エネルギーバンド
固体中の電子がとるエネルギーの離散的な集合をエネルギーバンドと呼ぶ。原子が結晶構造を形成すると、隣接する原子間で電子が相互作用し、単一原子での不連続なエネルギー準位が多くの「帯」に分散していく。これにより、物質の電気伝導性や光学的特性が決定づけられる。結晶において電子はブロッホ波として振る舞い、バンド構造の中で許されるエネルギー状態を占有する。バンド内のエネルギー分布やバンド端の位置関係は、物質が金属であるか半導体であるか絶縁体であるかを判断するうえで重要な手掛かりとなる。特に半導体や絶縁体では、伝導に寄与する電荷担体の振る舞いがバンドギャップの大きさに大きく左右されるため、デバイスの設計においてはバンドの解析が必須となっている。
結晶構造とバンド理論
バンド理論は結晶固体内の電子運動を量子力学的に扱う枠組みである。原子が規則的に並ぶ結晶格子では、原子核と電子との間に周期的なポテンシャルが形成される。電子はこの周期ポテンシャル中を運動し、運動方程式を解くことで得られる固有解がバンド構造を示す。1つのエネルギー帯には多数の状態密度が存在し、フェルミ準位付近のバンド構造が伝導特性を決定づける。結晶の対称性や格子定数などの要素によって、バンド幅やバンド分散の形状は大きく変化し、物質特有の物性を生み出す。こうしたバンド理論の基礎は、金属や半導体など、多様な機能材料を設計する際の理論的土台となっている。
私は半導体専門人材とかいうと波動方程式使いこなして自由自在に結晶中価電子エネルギーバンド構造を作り変えるかUVで超微細加工をする人たちだが、NHKがいうのは普通の工学部や院卒だろう?
半導体業界の専門人材 確保と育成の取り組みは・・・|NHK 熊本県のニュース
— Tomio NAKAJIMA (@tann2009) October 7, 2024
バンドギャップと電子の挙動
物質内には価電子帯の上端と伝導帯の下端の間にエネルギーの空白領域が生じることが多いが、これがいわゆるバンドギャップである。バンドギャップが小さいほど電子は低いエネルギーで価電子帯から伝導帯に励起されやすくなり、結果として伝導性が高くなる。逆にバンドギャップが大きいと、常温程度の熱エネルギーでは電子が励起しにくくなり、絶縁体として振る舞う。半導体ではこのバンドギャップが中程度に保たれており、熱励起や不純物ドーピングにより自由電子や正孔が生成しやすい特性が得られる。したがって、バンドギャップの大きさと材料の電気特性は密接に関連しており、光学分野では発光ダイオードやレーザーの発光波長を制御する手段にもなっている。
価電子帯と伝導帯
エネルギーバンドは大きく「価電子帯」と「伝導帯」に二分される。価電子帯は、結合に関与する電子が主に存在する帯であり、エネルギー的に低い領域を占有する。一方、伝導帯はエネルギー的に高く、電気伝導に寄与する自由電子が存在し得る領域である。通常、常温での電子は価電子帯に閉じ込められた状態でいるが、外部から十分なエネルギーが与えられると、電子は価電子帯から伝導帯へと遷移する。このとき、価電子帯には正孔が生じ、伝導帯には自由電子が生まれる。これらキャリアの相互作用や散乱プロセスが、半導体デバイスにおけるスイッチング特性や増幅動作などを可能にする鍵となっている。
金属・半導体・絶縁体の違い
バンド理論では、価電子帯と伝導帯の重なりやバンドギャップの大小によって金属、半導体、絶縁体の区別がなされる。金属は価電子帯と伝導帯が重なっており、フェルミ準位付近に利用可能なエネルギー状態が常時存在するため、電子が自由に移動して高い導電性を示す。半導体は数eV以下の比較的小さなバンドギャップをもち、外部エネルギーによってキャリア密度を制御できる。絶縁体はバンドギャップが大きく、常温では伝導帯に電子がほとんど存在しないため電流が流れにくい。こうした区分は、バンド構造を理解することで理論的に説明が可能であり、材料選択や素子設計の指針となる。
電荷のcarrierとなりうるのは電子の他に正孔であるよ
ゆえにフェルミ・ディラック分布関数f(E)に対して
1-f(E) でもって正孔(でもってエネルギーレベルEが埋まる確率)を表すよ
あとは状態密度とエネルギーが埋まる確率とを乗算したのち
エネルギーバンド全域について積分してやれば pic.twitter.com/ou5f2K9oPT— よわめう🐏(牛丼短観) (@tacmasi) February 23, 2024
設計への応用
固体物性の基礎であるエネルギーバンドの概念は、半導体デバイスの動作原理や光デバイスの波長選定など、実際の設計において極めて重要である。たとえばトランジスタのしきい電圧は、バンドギャップとドーピング濃度の関係で決まり、LEDやレーザーの発光波長もバンドギャップのエネルギーに基づいて調整が行われる。また、新素材の開発や高性能フォトニクス素子の実現には、バンドエンジニアリングと呼ばれる手法を使って多層ヘテロ構造の設計を行う。これにより、電子や正孔の滞在領域を意図的に制御し、発光効率や高速応答などの特性向上が期待できる。さらに、近年はスピントロニクスやトポロジカル絶縁体など、新しいバンド構造を利用したデバイス研究も活発であり、物性物理学から工学分野まで多彩な応用が広がっている。