バーゼル II
バーゼル IIは、2004年にバーゼル銀行監督委員会が策定した国際的な銀行規制の枠組みで、銀行のリスク管理能力を強化することを目的としている。バーゼル Iの資本規制を拡張し、信用リスク、市場リスク、オペレーショナルリスクに対してより詳細な規制を導入した。バーゼル IIは、銀行がリスクに見合った資本を保持することを求め、リスク管理と監督の枠組みを整備するための「3本柱」に基づいて設計された。
バーゼル IIの3本柱
バーゼル IIは、「3本柱」と呼ばれる3つの要素に基づいて構成されている:
- **第1の柱:最低資本要件**
- **第2の柱:監督当局による審査プロセス**
- **第3の柱:市場の規律**
銀行が信用リスク、市場リスク、オペレーショナルリスクに対して必要な自己資本を保持することを求める規制。バーゼル Iで導入された8%の最低自己資本比率が維持されており、銀行はリスクに応じて必要な資本量を確保する。
監督当局が各銀行のリスク管理プロセスや資本状況を審査し、必要に応じて追加の資本を要求できる制度。これにより、銀行が適切なリスク管理を実施しているか確認し、リスクに応じた適切な資本を保持するように促す。
銀行のリスク管理や資本状況に関する透明性を高めるための情報開示を強化し、市場の監視を通じて銀行の健全性を保つことを目的とする。これにより、投資家や規制当局が銀行のリスク状況を把握しやすくする。
バーゼル IIの主なリスク評価方法
バーゼル IIでは、銀行のリスクをより正確に評価するために、以下のようなリスク評価手法が導入された:
- **信用リスク**
- **市場リスク**
- **オペレーショナルリスク**
銀行が融資や債券投資を行う際に直面する信用リスク(借り手が返済できないリスク)に対して、内部格付け手法や標準的手法を用いてリスクを評価し、必要な資本を算出する。
株式、債券、外国為替などの価格変動によるリスク。バーゼル IIでは、銀行がこれらの市場リスクに対して適切な資本を保持することを求めている。
銀行業務における人為的なミス、システム障害、法的問題などから生じるリスク。バーゼル IIでは、これらのリスクに対しても資本を保持することを求めている。
バーゼル IIの影響
バーゼル IIは、リスクに応じた柔軟な資本管理を可能にすることで、銀行のリスク管理能力を強化し、金融システム全体の安定性を向上させることを目的としていた。特に、各銀行が自らのリスクを評価し、そのリスクに応じた資本を保持する「内部格付け手法」が導入されたことにより、銀行は自己責任でリスク管理を行うことが促進された。
バーゼル IIの課題
バーゼル IIには、いくつかの課題も指摘された。特に、2007年から2008年にかけて発生した世界金融危機では、バーゼル IIのリスク評価手法が不十分であったことが明らかになった。内部格付け手法を用いたリスク評価は、銀行自身がリスクを低く見積もる可能性があり、結果的に金融機関が過度にリスクを取ることを助長したとされる。また、オペレーショナルリスクや市場リスクの評価が難しいため、これらのリスクに対する資本管理が不十分であった。
バーゼル IIの改良とバーゼル III
バーゼル IIの限界を受けて、バーゼル IIIが2010年に導入された。バーゼル IIIでは、銀行の資本基準をさらに強化し、流動性リスクやレバレッジに対する規制も導入されている。これにより、バーゼル IIで指摘された問題を解決し、金融機関の健全性を高めることが目指されている。