アクリロニトリル
アクリロニトリルは、化学式CH2=CHCNで表される無色透明の液体化合物である。ニトリル基を含むモノマーとして、各種合成樹脂や合成繊維の原料となり、産業界で幅広く利用されている。揮発性と可燃性が高く、有毒でもあるため、取り扱いには厳重な安全対策が必要となる。合成樹脂分野ではABS樹脂やアクリロニトリル系ゴム、アクリル繊維などの製造に活用され、石油化学工業の中核的な製品群に位置づけられている。
基本的性質
アクリロニトリルは分子量53.06と比較的軽く、融点-83.5℃、沸点77.3℃付近である。無色透明の外観をもち、空気中で自然発火する危険性は低いが、高温や炎にさらされると有害ガスを発生させるおそれがある。水には少量ながら溶け、極性溶媒には良好に溶解する性質があり、活性の高い二重結合を持つため重合反応を起こしやすい特徴をもつ。
【メタクリル酸メチル】
H₂C=CCH₃-(COOCH₃)
【アクリロニトリル】
H₂C=CH-(C≡N)pic.twitter.com/99GpYdbabX
— 化学botくん (@ChemBotChem) February 25, 2023
工業的製法
主にプロピレンを原料としてアンモ酸化法によって製造される。このプロセスではプロピレン、アンモニア、酸素を触媒存在下で反応させることによりアクリロニトリルが得られる。生成した製品は蒸留工程などを経て精製され、純度を高めて用途に応じたグレードに仕上げられる。プロピレンの入手性や触媒の性能向上は製造コストや収率を左右する要因であり、各国で継続的な研究開発が行われている。
用途と応用例
- ABS樹脂:アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合体。耐衝撃性と成形加工性に優れる
- アクリル繊維:羊毛に近い質感を持つ合成繊維で、防寒着やカーペットに利用
- アクリロニトリル系ゴム:耐油性や耐薬品性を備えるゴムとして工業部品に使われる
取り扱い上の注意
アクリロニトリルは引火性があり、有毒性をもつため、安全な取り扱いが求められる。蒸気を吸入すると頭痛や吐き気、めまいなどを引き起こすおそれがあり、皮膚や目への刺激性もある。作業時には換気装置を十分に稼働させ、保護手袋やゴーグルなどの保護具を着用することが推奨される。万が一皮膚に付着したり目に入った場合には、多量の水で直ちに洗浄し、必要に応じて医療機関を受診する。
NRSU 421238 7 22T6 NRS所有
アクリロニトリル専用
25.2 3094レ(東水島→岡山タ)
東京タ→東水島で運用されている。
神奈川県の化学メーカーから岡山県内の事業所への輸送。#塩化のコンテナ pic.twitter.com/6xDnB6jcg8— 塩化たらのめ (@Yoka_yoka2085) May 5, 2025
毒性と環境への影響
環境中へ放出されたアクリロニトリルは、土壌や水系を汚染し、生態系に悪影響を及ぼす可能性がある。また分解生成物として有害物質が生成されるケースも報告されており、排出量管理や処理技術の開発が重要視されている。化学工場や製造プロセスでは、廃水・廃ガス処理設備を導入し、大気や河川への放流を最小限に抑える努力が続けられている。国際的にも化学物質規制が強化される傾向にあり、適正管理とリサイクル技術の向上が求められている。
安全基準と規制
アクリロニトリルは各国の化学物質関連法令で危険物または有害物質として指定されており、製造・輸送・保管には厳しい基準が設けられている。日本では毒劇法や消防法、労働安全衛生法などの対象となり、届出やラベル表示、保管基準の遵守などが義務付けられている。国際輸送の場合はUN番号(1093)や危険等級の情報をラベル表示し、適切な容器・車両での輸送が必須となる。事故時の対応手順や緊急時連絡先などを事前に周知しておくことが大変重要である。
今後の展望
合成繊維や樹脂の需要が高まる一方で、石油資源や環境問題への配慮が強く叫ばれている。バイオマス原料からアクリロニトリルを製造する研究や、触媒効率をさらに上げる技術開発が進められており、製造プロセス全体の省エネ・省資源化が期待されている。将来的には、カーボンニュートラルや循環型経済の観点で、代替原料の活用やリサイクル技術の確立が鍵を握ると考えられる。