搾取
搾取とは、生産手段が私有化されている社会において、支配階級(生産手段の所有者)が被支配階級による労働の成果をわがものにしてしまうこと。その時代の生産関係において、搾取の形態は変化するが、資本主義社会においては、資本家が、賃金として支払った分をこえて労働者を働かせ、その超過分の成果を利潤として確保することをいう。
生産関係の変化と搾取の形態の変化
支配者と被支配者の生産関係が変化するに伴い、搾取の変化は起こってきた。技術革新が起こると、既存の生産関係と、技術革新の間で矛盾やギャップが生じる。そのギャップが大きくなったとき、社会革命が起こり、次の時代の新しい生産関係が生まれる。
奴隷制度による搾取
奴隷制の社会では、しばしば奴隷を所有する主人が少ない物資(あるいは資本)の供給で多くの生産を強制する制度をいう。近代以降、近代の西欧やアメリカの他人種に対する奴隷制度が代表的であるが、多くの国で存在し、いまも続いている。
封建制度による搾取
鉄製農具の発明にともない、社会制度は封建制度をとるようにない、そこでは領主が小作人を囲い込み、生産させる、といった形で搾取を行われる。
資本主義体制による搾取
工業化が促進すると資本主義体制が確立と搾取の形態も変化した。資本家が、労働者に対して、賃金として支払った分をこえて労働者を働かし、その超過分の成果を利潤として自らの利益とする。マルクスによれば、通常、社会に流通する資本は増大するので、労働者は相対的に賃金が下がり続けることになる。
マルクスと共産主義
経済学者のマルクスは資本家階級(ブルジョワジー)によって労働階級(プロレタリアート)に搾取が行われている。土地や工場、設備を所有していないので、それらを所有している資本家階級に利益を搾取されるとした。通常、生産関係が一度築かれると、資本家はそれを解体しようとせず、搾取で得た利潤は資本家の元に集中するようになる。過度に資本家と労働階級が高まるとき、社会革命が起こり、社会主義を経由して共産主義に行き着く、とマルクスは考えた。
やりがいの搾取
近年において、賃金ではなく思想的・宗教的に労働者を搾取する、やりがい搾取というのが問題になることが多い。やりがい、といった曖昧な価値によって労働者を集め、低い賃金で労働を強いるといったケースが見られている。