統計的品質管理|統計学ベースに品質の管理・改善する手法

統計的品質管理

統計的品質管理(Statistical Quality Control、SQC)とは、製品やサービスの品質を統計学的手法を用いて管理・改善する手法である。 Statistical Quality Controlから、SQCとも呼ばれる。製造業をはじめとするさまざまな産業において、品質を維持・向上させるための重要な技術として広く採用されている。統計的品質管理は、統計学をベースに製品のばらつきを理解し、その原因を特定することで、不良品の発生を減少させることを目的としている。これにより、製品の品質を効率的かつ経済的に管理することが可能となる。

統計的品質管理の歴史

統計的品質管理(SQC)の起源は1920年代のアメリカにさかのぼる。ウォルター・A・シューハートがベル研究所で品質管理の研究を行い、統計的手法を品質管理に導入したことから始まる。彼が開発した「管理図」は、製造工程の品質を監視するための基本的なツールとして現在でも広く使われている。その後、1940年代にデミング博士が統計的品質管理を日本に紹介し、日本の製造業が世界的な品質競争力を持つようになるきっかけとなった。

統計的品質管理の基本概念

統計的品質管理(SQC)の基本概念には「変動」「ばらつき」「管理限界」などがある。製造プロセスにおいて、全く同じ条件であっても製品には必ずばらつきが生じる。統計的品質管理ではこのばらつきを統計的に分析し、製品の品質が一定範囲内に収まるように制御する。管理限界とは、そのばらつきの範囲を示すものであり、製造工程が正常か異常かを判断するための基準となる。

統計的品質管理のポイント

統計的品質管理は統計学に基づいているため正確にデータを収集・管理を行い適切に活用することが重要である。またデータにはいくつかの種類があるが、それらの特性を知ることが重要である。

データの収集

統計的品質管理は、統計学をベースとして行っているため、正しいデータの収集を収集することが必要である。先ず、数学的に裏付けされた統計理論を使い、誤差を見積もり、設定した誤差の範囲で結論を出すために、どのくらいの数のデータを収集すればよいかを検討する。データの収集は、既存の記録やデータベースをとる場合と新たに調査や実験を行う必要がある。どの方法にしろ、扱うデータに対して、目的と解析方法、データ対象を明確化しなければならない。

データの管理

収集したデータは、適切に保管しておき、メンバーが自由に閲覧できるようにしておく。他メンバーとも情報の共有化を行い、必要に応じて議論する必要がある。

データの種類

数値データを処理するためには、そのデータが、どのような性質のものかを考慮しなくてはいけない。ここでは、統計的方法の対象としての1計量値、2計数値、3順位値の3つをあげる。

計量値

計量値とは、測定値のことでスケールなど各種の測定器具で「測る」ことによって得られるデータである。たとえば、重さや長さ、時間などが計量値に当たる。このとき、とりうる値が「連続的」であるという特徴がある。連続的であるというのは、測定器具の精度が許す限り小数点以下何桁でもとれて区切りがないことを意味する。

計数値

計数値とは、個数のことで「数える」ことによって得られるデータである。たとえば、不適合品数、事故件数などが計数値である。ここでの値は「離散的」という特徴をもち、たとえば、不適合品の数が1.5個ということはありえなく、1と2の間の値は存在しないような数字である。

順位値

順位値とは、順番のことで、「比べる」ことによって得られるデータである。この種のデータは、官能検査、アンケート調査における順位(ランキング)が当たる。このときのデータは、1位、2位といったような順位を示す。

管理図の役割

管理図(Control Chart)統計的品質管理において最も重要なツールである。製造工程から得られるデータを時系列でプロットし、管理限界線を設けて品質の変動を監視する。データが管理限界線を超える場合、製造プロセスに異常が発生している可能性があることを示している。代表的な管理図には「X-R管理図」や「p管理図」などがあり、それぞれ用途に応じて使い分けられる。

品質特性と変動の種類

品質特性とは、製品やサービスの品質を評価するための指標である。例えば、寸法、重量、強度、外観などが品質特性に該当する。また、変動には「偶然変動」と「異常変動」がある。偶然変動は避けられない小さなばらつきであり、通常の製造工程の中で起こる。一方、異常変動は機械の故障や原材料の問題など、特定の原因によって発生するものであり、品質管理の対象となる。

メリットとデメリット

統計的品質管理を導入することで、製造工程のばらつきを減少させ、製品品質を安定させることが可能となる。また、データに基づいた問題解決ができるため、無駄なコストを削減し、効率的な生産が実現する。さらに、品質の向上により顧客満足度が向上し、企業の信頼性や競争力を高める効果も期待できる。統計的品質管理のデメリットは、例えば、統計的手法に頼りすぎると、現場の状況や人の感覚を無視する可能性がある。また、データの収集や分析には時間やコストがかかるため、小規模な企業では導入が難しい場合もある。さらに、統計的品質管理の効果を最大限に引き出すためには、組織全体での理解と協力が必要である。

統計的品質管理のツール

統計的品質管理ではさまざまな手法が用いられる。代表的なものとして、前述の管理図に加え、ヒストグラムパレート図散布図相関分析、回帰分析などが挙げられる。その多くは統計学に基づいたもので、集められたデータをこれらの手法で整理することで見える化をはかり、品質の未然防止や再発防止に応用していくことができる。

導入事例

統計的品質管理は多くの企業で成功事例がある。例えば、自動車メーカーでは製造工程の管理に統計的品質管理を活用することで、不良品の発生を大幅に削減した。また、電子機器メーカーでは部品の品質検査に統計的手法を取り入れることで、品質トラブルの早期発見に成功している。このような事例は、統計的品質管理が製品品質の向上とコスト削減に大きく貢献することを示している。