時価発行
時価発行とは、企業が新株や転換社債などの証券を発行する際に、その発行価格を市場の取引価格(時価)に基づいて設定する手法である。これにより、発行価格が市場での評価を反映したものとなり、既存株主に対する影響を抑えつつ、新たな資金を調達することが可能となる。時価発行は、一般的に企業が資本市場から効率的に資金を調達する方法として用いられる。
時価発行の仕組み
時価発行では、発行時点での株式の市場価格に基づいて新株の発行価格が決定される。これにより、発行価格が市場の動向を反映する形で設定され、投資家にとっても公正な価格で取引されることが保証される。時価発行の対象となるのは、通常の新株発行のほか、転換社債や株式オプションなども含まれることがある。
時価発行のメリット
時価発行のメリットは、既存株主に対する希薄化(株式の価値が薄まること)の影響を最小限に抑えながら、企業が迅速に資金を調達できる点にある。市場価格に基づいた公正な価格設定により、投資家に対しても透明性が高い資金調達手段となる。また、割引発行と比べて発行価格が市場価格に近いため、企業のイメージが毀損されにくい。
時価発行のデメリット
時価発行には、デメリットも存在する。市場価格が変動しやすい場合、発行価格の設定が難しく、調達資金が想定より少なくなるリスクがある。また、市場の動向に左右されやすいため、株式市場の状況が悪化している場合には、資金調達が困難になる可能性もある。さらに、市場価格で発行するため、特定の投資家に対する優遇措置が難しくなることも考えられる。
時価発行と割引発行の比較
時価発行は、発行価格を市場価格に基づいて設定するため、公正な価格設定ができる一方、割引発行では、発行価格が市場価格よりも低く設定されることが一般的である。割引発行は、投資家にとって魅力的な投資機会を提供し、迅速に資金調達を行うために有効だが、既存株主に対する希薄化のリスクが高まる。一方、時価発行は、既存株主への影響が少ないが、市場価格に依存するため、資金調達の成功が市場状況に左右されやすい。
時価発行の利用状況
時価発行は、資本市場が成熟している国や地域で広く利用されている。特に、株式市場の流動性が高い企業や、成長を目指して積極的に資金を調達したい企業にとって、効果的な手段である。また、金融機関や大企業が資本を増強する際にも、時価発行が選択されることが多い。