バーゼル合意
バーゼル合意とは、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)によって策定された国際的な銀行規制の枠組みであり、銀行の資本基準やリスク管理を強化し、金融システムの安定性を保つことを目的とした規制である。バーゼル合意には、これまでに「バーゼル I」「バーゼル II」「バーゼル III」と呼ばれる3つの主要な枠組みがあり、それぞれの時代に応じた銀行のリスク管理や資本基準の強化が図られている。
バーゼル I(1988年)
バーゼル Iは、1988年に導入された最初のバーゼル合意であり、国際的な銀行に対して最低限の自己資本比率を設定することを目的とした規制である。銀行は、リスクを伴う資産に対して8%以上の自己資本比率を維持することが義務付けられた。これにより、銀行が過度にリスクを取ることを抑制し、金融システム全体の安定性を高めることが狙いとされた。
バーゼル II(2004年)
バーゼル IIは、バーゼル Iを拡張・改良したものであり、2004年に導入された。バーゼル IIでは、銀行のリスク管理をさらに強化し、信用リスク、市場リスク、オペレーショナルリスクに対してより詳細な規制を設けた。また、銀行自身がリスクを評価する「内部格付け手法」が導入され、資産のリスクに応じて必要な資本を柔軟に計算できるようになった。
バーゼル IIの3本柱
バーゼル IIは、以下の「3本柱」から成り立っている:
- **第1の柱**:最低資本要件(自己資本比率の規制)
- **第2の柱**:規制当局による監督の強化
- **第3の柱**:市場の規律(情報開示の強化)
これにより、単に資本比率を規制するだけでなく、規制当局による監督や情報開示を通じて、銀行のリスク管理能力を向上させることを目指した。
バーゼル III(2010年)
バーゼル IIIは、2007年から2008年の世界金融危機を受けて策定され、2010年に発表された。バーゼル IIIでは、金融機関の自己資本をさらに強化し、特に資本の質を向上させることが重視された。また、レバレッジ比率や流動性リスク管理が新たに導入され、金融システムの安定性を高めるための規制が強化された。
バーゼル IIIの主なポイント
バーゼル IIIでは、以下の点が強調されている:
- **自己資本の質と量の強化**:銀行は、質の高い自己資本(普通株式や留保利益など)をより多く保持することが求められる。
- **レバレッジ比率の導入**:自己資本に対する総資産の割合を示すレバレッジ比率が導入され、過度な借入依存を抑制する。
- **流動性カバレッジ比率(LCR)の導入**:短期的な資金需要に対応できるよう、流動性資産を十分に保有することが義務付けられた。
- **ネッティングの強化**:銀行間の取引において、リスクが相殺されるようネッティング制度が厳格化された。
バーゼル合意の影響
バーゼル合意は、国際的に活動する銀行にとって、共通の規制基準を提供することで、金融システム全体の安定性を向上させる役割を果たしている。また、各国の金融機関や規制当局が、統一された基準に基づいて協調することで、金融危機の発生を未然に防ぐ効果が期待されている。バーゼル IIIは特に、金融機関の自己資本を強化し、流動性リスク管理を徹底することで、システミックリスクの抑制に貢献している。
バーゼル合意の課題
バーゼル合意には、いくつかの課題も指摘されている。例えば、厳格な資本規制や流動性管理の強化は、金融機関にとって資本調達コストの増加や融資活動の制約につながる可能性がある。また、各国の金融機関によって規制の運用が異なる場合、規制の実効性にばらつきが生じることがある。