ナッシュ均衡
ナッシュ均衡とは、ゲーム理論における概念で、プレイヤーが互いに相手の戦略を考慮した上で、誰も自分の戦略を変えることによって得をすることがない状態のことを指す。すなわち、全てのプレイヤーが最適な戦略を選択しており、どのプレイヤーも他のプレイヤーの行動を変えない限り、自分の戦略を変更するインセンティブがない状態がナッシュ均衡である。ジョン・ナッシュによって提唱され、経済学や政治学、社会科学など幅広い分野で応用されている。
ナッシュ均衡の定義
ナッシュ均衡は、ゲーム理論においてプレイヤーがそれぞれの最適な戦略を選択している状態である。この状態では、各プレイヤーは相手の戦略を知っていると仮定しており、その情報を基に自分の戦略を選ぶ。ナッシュ均衡において、どのプレイヤーも戦略を変更しても得をすることができないため、ゲームはこの均衡点で安定する。
ナッシュ均衡の例
ナッシュ均衡の典型的な例として「囚人のジレンマ」がある。このゲームでは、2人の囚人が協力して黙秘するか、自白して相手を裏切るかを選択する。両者が黙秘すれば共に軽い刑罰で済むが、どちらか一方が自白すれば、裏切った方は無罪となり、黙秘した方は重い刑罰を受ける。しかし、両者が自白すれば双方が中程度の刑罰を受ける。ナッシュ均衡では、両者が相手の戦略を考慮し、最終的に両方とも自白する選択をするが、これは最適な結果ではない。
ナッシュ均衡の応用
ナッシュ均衡は、経済学、政治学、社会学などの分野で幅広く応用されている。例えば、企業間の価格競争において、企業は互いの価格設定を観察し、それを踏まえて自社の価格を決定する。このとき、どの企業も価格を変更しても利益が増えない状態がナッシュ均衡である。また、政治における選挙戦略や、国際関係における外交政策でも、ナッシュ均衡の考え方が適用されることがある。
ナッシュ均衡の限界
ナッシュ均衡は、全てのプレイヤーが合理的に行動し、相手の戦略を正確に予測できるという前提に基づいている。しかし、現実の状況では、情報が不完全であったり、プレイヤーが必ずしも合理的に行動しない場合もあるため、ナッシュ均衡が必ずしも実現するとは限らない。また、ナッシュ均衡が複数存在する場合もあり、その場合、どの均衡が現実に選ばれるかは不確定である。
ナッシュ均衡の数学的表現
ナッシュ均衡は、数学的には次のように定義される。
このことからナッシュ均衡ではどのプレイヤーも戦略を変えるインセンティブがない状態にある。