現先取引
現先取引(げんさきとりひき、Repo: Repurchase Agreement)は、金融市場において、現金と有価証券を交換する短期的な金融取引である。現先取引は、現金を必要とする金融機関や企業が保有する有価証券を担保として現金を調達し、一定期間後にその有価証券を買い戻すことを約束する形で行われる。逆に、現金を貸し出す側は、有価証券を担保に一時的に現金を提供し、買い戻し時に利息を受け取る。現先取引は、短期間で資金を調達・運用するための手段として、金融機関や中央銀行、企業間で広く利用されている。
現先取引の仕組み
現先取引は、通常、2つの取引から成り立っている。最初の取引で、現金を借り手が貸し手に有価証券を売却し、現金を受け取る。次に、あらかじめ定めた期日に、借り手がその有価証券を買い戻し、現金に利息を上乗せして貸し手に返済する。この一連の取引を「現先取引」と呼ぶ。取引期間は、1日から数週間程度の短期が一般的であるが、場合によっては数か月にわたることもある。
現先取引の利用目的
現先取引は、金融機関や企業が短期的な資金調達や資金運用を行うために利用される。資金を必要とする金融機関は、保有する有価証券を担保に現金を調達できるため、流動性を確保する手段として現先取引を活用する。一方、余剰資金を持つ金融機関は、短期間で安全に資金を運用し、利息収入を得るためにこの取引を利用する。また、中央銀行が金融政策の一環として市場に資金を供給・吸収する手段としても現先取引は重要な役割を果たす。
現先取引のメリットとリスク
現先取引のメリットは、取引が短期間で完了するため、資金の流動性を高めることができる点にある。また、担保として有価証券が提供されるため、貸し手にとってはリスクが低く、比較的安全な投資手段とされる。しかし、借り手が買い戻し時に返済できない場合には、貸し手が担保として受け取った有価証券の価値が下落しているリスクがあるため、リスク管理が重要である。
現先取引の市場における役割
現先取引は、金融市場の安定に寄与する重要な役割を果たしている。特に、金融機関同士の資金調達や中央銀行による金融政策の実施において現先取引は欠かせない手段である。市場全体の流動性を高めることで、金利の安定や信用供給の円滑化に貢献する。一方で、リーマンショック時のように、現先取引市場における信用リスクの増大が、金融危機を引き起こす要因となる可能性も指摘されている。