耐熱鋼(SUH材)|酸化や腐食がなく、強度や硬さの低下が少ない

耐熱鋼 (SUH材)

耐熱鋼(SUH材)は、高熱に耐える鋼で、炭素鋼に比べて高温度の空気やガスの中でも酸化や腐食がなく、強度や硬さの低下が限定的な素材である。耐熱鋼の種類は大きくフェライト系耐熱鋼・オーステナイト系耐熱鋼がある。耐熱性を増加させるためにニッケル(Ni)、耐酸化性を改善するためにクロム(Cr)、ケイ素(Si)、高温時での強さ、硬さを高めるためにタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)などを加えている。一般的には400℃程度に耐え、さらに600℃~1000℃まで耐える。また耐熱鋼のほか、耐熱用の素材として、そのほか、超合金、セラミックスなどが用いられる。

耐熱鋼の用途

耐熱鋼の用途は、耐熱を必要とする部品、自動車エンジンのバルブ、排気管、船舶用蒸気タービン、ガスタービンのブレード、ジェットエンジン、加熱炉部品など多種多様に使われている。

化学成分と添加元素

主成分は鉄であるが、耐熱性を高めるためにクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)などが添加される。クロムは酸化皮膜を形成して耐酸化性を強化し、ニッケルは高温下でも結晶構造を安定化させる。モリブデンバナジウムはクリープ耐性や高温強度を向上させるために不可欠な元素である。

耐酸化

熱に耐えるため、高温でも酸化しない耐酸化性がある。耐酸化は高温時に銅が酸化して耐食性を著しく劣化させる。

クリープ

クリープとは、材料に一定な荷重を負荷し続けると、時間の経過とともに変形が進んで破壊される現象である。耐熱鋼は高温時でもクリープを抑え、クリープ強さ(クリープの時間と応力とのびの関係)が必要である。耐熱鋼の使用として、絶対温度で表示した融点の3割を超すと問題となるため注意しなければならない。

加工と溶接性

耐熱鋼は一般の鋼材に比べて加工や溶接が難しいとされる。特にオーステナイト系やマルテンサイト系では、溶接熱影響部での組織変化や硬化が発生しやすく、予熱や後熱処理が必要となる。加工時には工具の摩耗や発熱に注意を要し、切削条件の最適化が求められる。

基本的な分類

耐熱鋼は主にフェライト系、オーステナイト系、マルテンサイト系の3種類に分類される。フェライト系はクロムを主成分とし、酸化に強い。一方、オーステナイト系は高温強度に優れ、マルテンサイト系は熱処理により高強度を実現する。それぞれの系統は、使用環境や必要とされる特性によって選択される。

フェライト系耐熱鋼

フェライト系耐熱鋼は、低クロム系耐熱鋼と高クロム耐熱鋼がある。低クロム系耐熱鋼はクロム量が少なく、1.25~3%がある。4~9%クロム量(Cr)になると耐食性が優れて耐熱性もある。そのため、熱交換器、化学装置の機器類にある。高クロム耐熱鋼は、クロム量(Cr)が10%を超えて、炭化物を利用した耐熱強度部材に利用する。耐熱鋼は高温で使用するため、焼入れで硬さを確保して強度を増し、耐熱性を併せ持つことはありません。

フェライト系(SUH)
  • SUH446

オーステナイト系耐熱鋼

オーステナイト系耐熱鋼は、18-8鋼がベースにし、さらにニッケル(Ni)とクロム(Cr)量を増加した鋼である。1000°Cを超える耐熱性を有し、高温強さ、耐食性も優れている。溶接性や加工性に優れている。

オーステナイト系鋼(SUH)
  • SUH31
  • SUH35
  • SUH36
  • SUH37
  • SUH38
  • SUH309
  • SUH310
  • SUH330
  • SUH660
  • SUH661

マルテンサイト系耐熱鋼

マルテンサイト系耐熱鋼は、焼入れ・焼戻し処理により高強度を発現する耐熱鋼の一種であり、主に鉄にクロムを添加した構成を持つ。一般的には9〜12%のクロムを含み、強度と耐酸化性のバランスに優れている。特徴としては、高温下でも引張強度とクリープ強度が高く、蒸気配管やタービンローターなどの過酷な条件で用いられる点が挙げられる。ただし、溶接時に硬化しやすく割れを起こしやすいため、適切な熱処理管理や施工技術が必要である。

マルテンサイト系耐熱鋼

マルテンサイト系耐熱鋼(SUH)
  • SUH1
  • SUH3
  • SUH4
  • SUH11
  • SUH600
  • SUH616

おおよその耐熱温度

25Cr-20Ni鋼 約1100℃
22Cr-12Ni鋼 約1100℃
18Cr-8Ni鋼 約900℃
28Cr鋼 約1100℃
18Cr鋼 約900℃
13Cr鋼 約700℃
5Cr-0.5Mo鋼 約650℃
2.25Cr-Mo鋼 約600℃
0.5Mo鋼 約550℃