マルクス主義|マルクスとエンゲルスが創始した思想運動

マルクス主義

マルクスとエンゲルスが創始した理論体系の総称。あるいは、マルクスの名のもとに展開された思想運動。マルクス主義ほど二十世紀の政治と思想に大きな影響を与えたものの、共産主義社会の実現は悲惨なものとなった。

マルクス

マルクス

哲学、経済学、社会主義理論

マルクス主義は、通例、哲学・経済学・社会主義理論という三つの構成によって成り立つ。弁証法唯物論の思想を基本に総合され、包括的な理論体系を展開している。

  • 哲学の分野:弁証法的唯物論
  • 経済学の分野:資本主義社会の運動法則
  • 社会主義理論:資本主義社会の没落と社会主義への移行の必然性

レーニン

レーニンは、ドイツ古典哲学、イギリス古典経済学、フランス社会主義を、マルクス主義の三つの思想的源泉であるとした。マルクス主義は本来、人類の生み出したもっとも価値ある文化的・知的遺産を積極的に継承・摂取していく発展的理論であると評価している。

マルクス

マルクス

物神的(フェティシズム的)性格

マルクス、およびマルクス主義は、労働の能力(生産力)と労働の組織のされかた(生産関係)に着目する。資本主義社会における「労働」の特徴を「商品」によって表されるが、資本主義では資本によってすべてを購入することができる。あらゆるものが商品として流通し、人(労働)もまた商品として扱われる。マルクスは未開社会が自然物を呪物としての崇拝(フェティシズム)しているが、それと同様、商品と貨幣を万能の力をもつものとして資本を崇拝している。マルクスは商品がもつこの性格を「物神的(フェティシズム的)性格」を呼んだ。

分業

資本主義では分業によって経済発展する仕組みである。分業が発達すればするほど、労働はその個性を失い、抽象化される。労働が抽象化されれば、商品は他の商品とますます自由に交換できるようになり、商品世界がますます広がる。物だけがわがもの顔にいきかう世界ができあがるのである。だが、「分業」とはもともと、生産場面での人間同士の関係にすぎない。そうだとすれば、資本主義社会とは、人間と人間の関係であるはずのものが歪曲され隠蔽されて、物の性質や、物と物との関係としてしかあらわれないような社会なのである。人間のこうした疎外状況を克服するには、その根底にある生産関係を破壊しなければならない。

プロレタリアートによる革命

マルクスとその支持者は、社会革命によって、分業と私有財産を撤廃した共産主義に基づいた国を建設した。マルクスは、資本主義の矛盾を抱え、分業と私有財産の欠如に苦しむ、プロレタリア階級がこの社会革命の主体になると官が行動した。その結果、ソビエト連邦や中国などの国が誕生する。

共産主義のシンボル

共産主義のシンボル

ロシア革命

マルクスは、資本主義の矛盾を抱える先進国で起こると想定したが、後進国であったロシアで起こる。ロシア革命が勃発すると、レーニン率いるボリシェヴィキが世界のマルクス主義運動をリードした。レーニンによれば、帝国主義の搾取は成熟した資本主義国よりも、貧しい植民地や後進国がよりいっそう抱えている。植民地・後進国が脱却するための暴力革命を説き、共産党による独裁体制を作った。しかし、共産主義社会が実現するまでの一時的なものだったが、独裁体制を好んだスターリンは「一国社会主義」の下、長期的な維持になった。しだいにマルクス主義は教条的なイデオロギーに変質していき、以降、全体主義的国家を生みだすことになった。

西欧マルクス主義

西欧の知識人たちは、ソ連の独裁体制の雲行きが怪しくなるにつれ、ロシア型とは異なるマルクス主義の新しい可能性を模索しはじめたが、これを「西欧マルクス主義」という。

ジョルジ・ルカーチ

ジョルジ・ルカーチは社会変革における人間の「主体性」を強調するマルクス主義を唱えた。主著である『歴史と階級意識』(1923年)において、プロレタリアートは物象化された世界の所産であると同時にその産出者でもある。プロレタリアートが主体となって革命に参加することで、物象化された生の「全体性」の回復につながるとした。

フランクフルト学派

フランクフルト学派は、文明社会がナチズムに代表されるような野蛮な行為を生んだことに対し、マルクス主義とフロイトの精神分析との総合を企てた。

サルトル

フランスでは、アレクサンドル・コジェーヴのヘーゲル研究によってマルクス主義は実存主義に影響を与え、サルトルは『弁証法的理性批判』を発表した。

ルイ・アルチュセール

フランスの哲学者ルイ・アルチュセールは人間の意識や主体性を強調するマルクス主義に反対して、『マルクスのために』、『資本論を読む』において構造主義的なマルクス解釈を展開した。

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