温度で読み取る運用を徹底する。粘度が高い油は流下遅延で読みが変動するため、静置時間を設けてから注ぐと良い。
使い方と手順
- 準備:容器・ノズル内の清浄を確認し、油種名ラベルを点検する。交差汚染防止のため、油種ごとにオイルジョッキを専用化する。
- 充填:充填口から規定量以下で入れ、フタを確実に閉める。気液の抜けを確保し、ノズル先端を目的部位に近づける。
- 注油:低位置・低速度で安定注油する。蛇腹・ホースは無理に折り曲げない。
- 後処理:外面を拭き取り、先端キャップを閉める。使用履歴を記録し、防塵環境で保管する。
火気・熱源付近での使用は避け、圧送目的で加圧しない。想定外の液体(溶剤・燃料等)には適用せず、専用品または金属製容器を用いる。
選定ポイント
- 油種・粘度:ISO VG10~320 などの粘度域に応じ、ノズル径・長さ・蛇腹有無を選ぶ。
- 材質・シール:PP/PE/PA と NBR・EPDM・PTFE の組合せを耐薬品性で確認。
- 耐熱・耐寒:想定環境温度(例:-20~80℃)での寸法安定性・柔軟性を考慮。
- 密閉性・防滴:ネジ部の造り、O リングの有無、先端キャップの確実性。
- 視認性:半透明胴、コントラストの高い目盛、残量確認窓の有無。
- 静電対策:導電材配合やアース接続で帯電を抑制(可燃性ミスト対策)。
- 付加機能:ストレーナ、逆止弁、片手操作性、吊り下げ穴などの運用利便性。
保守・衛生管理
オイルジョッキは油種ごとに色分けやタグ(例:ENG、GEAR、ATF、HYD)で明示し、混用を防止する。使用後は適合する洗浄剤で内部をリンスし、十分乾燥させる。紫外線や熱で樹脂は劣化するため、直射日光を避け、定期的に亀裂・白化・硬化を点検し、異常があれば交換する。ねじ山損傷やシール硬化は漏れの原因となる。
現場での品質保証とトレーサビリティ
工程能力を保つには、校正履歴やロット管理を簡易的にでも残すとよい。例えば、基準液で 1 L 目盛の実測値を記録し、許容差を超えた個体は計量工程に使わず補給専用に回す。容器ごとの使用開始日・油種・洗浄履歴を管理台帳に記すことで、異常時の原因究明が迅速になる。
関連工具・運用の周辺知識
オイルジョッキは「じょうご(ロート)」「計量カップ」「ディスペンサー」「グリースガン」「潤滑スプレー」などと併用される。適正注油は摩耗・焼付きの抑制につながり、締結部の寿命向上、ひいてはボルトの座面摩擦ばらつき低減にも寄与する。注油後はトルク管理や漏れ点検をあわせて実施すると保全品質が安定する。
誤用しやすい液体への注意
ブレーキフルード(DOT3/4/5.1 等)や冷却液、強溶剤、燃料は材質不適合を起こしやすい。これらは専用品や金属製容器を用い、強制的な加圧やエアブローは行わない。混入は重大故障に直結するため、容器の専用化と明示を徹底する。
表示と色分けの実務
現場では油種略号(ENG、ATF、GEAR、HYD)や粘度(例:VG46)をラベルと色帯で併記する。ノズルキャップ色で識別し、保管棚にも同色マークを貼ると取り違えが減る。バーコードや QR を付与すれば、点検・補給の記録と在庫管理を効率化できる。