品質機能展開(QFD)|顧客が求める品質を製品に反映させる

品質機能展開(Quality Function Deployment:QFD)

品質機能展開(Quality Function Deployment: QFD)とは、製品やサービスの開発において顧客の要求や期待を明確にし、それを具体的な設計仕様や工程に反映させるための手法である。1970年代に日本で発展した品質機能展開は、顧客ニーズを満たすためにどのような機能が必要かを体系的に検討するプロセスを提供する。この手法は、特に製品開発や品質管理の分野で広く使用されており、顧客満足度を向上させることを目的としている。

品質機能展開(QFD)の基本的な考え方

品質機能展開(Quality Function Deployment: QFD)の基本的な考え方は、顧客の声(Voice of Customer: VOC)を収集し、それを製品やサービスの具体的な仕様に変換することである。これにより、顧客が求める品質を直接的に製品に反映させることができる。また、開発過程で顧客ニーズが変化した場合でも、品質機能展開を活用することで柔軟に対応できるのが特徴である。

品質

品質とは、製品やサービスの質であるが、大きく顧客が求める品質(市場のニーズ)、企画・設計の品質(設計・開発部門からみた品質)、製造の品質(製造部から見た品質)に分類される。顧客が求める品質とは一般的に使われる品質で、デザイン性、性能・機能、製品仕様のを指す。ただし、顧客が求める品質だけを見ていては、過剰の機能やコスト高などになる。企画・設計の品質は、商品を開発する立場から作り上げる品質で、顧客のニーズを実現するために必要・不要を取捨しながら作り上げる。製造の品質はバラツキの品質で、製造段階で製作に困難があれば成功はしない。品質機能展開を効果的に使うことでこれらをバランスよく作り上げる。

開発における品質機能展開(QFD)

製品開発において、品質機能展開は、顧客が望む品質を技術的な側面で解釈し、製品開発に反映していく工程といえる。品質機能展開を実施することで設計目標値を設定し、開発を進めていく。言い換えれば、顧客が求める品質を企画・設計の品質に変換するといえる。

品質展開

品質展開とは、顧客が求める品質(市場のニーズ)と企画設計の品質(設計・開発部門からみた品質)を結びつける方法であることをいう。顧客が求める品質(市場のニーズ)は、たとえば、「軽くて、破れにくい」「使い捨てられる」「丈夫」「環境によい」といったように、言語で示される。このような声を製品として具現化するには、それぞれの特性を設定して、各特性のねらい値を定めて評価する。

品質機能展開(QFD)のメリット

品質機能展開を導入することで得られるメリットは多岐にわたる。まず、顧客ニーズを正確に把握し、製品やサービスに反映させることができるため、顧客満足度が向上する。また、QFDは、開発プロセス全体における品質の向上を促進するため、設計ミスや仕様の不整合を事前に防ぐことができる。さらに、部門間の協力が強化され、プロジェクト全体の効率も向上する。

品質機能展開(QFD)のプロセス

品質機能展開は、いくつかのステップで進行する。最初に顧客からの要求を収集し、それを詳細に分析して重要度を評価する。その後、それらの要求を基に技術的仕様を設計し、具体的な開発計画を立てる。これにより、製品が最終的に顧客の期待を満たすことが確実となる。また、品質機能展開のプロセスでは、開発の初期段階でのコミュニケーションが重視されるため、部署間の連携も向上する。

品質展開を可能にするツール

品質展開とは、マーケティング部門、営業部門、保守部門が得た顧客が求める品質について、その多くは言葉で表現されるが、それを数値で表すのが望ましい。品質展開において顧客が求める品質と実現すべき品質の特性の関連を明らかにするツールが下記である。

品質情報システム

品質情報システムとは、企業活動において得られる情報を、それを各部門に共有するシステムである。

品質表(House of Quality)

品質表(House of Quality: HoQ)とは品質機能展開における中心的なツールで、要求品質展開表(顧客のニーズ)を横(行)に、品質特性展開表(製品の技術的仕様)を縦(列)に配置したマトリクスを作成し、どこを重点的に開発すべきかその優先度を決定する。また、品質表を作成することで、顧客が求める品質が製品の品質に反映されているかどうかをチェックすることができる。

要求品質展開表

要求品質展開表(顧客のニーズ)とは、営業部が顧客から聞いた情報や企画部によるアンケート・クレーム情報などを元にした顧客の要求品質を細分化・統合化して整理した表である。

品質特性展開表

品質特性展開表(製品の技術的仕様)とは、顧客から求める品質の中で品質特性に特化して整理した表である。

品質機能展開(QFD)の課題

品質機能展開にもいくつかの課題が存在する。例えば、顧客のニーズが多岐にわたる場合、それをすべて製品に反映させることが難しい。また、顧客ニーズの変化に迅速に対応できるようにするためには、品質機能展開のプロセスを常に見直し、柔軟に対応する必要がある。さらに、品質表を作成するためには多くのデータを収集・分析する必要があり、それに時間やコストがかかる点も課題である。

品質機能展開(QFD)の事例

品質機能展開の成功事例としては、自動車産業やエレクトロニクス産業などでの導入が挙げられる。特にトヨタや日産といった日本の自動車メーカーは、品質機能展開を積極的に導入し、顧客満足度の向上に寄与している。これにより、より安全で高品質な製品を効率的に開発することが可能となった。

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