オイルコンタミ|潤滑油汚染の原因対策評価基準運用

オイルコンタミ

オイルコンタミとは、潤滑油や作動油に固形粒子・水分・酸化生成物・微生物・気泡などの異物が混入し、油の機能を阻害する現象である。清浄度の低下は摩耗促進、バルブ固着、シール劣化、発熱・効率低下を招き、生産設備の信頼性と寿命を大きく左右する。特に油圧装置やタービン、ギヤボックスでは、粒子径数μmの微粒子でも制御弁や軸受に重大な影響を与える。実務ではISOやJISなどの規格を参照しつつ、清浄度目標を定め、サンプリング・分析・ろ過・改善を循環させる管理が要となる。設備保全においてオイルコンタミは「見える化」しづらいが、状態監視と予知保全の核となる指標である。

発生原因

工学的視点では原因は内部発生と外部混入に大別される。内部発生は摺動面の摩耗粉、オイルの酸化・ポリマー化によるワニス、キャビテーション由来の金属片などである。外部混入は保管容器や給油器具の汚染、シール不良による粉塵侵入、冷却器での水漏れなどが典型である。洗浄不十分な配管・タンク残渣、組立時のバリ、整備時のウエス繊維も強い発生源となる。環境要因として温度・湿度、周囲粉塵濃度、振動も無視できない。

代表的な異物の種類

  • 固形粒子:鉄・銅・アルミの摩耗粉、シリカ粉塵、ゴム片、繊維など。数μm〜数百μmまで存在し、サーボ弁のスプールを引っ掛ける。
  • 水分:溶解水・乳化水・遊離水として存在し、酸化促進・添加剤劣化・軸受ピッチングを誘発する。
  • 酸化生成物:スラッジやワニス。高温・空気・金属触媒で生成し、バルブ固着やフィルタ差圧上昇を招く。
  • 気泡:エアレーション・キャビテーションにより圧縮性を生み、制御不安定や騒音・損傷を引き起こす。
  • 微生物:長期停止のタンクや水分高含有時に発生し、酸性化や腐食を助長する。

評価指標と規格

オイルコンタミの清浄度はISO 4406(例:22/19/16)によって粒子数(≥4μm(c), ≥6μm(c), ≥14μm(c))の等級で表す。航空・精密分野ではNAS 1638が使われることもある。水分はppmで管理し、カールフィッシャーで定量する。劣化度は酸価(TAN)、粘度、酸化・硝化・硫化の赤外(FTIR)指標、金属元素はICPで測定する。磁性摩耗粉はフェログラフィやPQ指数で把握し、ワニス傾向はMPCやブロットテストが参考となる。目標清浄度は機器感度・クリアランス・圧力・流量から定め、批判部位ほど厳しく設定する。

分析・測定手法

  • パーティクルカウンタ:オンライン/オフラインで粒度分布を把握し、トレンド監視に適する。
  • 膜ろ過・顕微鏡観察:粒子形状(切削片、疲労片、酸化片)を見極め、原因推定に有効である。
  • ICP-OES:Fe, Cu, Al, Si, Ca, Znなどの元素濃度から摩耗源や添加剤の変化を解析する。
  • 粘度・TAN/TBN:潤滑性能と劣化進行を総合評価する。
  • 水分測定(KF):エマルジョン化・腐食リスクを定量的に捉える。

管理手順(PDCA)

まず清浄度ターゲット(例えばISO 16/14/11)を定義し、代表性の高い採油点・頻度を決める。次に定期サンプリングと分析で実態を把握し、偏差が出たらフィルタ強化・フラッシング・水分除去などを実施する。結果は記録・可視化し、設備更新やオイル交換周期の最適化に反映させる。状態監視は予知保全の中核であり、MTBF改善と総保全コスト低減を両立させる。ここでオイルコンタミの改善は他の技術施策と相乗する。

フィルタ選定の要点

フィルタはβ値(Beta ratio)と定格粒径(μm)で選定する。目標清浄度から許容粒子を逆算し、吸込・圧送・リターン・オフライン(キッドニーループ)を使い分ける。差圧監視とバイパス設定、粘度・温度による粘性上昇、スタートアップ時のバースト対策も重要である。ワニス対策には樹脂吸着型や静電クリーナが有効で、長期的なオイルコンタミ低減に寄与する。

サンプリングの注意

採油容器は清浄ボトルを用い、流れの乱れが少ない位置から採取する。前洗いとブランク管理を行い、温度・運転状態を記録する。ラインのデッドレグやドレン底部は堆積物のバイアスが大きい。輸送・保管は密封し、分析までの時間を短縮する。記録様式は標準化し、他の製造データと突き合わせると効果的である。

対策と改善施策

  1. 初期洗浄・フラッシング:新設・オーバーホール時に配管内残渣を除去し、早期摩耗を防ぐ。
  2. 密封・呼吸管理:ブリーザを微粒子・乾燥剤併用型にし、水分・粉塵侵入を抑える。
  3. 補給油管理:受入検査、フィルタ透過、密閉容器・専用ポンプで二次汚染を防止する。
  4. 水分除去:真空脱水・吸着カートリッジでppmを管理する。
  5. ワニス低減:低温運転の回避、酸化抑制、吸着フィルタの定常運用。
  6. 教育と標準類:手順書・点検表を整備し、現場スキルを均質化する。

故障モードと兆候

オイルコンタミが進むと、サーボ弁のスティクション、ポンプと軸受の摩耗増大、シール硬化、圧力脈動、温度上昇、エネルギーロスが現れる。トレンドとしては粒子数・TAN上昇、粘度変動、水分増、差圧上昇、振動スペクトルの変化が観測される。根本原因解析(RCA)では、設計・運転・保全・環境の層で要因を洗い出し、是正・予防措置を紐づける。他の機械要素電気的要因とも横断的に評価する。

関連知識と参照

清浄度管理は潤滑管理・油圧制御・環境安全を結ぶ横断テーマである。規格や標準は実運用に合わせ柔軟に適用し、記録の継続とKPI化で効果を定量化する。基礎は化学反応(酸化・分解)や材料摩耗学にある。サイト内の索引やサイトマップから関連項目を俯瞰し、設備のライフサイクル全体でオイルコンタミを最小化することが、信頼性とコストの最適点を導く。

実務メモ

重要機器は「目標ISOコード」「採油点・頻度」「フィルタ仕様」「差圧・温度監視」「異常時フロー」を1枚にまとめて共有する。新油=清浄とは限らず、受入時から清浄度・水分・粘度を点検する。小さな偏差も放置せず、定常運転の基準値と比較して早期に手を打つことが肝要である。