預託証券|外国企業の株式に投資するための証券

預託証券

預託証券(よたくしょうけん、Depositary Receipt)は、外国企業が自国の株式を他国の投資家に販売する際に、その株式を現地の銀行に預託し、代わりに発行される証券のことである。この証券は、実際の株式に相当する権利を持ち、投資家はその証券を通じて外国企業の株式に投資することができる。預託証券は、国際的な株式取引を容易にし、投資家が外国株式にアクセスできるようにするための手段として広く利用されている。

預託証券の仕組み

預託証券の基本的な仕組みは、以下のように運用される。

  • **外国企業の株式の預託**:外国企業が株式を発行し、その株式を現地の預託銀行に預け入れる。預託銀行は、その株式に対して預託証券を発行する。
  • **預託証券の発行**:預託銀行は、預け入れられた株式に基づいて、現地の通貨建てで預託証券を発行する。投資家は、この証券を購入することで、外国株式に間接的に投資することができる。
  • **権利の行使**:投資家は、預託証券を通じて、株式の配当金や議決権などの株主としての権利を行使できる。ただし、実際の株式を保有しているのは預託銀行であり、投資家は預託証券を介して権利を持つ形となる。

預託証券の種類

預託証券には、以下のような種類がある。

  • **アメリカ預託証券(ADR)**:米国市場で取引される預託証券で、米国の投資家が外国企業の株式に投資する際に利用される。ニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック(NASDAQ)で取引されている。
  • **グローバル預託証券(GDR)**:複数の国の市場で取引される預託証券で、国際的な投資家が外国株式にアクセスするために利用される。ロンドン証券取引所などで取引されることが多い。

預託証券のメリット

預託証券には、以下のようなメリットがある。

  • **国際投資の容易化**:預託証券を利用することで、投資家は国内市場を通じて外国企業に投資できるため、国際投資が容易になる。
  • **通貨リスクの軽減**:預託証券は通常、現地の通貨建てで取引されるため、投資家は為替リスクをある程度軽減できる。
  • **投資の多様化**:外国株式への投資が容易になることで、投資家はポートフォリオの分散を図り、リスクを分散させることができる。

預託証券のデメリット

一方で、預託証券には以下のようなデメリットもある。

  • **手数料が高い場合がある**:預託証券には、預託銀行や証券会社の手数料がかかることがあり、直接株式を購入するよりもコストが高くなる場合がある。
  • **為替リスクが残る**:現地通貨で取引されるとはいえ、外国企業の株価自体はその国の通貨で動くため、為替リスクが完全に排除されるわけではない。
  • **議決権の制約**:預託証券を保有する投資家は、実際の株主としての議決権行使が制約されることがある。議決権を行使するには、預託銀行を通じた手続きが必要な場合がある。

預託証券の活用例

例えば、米国の投資家が中国の企業に投資したい場合、直接中国の株式市場で株を買うのは難しいことが多い。このような場合、米国の証券市場で取引されるADRを通じて、中国企業の株式に投資できる。この手法により、投資家は米ドルで取引を行いながら、中国企業の業績に基づくリターンを得ることができる。

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