ばね座金|弾性で緩み防止・振動衝撃に強い

ばね座金

ばね座金は、ねじ締結部のゆるみ抑制と接触圧の確保を目的とする座金である。弾性(ばね性)によって座面の微小な沈み込みや熱膨張・振動による軸力低下を補償し、締付け初期の張力を維持する。典型的にはスプリット形のばね座金(spring washer)が広く用いられ、切欠き部の開口と斜面が戻ろうとする反力を生み、座面圧を持続させる。適切な材料・表面処理・寸法選定を行えば、機械・配管・電気筐体など多様な用途で有効に機能するであろう。

定義と役割

ばね座金は、締結体(被締結部材)とねじ締結要素の間に介在し、弾性変形により軸力の低下を緩和する座金である。締結系では、締付直後からクリープ、表面粗さのなじみ、温度変化、振動・衝撃等により軸力が低下しやすい。これに対しばね座金ばね定数に応じた反力で座面圧を補償し、微小な回転ゆるみの発生を遅らせる役割を担う。摩擦増大効果(切刃や斜面)を併せ持つ形状では、座面の滑りを抑制し、締結信頼性を底上げする。

種類(代表例)

  • スプリット形:切欠きを有する最も一般的なばね座金。開口部の弾性戻りと端部の接触による摩擦増強が特徴である。
  • 波形(ウェーブ)形:薄板を波状に成形したばね座金。小さなたわみで柔らかいばね特性を得やすく、電子機器や軽荷重部に適する。
  • 皿ばね(ディスク)形:円錐状の板ばねを用いるタイプ。高い座面圧とストローク調整が可能で、複数枚組で特性を調整できる。
  • 歯付(セレーション)形:外周または内周に歯を設け、座面への食い込みで滑りを抑える。導通確保にも用いられる場合がある。

作用原理と摩擦・トルクの関係

ばね座金の有効性は、ばね定数と座面摩擦係数の組合せで説明できる。軸方向に圧縮された座金は座面離間を埋め、荷重―変位曲線に沿って反力を供給する。摩擦は回転ゆるみの主要因である微小滑りを減じ、締付トルクに対する軸力のばらつきを抑える。ただし、座金追加により接触面が増えるためトルク—軸力変換係数(K値)が変化し、同じ締付トルクでも得られる軸力が変わることがある。量産現場ではトルク管理に加え、ねじ軸力(張力)や回転角管理の併用が望ましい。

材質・表面処理と規格

ばね座金の材質には、炭素鋼ばね材(例:SWP系)、ステンレス鋼銅合金などが用いられる。耐食性や電気的要求(導通・絶縁)に応じて亜鉛めっきニッケル、リン酸塩皮膜、黒染め等を選定する。高強度ボルトに併用する場合は、座金の硬さが低いと座面が塑性変形し軸力を失うため、硬さ整合が重要である。寸法・公差・機械的性質はJISやISOで規格化されており、対象ねじ径、内径・外径、板厚、ばね特性の適合確認が肝要である。

設計・選定の要点

  • ねじ径整合:内径はねじ外径に対し余裕を持たせつつ偏心を抑える。外径は座面圧分布と座屈安定性を考慮する。
  • ばね特性:必要ストロークと許容軸力変動から、ばね定数・板厚・形状を選ぶ。
  • 表面状態:被締結体の座面粗さ・硬さ・平面度は摩擦と沈み込みに影響する。必要に応じ座面仕上げや座ぐりを行う。
  • 環境条件:温度、腐食、電食、通電の有無に応じて材質・処理を決める。

取付け・使用上の注意

スプリット形ばね座金は切欠きの向きと平面度が重要である。座金が傾いて挿入されると局所応力で座面を傷め、早期ゆるみを誘発する。軸力の管理は座金任せにせず、適正トルク・回転角・潤滑状態を合わせて制御する。再使用では塑性変形や疲労割れの有無を点検し、変形履歴のあるばね座金は基本的に新品交換とするのが安全である。

限界と代替的手段

ばね座金は初期軸力の維持と微小滑りの抑制に寄与するが、強い横振動や大きな温度サイクル下では十分でない場合がある。その際は、歯付座金や波形・皿ばねの複合、ねじ自体の緩み止め(全金属製トルク保持ナット、樹脂パッチ)、嫌気性ロック剤、座面拡大用の平座金併用、座面硬化処理など、締結系全体の設計で対処する。ボルト長さや有効ねじ噛合い長、クランプ長比の最適化も根源的な解である。

代表的な適用例

  • 一般機械の外装板金固定:板厚差や熱変形のある箇所でばね座金が軸力低下を緩和する。
  • 電気機器端子部:導通確保と接触圧維持を両立。歯付や波形と組み合わせることがある。
  • 配管クランプ・ブラケット:振動環境での締結信頼性向上に寄与する。
  • 保守点検部:再締付け間隔を延ばす目的でばね座金を併用することがある。

用語上の注意

現場ではばね座金を「スプリングワッシャ」「スプリング」「ロックワッシャ」などと呼ぶ。厳密には形状や機能が異なる場合があり、図面・仕様書では寸法記号、材質、表面処理、規格記号を明示して誤解を避けるべきである。海外規格ではspring washerの定義範囲が異なることもあるため、調達時には適用規格の整合を確認するのが望ましい。