メンタルアカウンティング|人々が金銭に対して行う主観的な会計処理

メンタルアカウンティング

メンタルアカウンティング(Mental Accounting)とは、行動経済学における概念の一つであり、人々が金銭に対して行う主観的な「会計処理」のことである。具体的には、同じ金額であっても、得られた経緯や使い道によって価値を異なって認識する心理的傾向を指す。例えば、宝くじで当たったお金と給料として得たお金を異なる使い方をするなど、金額の大きさや性質にかかわらず、人々は感情的な理由でお金の使い道を分けて考えることが多い。

メンタルアカウンティングの仕組み

メンタルアカウンティングの考え方では、人はお金を「カテゴリー別の財布」に分けるように、異なる用途や源泉ごとに金銭を管理する。この財布には、たとえば以下のようなカテゴリーがある:

  • **給料や収入**:日常的な生活費に充てるための資金。
  • **ボーナスや特別な収入**:普段とは違う一時的な収入として、娯楽や贅沢品に使われることが多い。
  • **貯蓄**:将来の目標やリスクに備えるための資金。

人々は、これらのカテゴリーに対して異なる心理的な価値付けを行い、同じ金額でも「貯蓄」から使うのか「臨時収入」から使うのかによって、支出の決断が異なる。

メンタルアカウンティングの具体例

メンタルアカウンティングは日常生活の様々な場面で見られる。例えば:

  • **ボーナスや臨時収入の使い道**:月々の給料からの支出には慎重であっても、ボーナスや宝くじの当選金など、臨時収入に対しては気が緩み、贅沢品や高価な娯楽に使うことが多い。
  • **貯金の取り扱い**:通常の生活費から出費する場合には、慎重に使うが、すでに別途貯めたお金から支払う場合には、大きな買い物やリスクの高い投資を行いやすくなる。
  • **借金の感覚**:クレジットカードの利用額を普段の支出として捉えないことで、実際の財政状況を過小評価し、借金を増やすリスクを軽視する傾向がある。

メンタルアカウンティングの心理的要因

メンタルアカウンティングが生じる背景には、いくつかの心理的要因が存在する:

  • **心理的な区分**:人々はお金を出所ごとに「別のもの」として捉え、たとえば臨時収入は「予期せぬ利益」として、消費の対象にしやすくなる。
  • **損失回避**:人はお金を失うことに対して強い不安を抱くため、給与からの出費には慎重になりがちだが、臨時収入にはその不安が少ないため、気軽に使ってしまう。
  • **精神的会計帳簿**:頭の中で「使ってもよいお金」と「使いたくないお金」を分けて管理し、前者の方が支出に積極的になる。

メンタルアカウンティングの影響

メンタルアカウンティングは、個人の消費行動や貯蓄習慣に大きな影響を与える。例えば、臨時収入やギャンブルの勝ち金は贅沢な支出に使われることが多い一方、給料は慎重に管理されやすい。また、貯金を「使わないお金」として過度に蓄えることで、リスクを取りにくくなり、資産の運用機会を逃す可能性もある。

メンタルアカウンティングを克服する方法

メンタルアカウンティングの影響を軽減し、より合理的な意思決定を行うためには、以下の対策が有効である:

  • **全てのお金を同等に扱う**:お金の出所に関係なく、すべての資金を一つの大きな「財布」として考え、感情的な判断を避ける。
  • **長期的視点を持つ**:短期的な利益や出費ではなく、長期的な資産形成や目標に基づいた判断を行うよう心がける。
  • **予算管理を徹底する**:臨時収入や貯金を含めて、すべての資金を包括的に管理し、無駄な支出を避けるために厳格な予算を設定する。

メンタルアカウンティングと行動経済学

メンタルアカウンティングは、行動経済学の分野で重要な概念として扱われる。伝統的な経済学では、人々は常に合理的な判断を下し、すべてのお金を等しく価値づけるとされていたが、行動経済学では、人々の感情や心理が意思決定に大きな影響を与えることが示されている。この理論は、日常の金融行動や消費行動に関する研究に広く応用されている。

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