エアコンプレッサ
エアコンプレッサは大気を機械的に圧縮して圧縮空気を供給する設備であり、工場の動力源、制御用計装、清掃や搬送まで幅広く用いられる。一般に吐出圧は約0.7〜1.0MPaGが多く、要求に応じて乾燥度(露点)や残留油分を管理する。圧縮はエネルギー変換であるため、熱の発生と損失が避けられず、効率・冷却・配管圧力損失の最適化が重要となる。適切な選定と運用により、電力原単位の低減、安定供給、装置寿命の延伸が達成できる。
圧縮の原理と熱力学
気体は圧縮で温度が上昇する。理想気体近似では状態方程式「pV=nRT」で概念整理でき、実機では断熱圧縮に近い挙動を示す。圧縮比は吸込条件に対する吐出圧力比で定義し、圧縮比の増加は所要動力の増大と吐出温度上昇を伴う。等温圧縮は理想的最小仕事だが現実には冷却器や段間冷却で近づける。指標として等エントロピー効率や比電力(kW/(m³/min))が用いられる。
主要方式の分類
- 往復動(レシプロ):シリンダとピストンで高圧を得やすい。中小流量・高圧用途に適する。
- スクリュー(油冷式/オイルフリー):ロータ噛合いで連続圧縮。中〜大流量、工場の基幹に多い。
- スクロール:低騒音・低振動。研究室や医療用の清浄空気に向く。
- 遠心:動圧式で大流量を得る。多段構成で中圧を経済的に供給。
- ベーン:簡潔な構造で中小容量。補機用途に採用される。
駆動源と潤滑方式
駆動は電動機が主流で、可変速ドライブと組み合わせる。非常用や屋外ではエンジン駆動もある。潤滑は油冷式(オイルインジェクテッド)とオイルフリーに大別され、前者は冷却・密封・潤滑を油で賄い効率と耐久に優れる。オイルフリーは製品汚染許容度が低い食品・医療・塗装に適し、代わりに高精度なクリアランス管理やコーティング、ステージングで性能を確保する。
空気品質と後処理
用途に応じて固体粒子・水分・油分の管理を行う。国際的にはISO 8573-1の空気品質クラスが参照され、ろ過(ラインフィルタ)、乾燥(冷凍式/吸着式ドライヤ)、残留油分の低減を組み合わせる。受空気槽(レシーバタンク)は圧力変動の平滑化や瞬時負荷の吸収に有効であり、ドレンの自動排出と腐食対策が必須である。
性能指標と選定手順
選定では等価消費量プロファイル(時系列負荷)を基に、基幹機+追従機の構成やN+1冗長を検討する。吐出量は吸込条件(温度・圧力・湿度)で変化するため規約条件で比較し、受入試験はISO 1217に準拠させるとよい。重要指標は吐出量、吐出圧、比電力、部分負荷効率、騒音、冷却方式(水冷/空冷)である。
制御戦略と省エネルギー
- ロード/アンロード制御:設定圧で負荷・無負荷を切替え、適切なヒステリシスで頻繁な切替を防止。
- 可変速(インバータ):需要追従性が高く、部分負荷の比電力を大幅に改善。
- 台数制御:群管理で運転台数を最適化し、深夜・休日の待機損失を削減。
- 漏えい低減:配管継手やクイックカプラの点検で無駄な空気を抑止。
- 熱回収:後冷却器や油冷却器の排熱を給湯・空調予熱に利用。
配管設計・設置の要点
主管はリング状(ループ)とし、分岐脚(ドロップ)は上取りでドレン混入を防ぐ。流速は圧力損失と騒音の両面で管理し、一般に主管約6〜10m/s、支管はそれ以下を目安とする。振動・据付は防振ゴムとアンカを併用し、基礎への固定にはボルトの選定・締結管理が重要である。配管材は防錆・清浄度・施工性から炭素鋼、SUS、アルミ配管システムなどを使い分ける。
保守とトラブルシューティング
定期保守は吸込フィルタ、油分離エレメント、潤滑油、ベルト、クーラの清掃・交換が中心である。代表的異常は過熱(吸込塞ぎ/冷却不良)、オイルキャリーオーバー(分離器劣化/油量過多)、過大振動(芯出し不良/ベアリング摩耗)、圧力不足(漏えい/吸込条件悪化)である。運転データの常時記録と傾向監視は予知保全に直結する。
安全・規格・法的留意
安全弁・圧力スイッチ・温度保護・過負荷保護は必須である。受圧容器は国や地域の規制・検査制度に従い、耐圧・気密・安全弁設定の適合を確認する。品質管理ではISO 8573シリーズ、受入性能はISO 1217が実務で広く参照される。電気設備・防爆や騒音規制、設置スペースの換気・火気管理も設計段階から織り込む。
用途と業界別要求
一般製造業では空圧シリンダやハンドツールの動力、塗装・表面処理では清浄度と露点の管理、食品・医療ではオイルフリーと高品位ろ過、半導体ではパーティクル管理と安定露点が重視される。計装空気では圧力・品質の安定が制御信頼性に直結する。
簡易計算と設計の勘所
需要側の瞬時流量を平滑化するタンク容量は「必要流量×許容圧降×係数」を目安に算定し、配管圧損は等価長と継手損失で評価する。段間冷却の導入は圧縮仕事を低減し、吸込空気の冷却・除湿は効率と品質に効く。環境温度が高いほど吐出温度と比電力は悪化しやすく、吸込ダクト設計と換気が重要である。
導入・更新プロジェクトの進め方
現場測定(kW・圧力・流量・露点)で現状を把握し、需要プロファイルから構成案を作成する。設備更新では高効率機とVSDの組合せ、群管理、配管改修、漏えい是正、後処理最適化を同時に実施すると効果が高い。試運転後は基準日を定めてM&Vを行い、比電力と停止時消費の低減を定量確認する。適切に設計・運用されたエアコンプレッサは、生産の安定とエネルギーコスト削減を両立させる基幹インフラである。