約定
約定(やくじょう)とは、株式や債券、FXなどの金融商品の売買注文が市場で成立し、取引が確定することを指す。投資家が証券会社に対して出した買い注文や売り注文が、指定した価格や条件で取引所や取引相手によって成立した場合に「約定」と呼ばれる。約定が成立した時点で、売買の当事者である投資家と相手方との間で正式な取引契約が結ばれ、売買価格や数量が確定する。
約定のプロセス
約定が成立するまでの基本的なプロセスは以下の通りである。
- **注文の発注**:投資家が証券会社やFX業者に対して、売買したい銘柄の数量や価格を指定して注文を出す。
- **取引所でのマッチング**:発注された注文は、取引所に送られ、他の投資家の反対注文(買い注文に対する売り注文、または売り注文に対する買い注文)と照合される。このプロセスをマッチングと呼ぶ。
- **約定の成立**:注文が条件に合致した場合、取引所で売買が成立し、約定が確定する。この時点で、取引数量や価格が確定し、売買が完了する。
- **約定通知**:約定が成立すると、証券会社などを通じて投資家に通知される。これにより、取引が正式に完了したことが確認できる。
約定の種類
約定にはいくつかの種類があり、注文の内容や条件によって異なる。
- **成行注文の約定**:成行注文は、投資家が売買価格を指定せず、最も早く成立する価格で取引を行う注文である。取引所で最も近い価格で速やかに約定が成立するため、価格は選べないが、約定する確率は高い。
- **指値注文の約定**:指値注文は、投資家が希望する価格を指定して注文を行うもので、指定された価格またはそれより有利な価格で約定が成立する。指定価格に達しない場合は、注文が約定せずに未成立のままとなる可能性がある。
- **逆指値注文の約定**:逆指値注文は、価格が指定された水準に達したときに自動的に成行注文として売買が行われる。これは、損失を限定するために使われることが多く、価格が下がったときに自動的に売り注文を発動することで損失を抑えることができる。
約定の重要性
約定は、金融取引において非常に重要な概念である。以下の理由から約定が重要視される。
- **取引の確定**:約定が成立した時点で、売買価格と数量が確定し、正式な取引が完了する。これにより、投資家はその時点での市場価格に基づいた利益や損失を確定できる。
- **リスク管理**:投資家は、約定を利用してリスク管理を行うことができる。たとえば、逆指値注文によって、価格が急落した際に自動的に売り注文が成立することで、大きな損失を防ぐことが可能になる。
- **マーケットの流動性の向上**:約定がスムーズに行われることは、金融市場の流動性を高め、市場参加者が取引を活発に行えるようにする。また、売買が容易に成立することで、相場の透明性や効率性も向上する。
約定に影響する要素
約定の成立には、さまざまな要素が影響を与える。
- **市場の流動性**:市場の流動性が高いほど、売買注文がスムーズに成立しやすくなる。流動性が低い市場では、希望する価格で約定が成立しにくくなることがある。
- **注文の種類**:成行注文は価格を指定しないため、即座に約定しやすい。一方、指値注文は価格を指定するため、指定価格に達しなければ約定しない可能性がある。
- **相場の変動**:市場の価格変動が激しい場合、注文を出した時点と約定する時点で価格が大きく変わることがあり、希望する価格での取引が難しくなることがある。
約定の例
たとえば、ある投資家がA社の株を100株、1,000円で買いたいと思い、証券会社に対して1,000円の指値注文を出した場合、株価が1,000円に達した時点で売り手が現れれば約定が成立する。しかし、株価が1,000円に達しない場合や、1,000円で売る売り手がいない場合は、約定が成立せず、注文が未成立のままとなる。
まとめ
約定は、金融商品の売買が市場で成立し取引が確定するプロセスであり、投資家にとっては売買の価格や数量が確定する重要な段階である。