ころがり軸受用止め金|油熱振動に強い機械式ゆるみ止め

ころがり軸受用止め金

strong>ころがり軸受用止め金は、軸端にねじ込んだロックナットのゆるみを機械的に防止するための座金である。内周側に軸のキー溝やスリーブの窓に噛み合う「内舌」を持ち、外周側にはロックナットの溝に折り込む「外爪(タブ)」を備える。内舌で座金自体の空転を止め、外爪を折り曲げてナットの回転を拘束する二重の機構により、潤滑油・温度・振動の影響を受けにくい確実なゆるみ止めが得られる。JISは呼び寸法と形状を規定し、一般のロックナットと組で使用することを前提とするため、保守交換が容易で互換性に優れる。

構造と機能

止め金は薄い円板形状で、内周の内舌と、周縁に等配された複数の外爪から成る。取付け後、外爪の一つをナット溝へ90°程度折り込むことで、ナットの逆転を物理的に阻止する。内舌はキー溝やスリーブの窓に確実に挿入されていなければならず、ここが不完全だと外爪のみで荷重を受けて折損の原因となる。材質は一般に炭素鋼・ばね鋼等が用いられ、弾性復元と曲げ加工性のバランスが重視される。再利用時の同一外爪の折り直しは避け、別の外爪を使用するのが保全上望ましい。

適用場面と利点

止め金は、段付き軸に直接はめる軸受の軸方向固定、テーパ穴軸受+アダプタスリーブ/引抜きスリーブの締結、減速機や送風機のプーリ端など回転中の振動やリバーストルクが生じる箇所で用いられる。利点は、(1)視認できる機械的ロックで点検が容易、(2)油・熱・薬剤の影響を受けにくい、(3)規格品のため補給が容易、の三点である。一方、折り曲げ作業が必要で、狭い周囲クリアランスでは工具選定に配慮を要する。

取付手順

  1. 軸端・座面・ねじ部・ロックナットを清浄にし、バリや打痕を除去する。
  2. 軸受を所定位置へ配置し、ロックナットを所定トルクで締め付ける(必要に応じ再度締め直し)。
  3. 止め金の内舌をキー溝またはスリーブの窓へ確実に挿入し、座面に密着させる。
  4. ロックナットの溝位置に合う外爪を選定し、ポンチまたは曲げ工具で溝へ折り込む。
  5. 回転部との干渉、外爪の浮きや割れ、座金の偏心を点検する。
  6. 必要に応じて色差しやマーキングで点検容易性を高める。

選定ポイント

  • ねじ呼び・ナット形式の一致(規格・メーカー互換の確認)
  • 外径・厚さ・外爪高さが周辺部品と干渉しないこと
  • 材質と表面処理(耐食・耐熱・油環境での信頼性)
  • 回転速度とアンバランス影響(外爪折込み位置の配置)
  • 保全方針(分解頻度に応じた予備品・再使用ルール)

設計・保全の留意点

外爪の折り曲げは、角部に応力集中が生じるため過度な折り直しを避ける。外周にカバーやシールが近接する場合、外爪先端の逃げ寸法を確保する。座面の面粗さ・平面度不良は曲げ後の浮きを誘発するため注意する。高速回転機では外爪位置の偏りが微小アンバランスとして作用し得るので、可能なら180°対向の外爪を選んで折り込むのが望ましい。分解時は基本的に新品に交換し、再使用する場合でも未使用の外爪を選ぶ。

代替・補完手段

ゆるみ止めとしては、ねじロック剤、二重ナット、スプリットピン+割りピン付きナット、歯付き座金、かしめプレートなどがある。しかし回転軸端のロックナットでは、外観でロック状態を即時判定でき、油・熱・振動に強い止め金が依然として主流である。ロック剤は油汚れで性能が不安定になり得るため、保全現場では機械的ロックが選ばれることが多い。

< h3>関連規格と参照

適合確認にはJISの原規格票を参照すること。主な関連として、JIS B 1554(本品)、ロックナットに関するJIS B 1552、アダプタスリーブのJIS B 1553、転がり軸受の公差JIS B 1514、メートルねじのJIS B 0205/JIS B 0211、国際整合としてISO 2982などが挙げられる。設計・選定・検品・保全の各段階で、規格呼びの一致、寸法・材質・表面処理、折り曲げ後の状態確認を一貫して実施することが、長期信頼性の鍵である。なお、ころがり軸受用止め金(JIS B 1554)は消耗品として扱い、分解時の予備確保を推奨する。

呼びと寸法系列

JIS B 1554は止め金の呼び、外径・内径・厚さ、外爪形状などの基準を与える。選定時は、対応するロックナット(例:JIS B 1552)の呼びと完全に一致させることが原則である。ナット座面径や溝位置との整合、外爪高さの干渉、ハウジングとの隙間を必ず確認する。カタログではねじ呼び(例:M30)に対して適合する止め金の型式が提示されるのが一般的であるが、最終判断は規格票・メーカー図面で照合するべきである。なお、下記は参考の寸法を載せているが、必ずカタログや規格、メーカー図面を確認すること。

ころがり軸受用止め金 系列AL

呼び番号 S
S₁ h₁ d₆ e l
G₂ L₃
AL44 4 20 12 9 22.5 16 M8 30.5
AL52 4 24 12 12 25.5 20 M10 33.5
AL60 4 24 12 12 30.5 20 M10 38.5
AL64 5 24 15 12 31 20 M10 41
AL68 5 28 15 14 38 25 M12 48
AL76 5 32 15 14 40 25 M12 50
AL80 5 32 15 18 45 30 M16 55
AL88 5 36 15 18 43 30 M16 53
AL96 5 36 15 18 53 30 M16 63
AL100 5 40 15 18 45 30 M16 55
呼び番号 S
S₁ h₁ d₆ e l
G₂ L₃

b1は,ロックナットの切欠き幅bより小さくなければならない。
止め金に使用するボルトのねじ長さは、表示された寸法を推奨する。

ころがり軸受用止め金 系列ALL

呼び番号 S
S₁ h₁ d₆ e l
G₂ L₃
ALL44 4 20 12 7 13.5 12 M6 21.5
ALL48 4 20 12 9 17.5 16 M8 25.5
ALL56 4 24 12 9 17.5 16 M8 25.5
ALL60 4 24 12 9 20.5 16 M8 28.5
ALL64 5 24 15 9 21 16 M8 31
ALL72 5 28 15 9 20 16 M8 30
ALL76 5 28 15 12 24 20 M10 34
ALL84 5 32 15 12 24 20 M10 34
ALL88 5 32 15 14 28 25 M12 38
ALL96 5 36 15 14 28 25 M12 38
呼び番号 S
S₁ h₁ d₆ e l
G₂ L₃

b1は,ロックナットの切欠き幅bより小さくなければならない。
止め金に使用するボルトのねじ長さは、表示された寸法を推奨する。