アセンブリ
アセンブリは、複数の部品(パーツ)やサブアセンブリを階層的に結合し、製品全体を表現する3D CADの中核機能である。幾何学的な拘束で相対位置・姿勢・自由度を管理し、運動や干渉、組立性を仮想空間で検証できる点に特徴がある。製造現場での組立工程の可視化、BOM(部品表)生成、図面化やMBD/PMIへの受け渡し、さらにはPDM/PLMと連携した構成管理まで、アセンブリは設計から生産・保全までの情報基盤として機能する。なお「assembly language(アセンブリ言語)」とは別概念で、ここでは機械・製造・設計におけるCADのアセンブリを扱う。
基本概念と階層構造
アセンブリは、部品・サブアセンブリ・トップレベルの3層以上で構成され、各ノードはインスタンス(数量・配置)として挿入される。幾何要素(平面・軸・点)を用いた拘束で自由度を段階的に固定し、剛結合・可動結合・ばねやクリアランスの表現へ拡張する。製品を論理分割(機能)と物理分割(形状)で整理すれば、再使用性が高まり、変更影響範囲の特定が容易になる。大規模アセンブリでは表示軽量化(LOD)や抑制、簡略形状(エンベロープ)を併用してパフォーマンスを保つ。
モデリング手法(ボトムアップ/トップダウン)
ボトムアップは既存部品を配置してアセンブリを構築する手法で、標準部品の有効活用に向く。一方トップダウンは、骨格モデル(スケルトン)やレイアウトスケッチから外形・参照面を派生させ、部品をインコンテキストで作る。前者は導入が容易で統制が緩やか、後者は整合性と変更伝播が強力だが、参照網の肥大化に注意が要る。混在運用では、設計初期はトップダウンで大枠を固め、以降はボトムアップでカタログ部品を流し込むと安定しやすい。
拘束(メイト)と自由度管理
アセンブリ拘束は、平行・直交・一致・同心・距離・角度・対称などが基本である。過拘束は解法の不安定化や矛盾を招き、過少拘束は形状が漂遊して図面や解析に支障をきたす。自由度(6DOF)を意識し、必要最小限の拘束で目的機能を満たすことが肝要である。機構モデルではリミット・バックラッシュ・ばね・ダンパ・ギア比を与え、運動学・動力学の整合性を検証する。
干渉・クリアランス検証
干渉チェックはアセンブリの基本検証であり、固定干渉と運動干渉(スイープ)を分けて評価する。ボルト座面、配線・配管の最小曲率、熱膨張や公差域を踏まえたクリアランス設定が重要で、組付け順序や工具の差し回しを考慮したアクセス解析も有効である。微小面取りやファスナのスレッド表現は誤検出の原因になりうるため、検証用に簡略形状へ置換する運用が安定する。
BOMと構成管理
アセンブリから生成するBOMは設計BOM(eBOM)と製造BOM(mBOM)で粒度が異なる。代替品・使用効果範囲(エフェクティビティ)・オプション構成・ファントム部品の扱いを明確化し、PDM/PLMでリビジョン・承認フロー・派生構成を統制する。項目番号(バルーン)・数量・単位・規格は図面やMBD注記と一貫させ、ERPとコード体系を連携させると、購買・在庫・原価計算が滑らかに接続される。
設計変更・再利用の指針
- 設計意図を寸法・式・参照に埋め、変更が意味的に伝播するよう拘束を配置する。
- サブアセンブリは機能単位でカプセル化し、再使用時の依存関係を縮減する。
- コンフィギュレーションでバリエーション管理し、派生モデル乱立を防ぐ。
- 大規模化では外部参照を最短・最少に保ち、更新順序と所有権(編集権)を定義する。
解析・シミュレーション連携
モーション解析で位相・速度・荷重履歴を得て、接触状態をFEMへ引き渡すと現実的な境界条件を設定できる。ボルト締結・溶接・接着などの結合表現、プリテンションや接触非線形を適用すれば、組立前後の性能差やクレーム再現性の検証に資する。公差累積(トレランススタックアップ)を統計的に評価すれば、実装ばらつき下での機能確率を見積もれる。
図面化・MBD/PMI
アセンブリ図は、爆発図(エクスプロードビュー)・バルーン・部品表・断面図・詳細図で役割を分担する。MBDではGD&T(幾何公差)や注記をPMIとして3Dに保持し、下流で自動検査や工程設計に活用する。図面・3Dのどちらでも、視点・尺度・簡略化ルールを統一して、解釈の一意性を確保することが重要である。
製造・調達・品質との接続
アセンブリはDFA/DFMの設計基準を具現化する場でもある。部品点数削減、共通化、左右共用、方向非依存のフィーチャ設計は、工数・在庫・不良率の低減に直結する。作業手順書や治具設計、組立トルク・シーケンス、検査点の割付をモデルに紐づければ、現場での教育と品質トレーサビリティが強化される。
ファイル管理と命名規則
参照切れはアセンブリ運用の致命傷である。正規化した命名規則、通番とバージョン、保存先ポリシー、部品の一意IDを徹底し、相対参照・ライブラリの複製を避ける。派生保存時は参照の再マップと履歴記録を必須とし、リリース品は改変不可の保護領域で管理する。
ベストプラクティス集
- 拘束は最少・意味的(機能基準面・軸)に置く。
- トップレベルでは軽量表示と抑制を活用する。
- 検証用形状を別構成に分け、干渉判定を安定化する。
- 骨格モデルは責任範囲を明確にし、編集権限を限定する。
- BOMの粒度と図面・PMIの記法を標準化し、PDM/PLMで統制する。