追認|取消し得る行為や無権代理行為を後から有効化する意思表示

追認

追認とは、一度行われた法律行為や契約行為に対して、その当事者や利害関係を有する者が後になって有効であると認める行為を指す。初めの段階では、代理権がない者による行為や、制限行為能力者によって結ばれた契約などが無効・取消し得る状態にあっても、事後的に追認を行うことで当初から有効な法律行為として効力を持たせることができる。民法などの法体系では契約の安定性と取引の円滑化を図る観点から、追認に関する厳格な要件や手続が定められており、当事者間の意思確認や法律効果の確定を慎重に進める仕組みが採られている

民法上の位置づけ

民法において追認は、無権代理行為や制限行為能力者の行為、錯誤・詐欺・強迫による契約の取消しなど、一定の条件下で効力が不確定な行為を事後的に有効にする手続として重要視されている。追認が認められると、その法律行為は遡及効を持ち、当初から有効な行為として扱われる。ただし、追認の効力を発生させるためには、追認する者自身が十分な意思能力や権限を持ち、その行為の内容を正確に把握していることが必要とされる

対象となる場面

追認は、無権代理行為のほか、未成年者や成年被後見人が行った法律行為に対して法定代理人が行うケースなどにも適用される。例えば未成年者が保護者の承諾なく行った売買契約は、保護者の追認がない限り取消し得る行為として扱われる。一方、保護者が契約内容を確認し、追認を行うことで当該契約が初めから有効になる。また、契約締結後に当事者が自発的に納得し、錯誤や詐欺等による取消しを行わない意思を表明する行為も追認の一種と考えられる

追認の要件

追認が成立するためには、追認者が追認時点で行為能力や権限を備えていることが前提となる。また、追認すべき行為の実態を正確に把握し、瑕疵の存在やリスクを十分認識したうえで、自発的かつ明示的に有効性を承認する意思表示を行う必要がある。追認は行為の性質上、取消しや無効を主張する権利を放棄する性格を持つため、追認後は原則として再び取消しを主張することはできない。ただし、詐欺や脅迫など重大な違法性が介在する場合は、行為全体の再検討が必要になる可能性もある

効果と遡及効

追認が有効に成立すると、対象となった法律行為はさかのぼって有効性を獲得する。これによって取消し得る状態や一時的な無効の状態から解放され、当初から成立していた行為として第三者に対しても効力を持つ。ただし、当事者の一方が追認前に権利を譲渡していた場合や、第三者が取得した利害関係など複雑な状況が生じているときは、遡及効の範囲や第三者保護の問題をめぐり争いとなる場合もある。そのため、追認を行うかどうかの判断では周辺事情を慎重に確認することが求められる

実務上の留意点

実務では、追認を「黙示的に行う」か「明示的に行う」かが問題となることがある。事実上、長期間にわたり契約の履行を続けたり、取引相手の主張を容認する発言や行為をしたりすることで黙示の追認が認定されるケースも存在する。また、追認による法律効果が大きく、後から取り消すことができなくなるため、書面による合意や専門家への相談が推奨される。特に大型の契約や不動産取引、相続関連の紛争などにおいては、追認の意義を理解し、適切なフローで進めることでリスクを最小限に抑えることが重要である

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