固定相場制
固定相場制(こていそうばせい)とは、ある国の通貨の価値を他国の通貨や金などに対して一定の水準に固定する制度である。この制度は、通貨の変動を抑えることによって、貿易や投資の安定を図ることを目的としている。固定相場制は特に戦後のブレトン・ウッズ体制下で広く採用され、ドルと金の価値を固定することで世界経済の安定を維持した。しかし、固定相場制には通貨政策の自由度が制限されるというデメリットも存在する。
固定相場制の歴史的背景
固定相場制の起源は古く、19世紀の金本位制がその代表例である。金本位制では、各国の通貨が一定量の金と交換できるように設定されており、これにより為替レートが固定されていた。その後、第二次世界大戦後に設立されたブレトン・ウッズ体制では、各国の通貨が米ドルに対して固定され、米ドルは金との交換が保証されていた。この体制により、戦後の経済復興と国際貿易の拡大が促進されたが、1971年に米国がドルと金の交換を停止したことにより、ブレトン・ウッズ体制は崩壊し、変動相場制への移行が進んだ。
固定相場制のメリット
固定相場制の主なメリットは、為替レートの安定による貿易と投資の円滑化である。為替レートが安定していると、企業や投資家は為替リスクを心配することなく、国際的な取引を行うことができる。また、インフレ抑制にも効果があり、特に輸入依存度の高い国では、通貨価値の安定が物価の安定に寄与することがある。さらに、固定相場制は、国際的な競争力の維持にも役立つとされている。
固定相場制のデメリット
固定相場制のデメリットとして、通貨政策の自由度が制限される点が挙げられる。通貨の価値を一定に保つためには、中央銀行が外貨準備を持ち、為替市場での介入を行う必要がある。このため、国内経済の状況に応じた柔軟な通貨政策が難しくなる。また、固定相場制の維持には大規模な外貨準備が必要となり、経済的な負担が生じる可能性がある。さらに、固定相場制の持続が困難な場合、通貨危機を引き起こすリスクも存在する。
現代における固定相場制
現代において、完全な固定相場制を採用している国は少なく、多くの国は固定相場制と変動相場制を組み合わせたハイブリッド型の制度を採用している。例えば、香港ドルは米ドルに対して一定の範囲で固定されているペッグ制を採用しており、一定の為替変動幅を持たせることで、安定性と柔軟性のバランスを図っている。また、湾岸諸国の通貨も米ドルに対して固定されており、石油収入による経済の安定を支えている。